サーバ管理クラウドサービスを立ち上げへ
「サーバの基本スペックはどこも同じ」、日本HPは運用機能で勝負
2012/04/02
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が3月30日に発表したIAサーバ「HP ProLiant」の新シリーズ「Generation 8」。開発に約3億ドルを費やしたというが、ハードウェアの基本スペックでは他社とおおむね変わらない、と同社も自ら説明している。代わりに強調するのは、遠隔管理・監視機能を果たす「iLO」チップの機能強化と、これをHPおよび販売パートナーからのサービスとの組み合わせによる、サーバの運用や障害対応の改善だ。
HPは新製品の提供を踏まえ、「HP Insight Online」というクラウドサービスを第2四半期中に開始するという。これはユーザー企業が3年間の標準サポート期間内であれば無料で使えるサービスで、iLOからサーバの資産情報、稼働ログ、障害履歴などを自動送信し、ユーザー組織の管理者がこのサービス上で随時確認できるというもの。HPやパートナーも、サポートの際にこの情報を参照することにより、ユーザーへのより迅速で的確な対応が可能になるという。
サーバの資産情報や稼働情報をオンラインで確認できるのは、特に多数の支店などがある組織のIT担当者にとって便利だろうという。支店で稼働している全サーバの状態を常時把握でき、いずれかの支店でサーバの障害が発生した際に、どんな障害が起きているのかを確認し、修理を手配し、修理状況を管理できるからだ。
しかし、iLOチップは以前からProLiantサーバに搭載されている。このチップでハードウェア障害を検知して、HPに自動通報する「HP通報サービス」も以前から提供されている。ユーザー企業にとって、Insight Onlineによって情報をWebブラウザで見られるようになったという以上の違いはどこにあるのだろうか。
大きな違いは、新規開発のiLO 4チップによる機能強化にあると日本HPは説明する。今回、筺(きょう)体内温度をはじめとするさまざまなコンポーネントの稼働情報を取得してiLOに送信するセンサの数が増加した。しかし今回の機能強化はそういったレベルのものではなく、iLO自体の役割を大幅に拡大するものだという。
これまでのiLOの役割は、サーバ・ハードウェアの監視と障害情報の取得にあった。今回はサーバのライフサイクル全体に関わるものになった。
iLO は、今回、OSから完全に独立して動作できるようになった。すなわち、OSにエージェントをインストールすることなく監視機能を利用できる。つまり、あらゆるOS環境で、ハードウェアの細かな稼働情報が入手できるようになった。そしてiLOではIPネットワークを通じた情報送信を、専用ネットワークポート経由でSSL暗号化により行うようになった。さらに従来は、拠点内に管理サーバを立て、これを経由してHP通報サービスを使うようになっていたが、各サーバが直接通信することもできるようになった。
こうした改善により、いままでOSの動作の障害になる可能性のあるエージェントのインストールを嫌がっていた人や、監視機能のメリットを感じなかった人にも、HPにサーバの稼働情報を送信することの意味を感じてもらいやすくなったという。
このうえで、今回iLOには専用のフラッシュドライブが備わり、ファームウェア、部品および周辺機器のドライバやユーティリティをすべてローカルに持つようになった。これらのソフトウェアコンポーネントが更新されている場合、ネットワーク経由で自動的に最新版を取得できるようにもなっている。このため、サポートCD/DVDは不要となり、サーバの導入設定(プロビジョニング)にかかる時間は大幅に短縮できると、日本HPでは主張している。
上述のようにOSから独立して動くようになったiLOは、最初に電源スイッチを入れた瞬間から構成変更や稼働情報の記録を開始する。いままではエラー時にしか取得しなかった情報についても、利用しているドライバのバージョン履歴を含めて入手し、HPに送ることができる。これで、HPや同社の販売パートナーによるトラブル対応がやりやすくなるという。障害に関係のないように見える情報も、実は障害の根本原因になっていることが多く、顧客の指示に基づいて部品を交換しにいくと、実は違う部品が原因だったということもあるからだと同社は説明する。構成変更や稼働状況について詳細な情報を共有できていれば、HPや販売パートナーにとっての二度手間を防げるだけでなく、ユーザーにとっても短時間での障害復旧につながることになる。障害の予兆を示すデータが発見された場合、HPや販売パートナーから障害発生前の交換を促すことも、以前よりやりやすくなるという。
HPはInsight Onlineに登録されるユーザー企業のサーバの稼働情報を、そのサーバを導入した販売パートナーに対しても無償で提供する。このため、販売パートナーは例えばリモート管理などの有償サービスを、低料金で展開しやすくなるという。
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