やはり泥の混じった海水が最大の問題
被災地でのHDD復旧はどう行われているか
2011/03/22
東日本大震災におけるIT関連の被害の一形態に、ハードディスク障害がある。実際に発生する障害にはどのようなものがあり、どのような対応がなされているのか。仙台で、公共性の高いデータの無償復旧作業を実施している、データサルベージによる報告を紹介する。
下記は、日本データ復旧協会事務局長で、データサルベージの顧問でもある沼田理氏からの報告を、再構成したものだ。
データサルベージが仙台で実施している無償データ復旧サービスについては、3月15日にニュース記事で紹介した。同社では、公共性の高いケースについては、重度の障害であっても、無償で受け付けているという。
持ち込まれるディスクの障害原因として、やはりもっとも多いのが、津波をかぶったことによる水濡れの問題だ。沼田氏によると、3月17日15時までに受け付けたハードディスクドライブ25台のうち12台が冠水や水没。持ち込まれるHDDはほとんどの場合、全体が泥水まみれになっているという。
泥水に浸ったHDDのデータを復旧するために、どういう作業が行われているのか。
基板については、本体から取り外して洗浄する。特に、ICの裏側などに汚物が残り、ショートの原因となる場合があるので、特殊な溶剤と超音波洗浄機を使用した完全な洗浄を行う。今回の場合は、油分がHDDに付着していることが、洗浄を困難にしているという。
本体は、内部の浸水状況を確認し、必要な場合は分解洗浄を行う。これには、クリーンルームなどが必要となる。洗浄に使用するのは、特殊な溶剤と超音波洗浄機で、溶剤は基板用とは別のものも使用する。運転中のHDDが水没した場合、本体温度の低下により、通気孔から汚水を内部に吸い込んでしまうため、運転以前に必ず内部の汚染状態を確認する必要がある。不用意な通電は、致命的損傷の原因となる。
データサルベージの仙台営業所には、クリーンルームなどの設備がないため、現地で分解ができず、濡れタオルにくるみ、本社に送る予定であったが、18日に地元の研究機関の協力を得ることが出来るようになったため、現地で作業を開始した。この結果、泥水に浸ったHDDのうち約8割のデータ復旧に成功したという。濡れタオルにくるみ保管するのは、プラッタの表面に異物が付着したまま乾燥してしまうと固着が発生し、洗浄不能になってしまうのを防ぐためという。
水没・冠水以外では、地震によるHDDの物理障害が主な原因だ。物理障害というとヘッド交換などが必要なのではと考えがちだ。だが、部品交換が必要なケースは一般的な地震でも2〜3割にとどまるという。今回も、前述の25台のうち、部品交換が必要なのは1台にとどまっている。沼田氏によると、HDDが動作中に衝撃を受けても、空気抵抗があるためヘッドがプラッタに衝突することは少ないという。
物理障害の大半を占めるのは、振動や衝撃などでヘッドの浮上距離が変動したことにより、十分な書き込みが行われなかったり、過剰な磁化を起こしたりすることだという。これが原因となってリードエラーが発生する。こうしたHDDについては、リードエラーを何らかの手段で解消するか、不可能な場合はスキップしてクローンを作成することで、データ復旧を行っているという。
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