メラノックスのデュアルプロトコル戦略

「5年後、イーサネットかInfiniBandかは問題でなくなる」

2011/10/26

 メラノックステクノロジーズジャパンは9月中旬に、56Gbps/秒のスループットが可能なInfiniBandの新規格FDRに対応すると同時に、10G/40Gイーサネットにも対応するネットワークアダプタ「ConnectX-3」シリーズ新製品と、こちらも2つのプロトコルに対応するスイッチ「SX」シリーズの評価用サンプルを出荷開始したと発表した。新アダプタはまた、コンピュータとのインターフェイスをPCI Express Gen 3.0に対応させることで、この部分がボトルネックになることを防いでいる。@ITでは、米メラノックスのワールドワイド・セールス担当バイスプレジデントであるマーク・サルツバーグ(Marc Sultzbaugh)氏に同社の戦略を聞いた。

 InfiniBandとイーサネット双方の通信が可能なアダプタとスイッチを提供していくのがメラノックスの方向性だ。すでにどちらも、InfiniBand、イーサネットに対応するネットワークチップを搭載。「別製品として(InfiniBand対応版とイーサネット対応版を)販売するかどうかはOEM提供先次第。動的に(2つのプロトコルを)切り替えられる単一の製品として提供することもできる」。2ポートのアダプタの場合、1ポートはInfiniBand、もう1ポートはイーサネットで通信することも可能。「同じドライバ、同じAPI、同じアクセラレーションエンジンを使うことができる」。

 この、同じドライバで2つのプロトコルを使えるところが重要なポイントだ。

 「例えばブレードサーバのサーバブレードでConnectXアダプタを採用していれば、スイッチベイにInfiniBandスイッチを挿すと(アダプタのポートが)InfiniBandポートとして立ち上がり、イーサネットスイッチを挿すとイーサネットポートとして立ち上がるといったことができる。今後はスイッチについてもこれ(ポートの自動プロトコル設定)に対応させたい。技術はすでにあるので、あとはわれわれがこれを実装すればいいだけだ」。

mellanox01.jpg マーク・サルツバーグ氏

 「今後のクラウドにおけるカギはI/Oの仮想化だ。ワークロードに応じてネットワークの機能を変えることが必要だ。例えば朝にHPCアプリケーション、午後に一般的なWebサーバを動かすなど、アプリケーションのニーズに応じてネットワークを再構成できるようになる」

 サルツバーグ氏はその一方で、InfiniBandがこれまでのHPC中心の世界から、一般の企業コンピューティングやクラウド環境に広がりつつあることを強調する。

 例えば、オラクルの「Oracle Exalogic Elastic Cloud」における採用だ。Exalogicではサーバコンポーネントとストレージ間のI/Oの高速化と遅延の低さがウリだが、メラノックス製品による40GbpsのInfiniBand接続で、これを実現している。クラウド/データセンター・サービスにおけるInfiniBandの採用も増えている。

 「InfiniBandはいつでも、プライスパフォーマンスで(イーサネットに比べて)アドバンテージがある。そのアーキテクチャはイーサネットのように過去にしばられず、より小さな標準なのでロードマップはよりアグレッシブにできる」。過去約20年にわたって、規模の利益を通じ、レイヤ2標準として支配的な存在であり続けてきたイーサネットだが、10Gbpsイーサネットは銅線を使った規格の10GBASE-Tが普及せず、その利用は事実上、サーバやストレージの接続に限定されている。すなわち、イーサネットとInfiniBandの戦っている土俵はおおまかにいえば同じだとサルツバーグ氏は主張する。

 「この市場での課題は効率とROIだ。マルチコアCPUに大枚をはたき、数ギガバイトのメモリに大枚をはたくなら、CPUやメモリにI/Oもペースを合わせなければならない。現在のクラウドやWeb 2.0の世界では仮想化が進み、仮想マシン台数の急増がネットワークにストレスを与えている」。この課題にどう、コスト効率よく応えられるかで利用する技術が決まるとサルツバーグ氏は話す。

 将来、InfiniBandが支配的になるとサルツバーグ氏は言いたいのだろうか。

 「5年後にわれわれは、どちらのプロトコルを使うかを気にしなくなるだろう。現在の顧客は、どんなケーブルを使っているかを話題にはしない。5年後にはレイヤ2のテクノロジとして何を使っているかも話題にならなくなる。アプリケーションが効率的に動くならどちらでもいいことになる。ただし、現段階では、InfiniBandのほうがプライスパフォーマンスでは勝っている。マイクロソフトもBingで40G InfiniBandを選んだが、それはイーサネットに比べてコストパフォーマンスが高かったからだ」。

(@IT 三木泉)

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