「日本から世界に通用するクラウドを提供する」

サイボウズ、業務アプリPaaSのkintoneを提供開始

2011/11/07

 サイボウズは11月7日、日常業務で必要なアプリケーションを、ノンプログラミングでユーザー自身が作成し、その場で使い始められるサービス「kintone(キントーン)」の提供を開始したと発表した。サイボウズは併せて、より包括的なクラウドサービスを展開していくことも明らかにした。同社は今後、kintoneをはじめとして、さまざまなアプリケーションを、自社運用によるクラウド基盤「Cybozu.com」上で提供していく。代表取締役社長の青野慶久氏は、日本から世界に通用するクラウドが提供できると話した。

kintone01.jpg サイボウズ代表取締役社長の青野慶久氏

 kintoneは、Lotus Notesのアプリ開発機能や、Salesforce.comのForce.comを、より親しみやすくしたようなサービス。特に一般の企業や組織の社員・部署が、業務の都合でITツールが欲しいが、IT部門に頼むと時間とコストが掛かるにもかかわらず使いやすいシステムができないため、表計算ソフトを使ってしのいでいるといったようなケースで使うことを想定している。この点で、Force.comやNotesもカバーできなかった大きなニーズを取り込むことを狙っている。サービスの基本料金は1ユーザー880円。アプリケーションをいくつつくったとしても、料金は変わらない。

 アプリケーション作成ではテンプレートを使うこともできるが、テンプレートなしでも、Webブラウザで画面設計ツールに入り、ラベル、フィールド、ボタンなどを配置するだけで、簡単なアプリケーションがつくれる。アプリケーション作成が終了したら、これを公開するだけで、ユーザーのメインメニューにこの新しいアプリケーションが表示され、即座に利用できるようになる。

kintone02.jpg 青野氏自身が、数分でアンケートアプリを作って見せた

 即座に作って使えることがkintoneの最大のウリだが、さまざまな機能を備えている。アンケート結果などでは、クロス集計やグラフ化が単純な操作で実行できる。アプリケーション横断的な検索機能は、添付ファイルの内容も対象に含められる。個々のユーザーによる情報更新履歴はすべて記録され、各ユーザーのメイン画面に、タイムラインのように表示することもできる。コメント付けも可能だ。ワークフロー機能も使えるため、承認系のアプリケーションも構築できる。kintoneの基本的なコンセプトは、データベースを使うだけでなく、プロセス管理、コミュニケーションを組み合わせることだという。

kintone03.jpg 価格は、例えばSalesforce.comのForce.comと比べて大幅に安いと青野氏は説明した

 kintoneの利用例として、サイボウズでは契約書管理、顧客商談管理、タスク管理、データ集計、売上集計、作業依頼、FAQ、プロジェクト管理、クレーム管理、アルバイト管理、不具合リスト、シフト勤務表、備品管理などを挙げている。

サイボウズの「サービス化戦略」

 サイボウズは、kintoneを同社クラウド基盤「Cybozu.com」上で提供する。Cybozu.com上では、加えて「サイボウズOffice」「サイボウズ ガルーン」を同時に提供開始。サイボウズ総研が提供してきた「サイボウズ ガルーンSaaS」はしばらく並行して提供する。「かんたんSaaS」はすでに新規販売を終了しており、新サービスに吸収する。今後もメールサーバや、ビデオ会議などを提供していくという。ユーザー情報は、Cybozu.com上で提供されるすべてのアプリケーションにまたがって一元管理される。ユーザー認証については、標準でユーザー名/パスワードによるログインとIPアドレス制限が使えるが、さらにオプションでセキュリティ証明書を用い、利用端末を制限することも可能という。

 Cybozu.comではデータセンターのラックを借りながらも、サーバ・ハードウェアから上はすべて自社で管理・運用していくという。青野氏は以前、kintoneの概要を説明した際、kintoneを自社運用基盤上で動かす理由について、「クラウド運用のノウハウを蓄積したいということがある」と話していた。サービスの堅牢性とセキュリティをインフラレベルから自社で制御することが、重要な差別化要因になると考えているようだ。青野氏はCybozu.comを、プライベートクラウドでもパブリッククラウドでもない、「プロテクテッドクラウド」だと説明。これにより低コストと低リスクを両立させるとしている。

 青野氏によると、Cybozu.comは国内のデータセンターを用い、24時間365日有人監視を実施する。また、ネットワークからデータまで、複数レベルでの多重化を施している。ISMSの取得を予定する。同社はサービスレベル目標として、99.9%以上の可用性を目指すとしている。

 青野氏はこれまでの自社のノウハウを生かすことで、既存のサービスよりも「高品質なクラウドを日本から提供したい」と話した。証明書を使ったユーザー認証など、「シリコンバレーのサービスにも勝てる」。販売目標についての質問に対しては、「今後はこれまでの延長線上にない。予測をすることは失礼にあたる(おこがましい)」とし、市場拡大への意欲を示した。

 kintoneをはじめ、サイボウズのサービスは日本語、英語、中国語の3カ国語に対応する。中国と米国については、具体的に進出を考えているという。

(@IT 三木泉)

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