Cloud.comの「CloudStack」を採用へ
OSS基盤ソフトで日本のクラウドに新機軸、IDCF
2011/05/12
IDCフロンティアは5月12日、Cloud.comが開発・提供するOSSのクラウド基盤ソフトウェア「CloudStack」を採用した「NOAHプラットフォームサービス」を7月から提供すると発表した。国内でCloudStackを採用するのはIDCフロンティアが初めて。
クラウドサービスのNOAH自体は、すでに2009年6月から提供しているが、CloudStackを採用することで、複数の異なるハイパーバイザーが使えたり、API公開、他サービスとの連携などサービス開発がより柔軟に、素早く行えるようになるという。また、7月からは、新たにクレジットカード決済に対応する。クレジット決済から銀行引き落としへの変更も可能で、スタートアップからヘビーユースまで対応できる。「まず社内でちょっと使ってみるとか、スタートアップで使ってもらえれば。ネットワーク転送料金も事前に含めた競争力のある価格設定で提供したい」(ビジネス推進本部サービス開発部部長 大屋誠氏)。
AWS対抗のエコシステムに期待
CloudStackはGPLライセンスの元にシリコンバレーベースのベンチャー企業、Clould.comが開発しているクラウド向けの基盤ソフトウェア。VMware、KVM、Xen、Hyper-Vなど異なるハイパーバイザーに対応し、これらの基盤を抽象化してプロビジョニングやサーバ監視、課金などが行えるプラットフォームサービス構築のためのソフトウェア。Webサイトのポータル画面にアクセスすることで、各エンドユーザーは、サーバ選択・起動やサーバ監視、スナップショットによるサーバテンプレートの保存やデプロイ、データ転送量実績や月次の課金予想などを手軽に把握できる。
これまでIaaS市場に参入する場合、独自にサービスやAPIを設計・実装するか、仮想インフラに付属するオーケストレーション用ソフトウェアを利用するのが一般的だった。CloudStackは「ハイパーバイザーとサービスのインターフェイスを媒介する基盤」(大屋氏)で、特定のハイパーバイザーに依存しない。AWS互換のAPIも今後同時にサポートする予定だ。
現在英語圏ではAWSが、また国内ではNIFTYクラウドがAPI公開で先行したことでエコシステムが育っている。一方、CloudStackは、一般的なOSSモデルで、複数事業者を巻き込みながらパブリッククラウドのもう1つのエコシステムを形成する可能性がありそうだ。「アジア圏での採用が多いが、アメリカでも商談レベルでは採用の話が出てきている。AWS対抗の1つの基軸としてCloudStackが評価されていくのではないかという期待もあって採用した」(大屋氏)。共通の基盤を利用し、機能強化していくことで、1社だけでは掴み切れない顧客ニーズにも応じやすくなるだろという。
アジア圏で先行する採用事例
CloudStackは、すでにKorea Telecom、Singapore Telecom、Tata Communicationsなどアジア圏のキャリアなどで採用が進んでいる。「Korea Telecomは、日本でいえばNTTグループのような存在。CloudStackを使って米国も含めた海外展開も考えている」(大屋氏)。Cloud.comはコアの部分をOSSで提供し、事業者向けのパッケージやサポート事業で収益を上げるビジネスモデルを目指していて、IDCフロンティアも「コミュニティ版」ではなく、サービス事業者向けの「サービス・プロバイダ版」を採用しているという。
これまでIDCフロンティアのNOAHでは、仮想インフラにVMwareを使ってきたが、Linuxの一部として開発が進むKVMもサービスラインアップに加えることを検討しているという。「サービス開発当初はハードウェアが高価だったが、最近は多くの顧客を収容できるようになってきた結果、ハイパーバイザーのライセンス料も原価に占める割合として大きくなってきている。実績や機能ではVMwareにメリットがあるが、サービスレベルに応じたハイパーバイザーの選択が重要だと考えている」(大屋氏)。
CloudStack採用によるハイパーバイザーの切り替えや複数対応が容易になると同時に、サービスメニューの開発も素早く行えるという。CloudStackでは利用するハイパーバイザーの種類、CPUやメモリといったリソースとネットワーク転送容量を「バンドル」という概念でメニュー化できる。また、CloudStackはオープンなAPIも持っているため、今後の提供を検討しているクラウドストレージの接続が容易というメリットもあるという。
OpenStackとCloudStack、似たもの同士の関係とは?
オープンなクラウド基盤といえば、シトリックス、デル、AMDなど60社が参加する「OpenStack」もある。クラウド向けにセキュリティや信頼性を担保するソリューションを提供するenStratusのCTOによれば、Clould.comは途中からOpenStackに参加したために、GPLであるにも関わらずOpenStackはCouldStackのコードベースを利用していないが、この2プロジェクトが将来的に深いレベルで共進化していっても不思議ではないとしている。
IDCフロンティアが採用したCloudStackの特徴を公式ページから以下に抜粋する。
- コードベースはJavaでGPLv3で提供
- マルチテナント
- Xenserver、KVM、VMware vSphere対応
- スケーラブルなアーキテクチャ(数千台規模のホスト、ゲスト)
- 自動フェイルオーバーを提供するHA設定
- Ajaxを使ったWebインターフェイス
- プライベート・パブリックのハイブリッド環境でデプロイ可能
- VLANを使ったネットワーク仮想化
- ロバストなAPI
- Amazon EC2互換レイヤ
IDCフロンティアは全国で9つのデータセンターを持っているが、今回は東京を皮切りに北九州にもすぐにサービスを展開し、「両方を使い分けていただけるようなサービスを作っていく」(大屋氏)という。
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