日本での事業展開を正式に発表

Niciraは、あなたの考える(かもしれない)OpenFlowではない

2012/02/23

 米ベンチャーのNicira Networksが2月22日、国内での事業本格化を発表した。ここでは単独インタビューで得た情報を含めてお伝えする。

 Niciraは、OpenFlowプロトコルを開発したマーティン・カサド(Martin Casado)氏などが創立者であることから、「OpenFlowの代表的企業」といったイメージを持たれがちだ。しかし、「ネットワーク仮想化のNiciraがベールを脱いだ」という記事で紹介したように、その製品「Network Virtualization Platform(NVP)」は、ハードウェアスイッチの設定を一括制御して論理的なフロー制御を実現するという意味でのOpenFlow製品ではない。カサド氏およびCEOのスティーブ・ムレニー(Steve Mullaney)氏に今回、インタビューで確認したが、同社ではいまのところ、NVP以外の製品を開発する計画もない。NVPでは、仮想スイッチに実装しているトンネル終端ポイントを、OpenFlowプロトコルで制御するため、NVPのOpenFlowコントローラをハードウェアスイッチの制御に使うことは(理屈としては)可能だ。しかし、Niciraは特にそれを意識しているわけではない。

nicira01.jpg NVPでは、個々の仮想マシンに、仮想LANを割り当てて運用できる

 繰り返しになるが、NVPは「トンネリングによって」仮想ネットワークセグメント(仮想ブロードキャストドメイン)を作り出すことを目的とした製品だ。そしてNVPのみで自給自足の環境を作り出す。トンネリングの経路にあるネットワーク機器がOpenFlow対応であろうがなかろうが、かまわない。NVPにとってはただの土管だからだ。

 NVPではXenやKVMの仮想スイッチにトンネリングの終端機能を持たせており、仮想マシンが物理ホスト間を移動しても、特定仮想ネットワークセグメントへの所属は維持される。このため、パブリックIaaSにおけるテナント(顧客)単位の分離や、社内IaaSにおける事業部門間の分離を、柔軟に行うことができる。

 また、トンネルの両端の間に十分なネットワーク帯域が確保されているかぎり、仮想ネットワークインターフェイスに帯域幅などを設定することによるQoS制御もできると、カサド氏は話した。

 なお、Niciraでは物理サーバ環境への対応や、IaaS顧客の拠点側でのトンネル終端に対応するため、ゲートウェイを提供する。

 トンネリング手法については、GRE(+IPsec)、独自トンネリング技術STT(+IPsec)をサポート。カサド氏は、レイヤ3でのトンネリングだけでなく、レイヤ2でのトンネリングもできると話した。前回の記事で紹介したように、他のトンネリング技術、例えばVXLANへの対応も行うつもりという。

 カサド氏は「メディアには初めて話すこと」と前置きし、この独自トンネリング技術の標準化を進めることを@ITとのインタビューで明らかにした。

 NVPで利用する仮想スイッチは、Niciraが開発をリードしたオープンソースのOpen vSwitch。独自トンネリング技術も標準化するのであれば、クライアント(トンネル終端ポイント)側は差別化要因にならなくなってくる。カサド氏はコントローラにおける接続管理に膨大な開発リソースが必要とし、この点で差別化していくと話した。コントローラとトンネル終端ポイントとのやり取りで使うプロトコルも、公開されているOpenFlowプロトコルだが、コントローラ自体の動きは同社のノウハウとなる。サービスAPIについては、OpenStackのネットワークプロジェクトを通じて、提供していくという。

 国内における事業展開では、東京エレクトロンデバイス、日商エレクトロニクスが販売代理店として活動。日立電線は上述のゲートウェイ開発などで協力する。国内における一部の潜在顧客から、NVPのライセンス料金が高価すぎるとの指摘が出ていることについて、同社関係者は、本格提供に至るまで顧客の数を減らしたいこともあり、意識的に高く設定していたが、今後はより安価に使えるようにしていくと説明した。

 カサド氏、ムレニー氏へのインタビューの内容は、追って掲載の予定だ。

(@IT 三木泉)

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