当面は「二正面作戦」?
HPのOpenFlow/SDN戦略は明確になったか
2012/04/25
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は4月24日、Software Defined Networking(SDN)に関するHPの戦略について説明した。同社は多数の機器をOpenFlowに対応させている。その一方で、少なくとも当面は、基本的にOpenFlowを使わない同社独自の技術を展開していく(日本HPの説明では、SDNという言葉をほとんど使っていないが、この言葉が一般的に示す内容に関する説明であるため、本記事では使用させていただく)。
現在のところあいまいな概念である「SDN」に対する取り組みは、具体的に何を目的とするのかによってその内容が変わってくる。日本HP 執行役員 エンタープライズサーバーストレージ・ネットワーク事業統括の杉原博茂氏は、同社のネットワーク事業で、オープン性を維持しながらシスコを上回る機能とコスト効率を追求していきたいという。具体的には、アプリケーションの特性に合わせたネットワークサービスの適用を自動化することで、アプリケーション投入時のネットワーク設定変更にかかる時間を数分に短縮し、機動的なITを実現することが目的だという。また、単一のデータセンターに限定した仕組みでなく、複数のデータセンターに一気通貫で適用できる仕組みが必要だとしている。
米HPは今年2月に、ProVision ASICを使用する16機種のスイッチで、OpenFlow対応ソフトウェアを提供すると発表した。対応ソフトウェアは無償で利用でき、サポートの対象ともなる。HPでは、これだけの数の機種をOpenFlow対応させているのは同社だけだと強調。他のASICを使った同社スイッチにも広げていくという。HPは2007年にスタンフォード大学とOpenFlowの開発に携わり、自社の研究施設や顧客での試験導入を進めているほか、Open Networking Foundationにおける同標準の開発、検証に参加している。
「今後も含めて、標準プロトコルとして採用される可能性のあるものについては、サポート対象としていく。HPのネットワーク機器を採用していただければ、将来(顧客が)例えばTRILLを採用する場合にも、OpenFlowを採用する場合にもサポートさせていただく」(HPネットワーク事業本部 事業本部長 大木聡氏)。
一方、上記の「アプリケーション投入時のネットワーク設定変更にかかる時間を自動化によって短縮し、さらにこのアプリケーション・アウェアなネットワークをデータセンター全体、あるいは複数のデータセンター間にわたりエンド・ツー・エンドで展開する」いう目的を満たす技術ソリューションとして、HPは当面「Virtual Application Network(VAN)」を展開していく。
VANでは、OpenFlowと同様に、管理サーバから複数のスイッチを集中的に設定する方式をとる。HPではVANにおいて今後OpenFlowを積極的に活用していくというが、当初はほとんどOpenFlowとは無関係と考えてよさそうだ。
米HPは6月に同社のネットワーク管理製品「HP Intelligent Management Center(IMC) 」の新モジュールとして、「IMC VAN Manager Module」を提供開始する。このモジュールでは、グラフィカルにネットワークを一元的に設計し、構成を管理下のスイッチに適用できる。VAN Manager Moduleでは帯域幅や優先制御、アクセス制御、セキュリティなどのネットワークポリシーをテンプレートとして設定できるようにすることで、迅速な設定変更を可能にするという。HPではSAPなど、アプリケーションに合わせたテンプレートも提供する。
VANの機能は段階的に提供していく。今年6月に予定するフェイズ1では、まずエッジスイッチ(トップオブラック・スイッチ)を対象とし、仮想化プラットフォームとの連携を実現する。まずVMware vSphereの分散仮想スイッチと連携し、vSphereのポートグループ設定とエッジスイッチの設定を連動させるという。フェイズ1ではOpen vSwitchとの連動も視野に入れているが、VAN Manager ModuleとOpen vSwitchとの連携に限定して、OpenFlowを使う可能性もあるという。今年中を予定するフェイズ2では、VAN Manager Moduleの管理対象をブランチレベルに広げるという。さらに将来は、複数の管理サーバを同期させ、場合によってはOpenFlowコントローラと連携させて、複数のデータセンターにまたがる一貫したネットワークサービスの実現を図っていくという。HPが世界的に展開するクラウドサービスでも、VANを活用する予定という。
HPがVANで実現しようとしているアプリケーション・アウェアなネットワークは、概略としてはまだしも、詳細は必ずしも明らかではない。特にフェイズ1では、シスコシステムズがVMware vSphereとの連動ですでに実現していることと変わらない可能性もある。だがHPとしては、OpenFlowプロトコルが今後どう進化するか、そしてどこまで標準的なプロトコルとして普及するかが予測しきれない現段階で、SDNに期待されることのなかで汎用性の高いものを実現しようとしているとも理解できる。
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