双方向で災害復旧、SaaS事業者もターゲット

北陸の2事業者がクラウド連携でDRサービスを提供開始

2012/03/05

 BSNアイネットと北陸コンピュータ・サービスは3月5日、VMware vCenter Service Recovery Manager(SRM)を使った災害復旧(DR)サービスを同日に提供開始したと発表した。異なる事業者がSRMで連携し、DRサービスを双方向で提供するのは、これがおそらく国内初という。

 BSNアイネットは新潟市、北陸コンピュータ・サービスは富山市にそれぞれ本拠を置く企業。両社とも、システム・インテグレーションやデータセンターサービスを提供してきた。従業員規模もほとんど同じ。だが、BSNアイネットが東北電力、北陸コンピュータ・サービスが北陸電力と、異なる電力会社のエリアにある。両社はこれを生かし、今回連携した。

 BSNアイネットは新潟県内にデータセンターを2カ所持ち、仮想サーバホスティングや仮想マシンとしてのバックアップ・サービスを提供してきた。しかし、同社事業推進部マネジャーの廣井智雄氏は、「新潟で30メートルの津波がきたら大丈夫かと聞かれるようになった。データセンター事業者として選択され続けるには、1社における堅牢性の追求では限界がある」と今回の提携の背景を説明した。地方のデータセンター事業者として全国にアピールするためにも、今回のような連携が必要だったという。

 2社は、直線距離で約200km離れた両社のデータセンター間を結び、VMware vSphere環境を連携させた。ネットアップのFAS2240上でいったんバックアップした仮想マシンイメージおよびアプリケーションデータ領域を、重複除外のうえでSnapMirror/FlexCloneによって他方のデータセンターへ遠隔複製しておく(複製には現在のところ、インターネット回線を使っている)。本番側システムが災害や停電などによって使えなくなった場合には、複製された仮想マシンイメージを使い、SRMの機能によって正しい順序で仮想マシン群を半自動的に立ち上げる。その際、F5ネットワークスのBIG-IPのグローバル負荷分散機能を適用するため、外部からのアクセスは自動的にバックアップ拠点側に転送される。

 新サービスの1つのポイントは、2つのデータセンター間で対称的なシステムとなっていること。BSNアイネットの顧客が北陸コンピュータ・サービスを待機拠点として用い、北陸コンピュータ・サービスの顧客がBSNアイネットを待機拠点として用いることができる。BSNアイネット システム技術部シニアチーフの坂田源彦氏は、今回のサービス構築におけるポイントが、下図には表れないネットワーク構成の部分にあったと話した。

vmware01.jpg 2社は共通した製品群に投資し、対称型の仕組みを作った

 ネットアップストレージ間の複製は半日に1回の頻度で実行する。今後はBIG-IPのWAN Optimization Managerの機能を用い、30分に1回程度に頻度を上げることを検討するという。復旧時間のめどは30分で、復旧状態を顧客に確認してもらうことになる。

 新サービスは、インターネット向けサーバを運用しているユーザー組織に提供する。社内向け(イントラネット)サーバで同様なフェイルオーバを行おうとすると、VPN接続の切り替えなど、ネットワーク構成が非常に複雑化するからだ。両社は、ASP/SaaSを提供する事業者による利用にも期待する。なお、このサービスを利用する組織は、特定システムで通常稼働しているすべてのサーバを保護対象とする必要はない、例えば対象とするWebサーバを少数に限定し、縮退復旧させることができる。

 料金は基本的に個別見積もり。目安としては、1 vCPU(1GHz)/ストレージ100GBの1仮想マシン当たり月額4万円程度という。

 前出の廣井氏は今回のサービスの今後について、各電力会社のエリアに少なくとも1カ所のパートナーを持てるよう、活動を広げていきたいと話した。

(@IT 三木泉)

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