「クラウド普及でネットワーク依存は高まる」
リバーベッドがパブリッククラウド対応を強化する理由
2011/02/09
「クラウドコンピューティングの普及により、ありとあらゆるアプリケーションがクラウドの中に存在するようになれば、ネットワークへの依存度はますます高まる。そうした環境の中でもインフラを最適化し、どこにいても透過的にデータを利用できるようにしたい」――。
リバーベッドテクノロジーは2010年11月に、パブリッククラウドへのアクセスを最適化する「Cloud Steelhead」と、クラウド型ストレージへのデータ転送を高速化する「Whitewater」を発表した。こうした製品を発表した背景について、米リバーベッドのテクニカルディレクター、オマー・アサッド氏はこのように語った。
リバーベッドはこれまで、ハードウェアアプライアンス「Steelhead」を中心としたWAN最適化製品を提供してきた。本社オフィスとデータセンター、拠点間の通信を高速化し、ファイルサーバへのアクセスなどをストレスなく行える環境を整えることで、「インフラの最適化」を実現するというものだ。
こうした既存のアプライアンスを利用しても、データセンター、ひいてはプライベートクラウドへのアクセスを最適化することは可能だ。ただ「こうしたソリューションはディスラプティブ(分断的)なことが課題だ。導入する際にはどうしてもサービスの中断が発生してしまう。また、パブリッククラウドに適用するには自動化が不可欠だ」(アサッド氏)。
新製品のCloud Steelheadは、こうした問題意識を踏まえて開発された。ニーズに応じてシームレスに、オンデマンドにサービスを拡張できるというパブリッククラウド本来のメリットを生かしながら、インフラを最適化することを目的にした製品だ。
「オンラインショッピングサイトならば、12月のホリデーシーズンと2〜3月とではトラフィック量がまるで違う。伸縮性に富み、ダイナミックにスケールアップ、スケールダウンするパブリッククラウドの柔軟性に合わせて最適化を行う」(アサッド氏)。
Cloud Steelheadは、自社システム側に導入したSteelheadアプライアンスと対向に設置して利用する。クラウドサービスプロバイダー側があらかじめ、ハイパーバイザに「Steelhead Discovery Agent」というエージェントを導入。エージェントは、仮想マシンに対するトラフィックを途中で捕まえ、クラウドサービスのAPIを介してCloud Steelheadに送り、最適化する仕組みだ。一度目の接続には若干時間がかかるが、継続して使っていくうちに最適化が進むという。
リバーベッドは先に、仮想マシン上で動作するWAN最適化アプライアンス「Virtual Steelhead」もリリースしているが、これはどちらかというと、自社データセンターで運用している仮想マシン上で最適化を実現する製品という位置付けだ。これに対しCloud Steelheadは、パブリッククラウドサービスとの統合を念頭に置いており、プロビジョニングや課金システムのレベルまで、サービスプロバイダー側と連携するという。
「仮想アプライアンスのリリースだけで『クラウドReady』と表現するところが多いが、実際にパブリッククラウドを提供しているサービスプロバイダーと連携するには、もっと工夫が必要だ。管理ツールやリソースのプロビジョニング、ライセンス管理ツールなども含めて、透過的に動作する必要がある」(アサッド氏)。
Cloud SteelheadはまずAmazon EC2に対応する予定で、その後順次サービス範囲を拡大していく方針だ。
Hadoopで処理するデータを高速に転送
もう1つの製品「Whitewater」は、これまでのWAN最適化製品とは少し毛色が異なり、クラウド型ストレージサービスへのデータバックアップを支援する製品だ。
企業にとって重要なデータは、遠隔地に設置したディザスタリカバリ用サイトに保存することが多い。だが一方で、テープなどにデータを保存して運送する手間やコストが課題となっている。
Whitewaterは、ディザスタリカバリサイトの代わりに、クラウド型ストレージサービスにデータバックアップを行いつつ、処理を高速化する製品だ。もともと得意としてきたWAN高速化機能に重複排除(デデュプ)機能を組み合わせて転送するデータ量を減らし、バックアップに要する時間とコストを抑えることが特徴という。また、転送するデータはすべて暗号化できる。
Whitewaterは2種類のハードウェアアプライアンスに、仮想アプライアンスを加えた3種類のラインアップ。Amazon S3のほか、EMC Atmos、AT&T Synaptic Storage as a Service SMといったサービスに対応している。
「クラウド型ストレージサービスを利用することで、高価なテープやディスクへの投資が不要になるし、ディザスタリカバリサイトを別途運用する必要もない。何か障害が発生した際のリストア、復旧も迅速に行える」(アサッド氏)。
同氏が具体的な利用方法として挙げたのは、分散システム「Hadoop」を利用したデータ解析だ。Hadoopは大量のデータ解析に有効だが、解析の元となるデータをどうやって移動させるかが課題だった。元データをディスクに保存し、配送するだけで数日単位の時間が掛かっていては、何のためのHadoopか分からない。ここにWhitewaterを活用すれば、コスト効率よく、迅速に行えるようになるという。
本社と支社の間の高速化、最適化から始まったリバーベッドだが、「パブリッククラウド、プライベートクラウドも含め、あらゆる組み合わせをカバーしていきたい」とアサッド氏は述べている。
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