共通モジュールとスケールアウト型OSがカギ?
新プラットフォームでHPのストレージ戦略は見えたか
2011/12/02
日本ヒューレット・パッカードは12月1日、x86プロセッサベースのストレージの「新共通プラットフォーム」を発表、これを採用した製品としてWindows Storage ServerをOSに用いるファイルストレージ製品「HP X5000 G2 Network Storage System」およびExchange Serverをプリインストールした「HP E5000 G2 Messaging System for Microsoft Exchange」を発表した。同社は併せて、スケールアウト型バックアップストレージの上位製品「HP B6200 StoreOnce Backup System」を発表した。
HPはこれまで、x86ベースのストレージ製品については同社のサーバ機とディスクシェルフを流用し、これにWindows Storage ServerなどのストレージOS/ソフトウェアを搭載する形で提供してきた。同社が今回発表したのは、ストレージ製品専用に設計されたハードウェアで、サーバとストレージを1筺(きょう)体に納めている。3Uサイズの筺体の右半分にサーバモジュールを2基搭載。左半分は引き出し型で、ディスクドライブを横から交換や追加するようにしている。奥行きは長い。ディスクドライブはこの筺体内に16基搭載可能。最大4台のディスクシェルフを追加して、現在のところ約100TBまでの容量を提供できるという。日本HPは、従来のサーバ製品流用では8Uサイズを要していたものを、3Uにサイズダウンできると説明している。
HPはこのハードウェアを、ニュースリリースでは「今後のHP Storageのベースとなる新共通プラットフォーム」と表現している。しかし、独自ASICを採用している3PARが、このプラットフォームに移行するというわけではない。HPはまず、Windows Storage Server搭載のファイルストレージに、このハードウェアを採用した。今後はスケールアウトiSCSIストレージの「HP P4000 LeftHand」、そしてスケールアウトNASの「X9000 IBRIX」に、このハードウェアを活用していくという。
新ハードウェアを採用した最初の製品の1つとして、日本HPが今回発表したX5000 G2は、Windows Storage Server 2008 R2 Enterpriseを搭載したファイルストレージ。図のように、HPはこれを「中〜大規模向け高可用NASアプライアンス」と表現している。Windows Storage ServerがDFSの搭載をはじめとして高機能化、高性能化し、大量のデータを扱えるようになったことを踏まえて、中〜大規模向けと表現したとする。X5000では搭載する2基のサーバモジュールを用い、Windows Storage Serverをクラスタ構成で動かす。Windows Storage Server 2008 R2ではNFS、iSCSIにも対応しているが、ほとんどのユーザーはCIFSで用いるだろうとしている。価格は「HP X5520 G2 Network Storage System」(最小9.6TB構成)で451万5000円から。
「モジュラーに拡張」が新たなキーワード
では、一部の企業における中〜大規模のNFSニーズにはどう応えるのか。一部のITユーザーは大規模サーバ仮想化環境の運用を容易にするため、NFSの利用を考えている。一方で企業においても、CADなどのデータを大量に保存するため、NFSによるファイルストレージを使うケースがある。この疑問に対し日本HPは、大規模サーバ仮想化環境についてはSANストレージを勧める一方、IBRIXで大容量データの保存ニーズに応えると答えた。しかし例えばX9000 IBRIXのストレージパッケージであるX9320の価格は約1880万円からだ。価格だけをとってみても、X5000とはかなりの開きがある。HPは今後X9000のローエンド版を出して、この「空白地帯」を埋める可能性がある。
いずれにしても、HPは高いトランザクション性能を求められるストレージを除いて、ブロックストレージ、ファイルストレージを問わず、x86アーキテクチャの新ハードウェアにできるかぎり統一、さらにスケールアウト型のストレージOSを推進することで、ユーザーのストレージニーズに対し、積み木のような形で応えていくということのようだ。今回はストレージ専用の筺体を設計したが、もちろんコンポーネントレベルではサーバとの共通化が図れる。このハードウェアがHPのストレージ製品の大部分で使われるようになれば、さらに規模の利益を享受できることになる。ユーザーにとっても、スケールアウト・ストレージの利点を生かし、ニーズに応じてコスト効率よくストレージの性能と容量を拡張していけるという可能性が出てくる。
バックアップストレージの上位製品も発表
今回の日本HPの発表で、同社がより多くの時間を割いて説明したのは、バックアップストレージの上位製品「HP B6200 StoreOnce Backup System」だ。
最小32TBからスタートし、HPが「カプレット」と呼ぶ1モジュールで最大192TB、最大構成では4カプレットで768TBの容量を実現する。つまり、この製品も、スケールアウト型といえる。
日本HPがこの製品で強調するのは、重複排除機能の優越性。平均4KBという小サイズの可変チャンクに分割することで、高い重複排除率を実現しているとする。また、処理ノード、ストレージコントローラ、ディスクプール、パスを冗長化。メインフレーム用を除き、バックアップストレージでここまでの冗長化を図っている例はほかにないとしている。
日本HPはさらに、新共通プラットフォーム・ハードウェアに、Exchange Serverをプリインストールした「HP E5000 G2 Messaging System」も発表した。
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