アイシロンシステムズ創立者に聞く
アイシロンはEMCによる買収でどう変わったのか
2011/05/11
米EMCは5月9日、スケールアウトNAS「EMC Isilon」の新製品「Isilon IQ 108NL」を発表した。EMCによるアイシロンシステムズの買収後、IsilonストレージはSシリーズとXシリーズで新製品が出ていたが、今回のNLシリーズの発表で、同社の3つの製品シリーズがすべて継続されていくことが明確に示された。この製品を含めたIsilonの今後について、アイシロンの創立者の1人でIsilon事業部門プレジデントのスージャル・パテル(Sujal Patel)氏に聞いた。
NLシリーズはアーカイブを目的とした製品シリーズだ。新製品は、日立の3TBのディスクドライブを使うことで、15PB以上の容量を単一のボリュームとして提供できる。同時に発表されたSmartLock機能を使えば、ファイルの改ざん防止が行える。パテル氏はNLシリーズがSシリーズやXシリーズのためだけではなく、大容量を実現したアーカイブストレージとして広く使われており、それはさまざまなバックアップ/アーカイブ製品を持っているEMCに買収されたからといって変わることはないと話す。
では、Isilonストレージ全体の製品戦略に、EMCによる買収後の変化はないのだろうか。単一ファイルシステムで大容量を実現できるIsilonシリーズを、EMCは「ビッグデータ用のストレージ」と位置付けている。しかし、アイシロンは買収前、同社の製品をVMwareによるサーバ仮想化に適したストレージとしても打ち出していた。これに変化はないのか。
「VMwareをNFSで使ってもらうという戦略はこれまでと変わらない。VMwareとの統合度を高めるための機能や技術の開発を今後も積極的に続けていく。EMCの製品群は非常に広範であるため、製品間のオーバーラップはたしかにある。だが、EMCの主要製品群はそれぞれに強みがある。Isilonは、拡張性を求められるニーズへの対応に注力している」。
IaaSなどのサービスを提供する事業者には、主にどの製品群を推進していくのか。
「すべての製品群には、それぞれクラウドに向けた戦略がある。Isilonではビッグデータに対する強みを生かしていく」
しかし、顧客は混乱しやすいのではないか。
「製品構成が複雑化していることは認識している。シンプル化していくことは、今のところ計画とはなっていないものの、長期的な目標ではある。短期的には、EMCはハイタッチで顧客とのやり取りができる企業として知られている。コンサルティング的に製品(選択)について顧客を支援することが可能だ」
バックアップ/アーカイブについても製品間のオーバーラップが多くなってきているのではないか。
「例えばData Domainはバックアップ中心の製品だ。Data Domain Archiverについては多少のオーバーラップはある。データが重複除外のメリットを受けやすい性質のものであれば、Data Domain Archiverを薦める。規模が小さければVNXも使える。データが大量ならIsilonだ」
Isilonでは、重複除外をはじめとするエンタープライズ向けの機能を、今後さらに追加していくのか。
「今発表できるものはないが、IsilonのR&D予算の半分は、エンタープライズ向けの製品が備えるべき機能の開発に費やしている。その場合、必ずイノベーションを盛り込めるように努めている。データを減量する機能については、ロードマップに入っている」
EMCに買収されたことのメリットをどう感じているか。
「EMCの優れた製品や技術を開発する能力、EMCのブランド、世界中での流通機能、サービス機能を通じて、製品を急速に伸ばしていくことができる。また、クラウドに向けたITのサービス化というEMCのビジョンにおいて、Isilonは非常に重要な意味を持つ存在となっている。つまり、これまでのようにポイント・プロダクトではなく、広範なビジョンのなかにIsilonを位置付けることができるようになった」
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