chroot方式によるマルチテナントを実現

IIJ、日本のRuby PaaS「MOGOK」を秋に立ち上げへ

2011/09/05

photo01.png IIJ サービス本部 プラットフォームサービス部 プラットフォーム開発課 藤原秀一氏

 IIJは9月5日、開発言語としてRubyが利用できるPaaSの新サービス「MOGOK」を秋からベータサービスとして提供開始することを明らかにした。島根県松江市で始まった「RubyWorld Conference 2011」で、同社サービス本部の藤原秀一氏が講演でサービスの提供予定や技術的な詳細を話した。秋にも予定しているオープンベータ版では、当初サービスを無償で提供する。その後、2012年の第2四半期をめどに有償サービスを開始する。プロセス数、メモリ容量、データベース容量などの追加リソースを有料サービスとして提供予定という。

 MOGOKは、同社がすでに提供しているクラウドサービス「IIJ GIO」と共通のサーバ基盤で提供するPaaS。Ruby on Railsアプリケーションの開発支援環境と実行環境を提供する。サーバへのアプリケーションのデプロイは、コマンドラインツールを使ってGitリポジトリから行えるという。

fig01.png MOGOKの全体像(クリックで拡大)
sched.png 秋にベータ版を開始し、2012年の第2四半期に有償サービスも開始予定という

 サポートするRubyのバージョンはRuby 1.8.7、1.9.2で、開発中の最新版も利用可能となる予定だ。サーバ上でライブラリパッケージ管理ツールの「Bundler」が利用できるため、プラットフォームネイティブのものも含む既存の多くのライブラリが手軽に利用できる。アプリケーションサーバにはThin、ストレージにはMySQL 5.5.xを採用。MySQLのストレージエンジンとして、InnoDB以外のものも要望に応じてサポートしていきたいとしている。また、「KVSはニーズが高いのでサポートしていく予定。MongoDB、memcachedなどは順次対応していく」(藤原氏)という。また、バッチ処理はニーズが高いため、Ruby on Railsで広く使われているプラグインの「delayed_job」は標準で使える。

 IIJが提供済みのクラウドと同一基盤でサービスを提供するため、同社が提供する仮想・物理サーバとの併用が可能なほか、REST API型のストレージも利用できるという。

 PaaSでは、異なる利用者のアプリケーションが同一物理サーバで稼働することになるが、IIJではKVMやXenなどの仮想化を使わずに、chroot方式でアプリケーション環境の分離を実現したという。利点は、リソース消費が少ないことで、「実は先日まで(競合となる)Herokuもchroot方式だった」(藤原氏)という。chroot方式ではルート以下のディレクトリは分離されるが、カーネルや、カーネル管理下の仮想ファイルシステムなどが共有されてしまう。このため「FUSEを使って隠蔽するなど、問題を解決した上で提供していく」(藤原氏)としていて、chroot方式についても変えていく可能性があるという。

 先行するHerokuやEngineYard、CloudFoundryなど、Rubyを採用するPaaSに対するMOGOKの強みとして藤原氏は、日本全国にサーバ基盤があり、サーバプールにも数千台規模の余裕在庫があることを挙げる。現在、ほとんどのRuby PaaSは米国のサービスだ。このため、ある競合サービスでレイテンシが180ms以上となることがあるのに対して、IIJのMOGOKでは8〜9msとレスポンスが良いという。また、今回のサービスは、Rubyの生みの親である、まつもとゆきひろ氏をはじめとするRubyコア開発者を抱えるネットワーク応用通信研究所と技術協力しており、有償のテクニカルサポートについてはネットワーク応用通信研究所を通して日本語で行っていくことを検討しているという。

(@IT 西村賢)

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