低コストのデータライフサイクル管理を目指す
デル、自社製品で完結するストレージ戦略を発表
2011/06/01
デルは5月31日、過去4年間に同社が買収してきた製品や技術を組み入れた、新たなストレージ戦略を国内で説明した。「Fluid Dataアーキテクチャ」と呼ぶアーキテクチャを通じ、積極的なコスト削減を目指すという。
ストレージはITインフラコストに占める比率が高く、運用コストも大きい。にもかかわらずバックアップしたデータのリストア失敗が多発するなど、データが確実に利用しきれていない。一方で非構造データを中心に、データ量は急速に増加しており、これを効率よく管理していかなければならない、といった課題をデルは解決したいと、日本アジア太平洋地域インテリジェントデータ管理ディレクターのエイドリアン・ジョンソン(Adrian Johnson)氏は説明した。
では解決策は何なのか。デルではまず製品提供の方法を改善する。高い拡張性を備えた製品を提供することで、容量拡張のためにストレージ筐体を買い替えなくて済むようにするほか、ストレージ機能のソフトウェアライセンス更新をなくしていくという。
それぞれのストレージ装置では、仮想化と自動化に関する機能を強化していく。ストレージ接続については、ファイバチャネルやFCoEではなく、10Gbpsイーサネット上でiSCSIを多用していくという。
ストレージ製品群を貫く形で、同社は「インテリジェントデータ管理」を推進していく。デルのいうインテリジェントデータ管理については、詳しい説明がなされていないが、「クロスプラットフォームの重複除外」「コンテンツアウェアデータ管理」「パフォーマンスとキャパシティの自動調整」「ワークロードアウェア管理とマイグレーション」といったキーワードが説明スライドには散りばめられている。
ストレージ装置内で、SSD、SATAといった複数の記憶媒体間の自動階層管理を行う一方、装置間でも重複排除を適用しながら、アクセス頻度などに応じて自動的にデータを再配置していく、つまりバックアップ/アーカイブを装置間の自動階層化管理として実現するような形態を指向しているようだ。
ならば、複数のストレージ装置にまたがって、データのライフサイクル管理を実現する管理ツールが必要になるはずだ。こうしたツールの開発計画について聞くと、デル執行役員 エンタープライズ・ソリューションズ・グループ コンピューティング&ネットワーキングAPJ統括本部長で米デル コーポレート・エグゼクティブ・ディレクターの町田栄作氏は、(いつ提供するかについて)現時点では言えないと答えた。だが、同氏は2010年に同社が買収したクラスタNASソフトウェアのExanet、同じく2010年に買収したデータ量削減技術のOcarina Networksがカギになるとし、これらについて今年後半に何らかの発表ができるだろうと話した。
データのライフサイクル管理に加え、サーバ仮想化技術との統合も、デルは重要視しているようだ。説明の場にはヴイエムウェア日本法人代表取締役社長の三木泰雄氏も出席、製品における連携のほか、デルの日本でのテクニカルコンサルタントの8割がVMware認定技術資格(VCP)を持っていること、中堅・中小企業を含めた共同マーケティング活用を行っていることなどを話した。
デルの製品ラインナップとしては、今年買収したCompellentを中〜大規模のブロックストレージとして位置付けることにより、デルの1次ストレージはPowerValut、EqualLogic、Compellentで構成されることになった。ただし、PowerVaultとEqualLogicの間には現在のところすき間が見られる。これをどう埋めるのかが注目される。
Dell|EMCはどうなる
デルのこれまでのストレージ事業において、Dell|EMC(EMC製品をデルがOEMにより販売する製品)は大きな比率を占めてきた。しかし、Fluid Dataアーキテクチャの説明に、「Dell|EMC」の文字はまったく登場しない。これについては今後どうなっていくのか。デルではEMCが今年発表したミッドレンジ製品「EMC VNX」についてはOEM契約を結んでいないという。ということは、EMCはVNXにとって旧機種の位置付けとなるCX4、NX4、AX4について今後も販売を継続すると表明しているため、これら機種についてはDell|EMCとして販売される可能性があるが、VNX以降についてはDell|EMCは事実上消滅ということになりそうだ。
*記事初出後に、デルより発言の訂正があったため、上記のように修正しました
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