『100年企業計画』 〜Innovation×日本の耐久力〜
Evernote、事業戦略を発表 “第二の脳”を目指す
2012/05/18
EvernoteのCEOフィル・リービン(Phil Libin)氏は5月17日、同社の事業戦略として「100年企業計画」を発表した。シリコンバレーでスタートアップする際に求められた“イノベーション”の考え方と、日本において“耐久力のある企業を作り出す”という考え方を組み合わせたもので、今後も「革新的かつ耐久力のある企業を目指していく」という。
Evernoteは現在、1日あたり6〜7万人ユーザーが増えており、全ユーザー数は3000万人を超えている。ユーザーの獲得に、広告などには一切お金を使っておらず、100%の自然成長(口コミ)だという。
このようなEvernoteの成功の裏には、2つの秘訣があるという。1つは「自らが手を動かし、開発をしている」点、もう1つは「市場の調査をほとんど行わない」という点だ。Evernoteでは、「他の人が求めることよりも、まず自分たちで使ってみたいものや、やっていきたいことを、自分たちで開発する」ことを重視。「すべてを記憶する、永久的で、信頼される“第二の脳”をつくる」という自分たちのビジョンを着実に具現化しているという。
リービン氏は今回発表した「100年企業計画」について、「現在は『100年企業』になるための準備期間」と解説。「多くのリソースを投資につぎ込み、リスクを取り、企業買収をし、いろいろなことを実験することが最重要だと考えている」と語った。
IPO(株式公開)は、「100年企業」になるための1つのステップに過ぎないと述べた。当面は製品開発に注力し、IPOへの備えができている(IPO Ready)会社となるために力を充実させていくことに専念する。リービン氏はその理由として、「スタートアップの最初の状況では、会社の規模があまりにも小さい。1つのリスクを取るのがせいぜいで、イノベーションのために複数のリスクを持って進めていくことは難しい。また株式公開後、市場に対する報告義務が発生するという面でも、大きなリスクを負うことは困難だ。だからこそ、今やるべきことは、さまざまな実験であり、最善のビジネスモデルを見極めることである。IPOはそれからだ」と説明した。
一方、M&A戦略については、「日本企業も積極的に買収したい」と宣言。これは「API連携をしている3分の1が日本人である他、1番売れているアプリケーションも日本人が開発したものであり、最もアクティブなデベロッパコミュニティも日本のコミュニティ」であるためだ。また、2012年5月には東京、大阪、札幌で、計3回のデベロッパ会議を開催予定など、日本に対する強い関心をうかがわせた。
今後は、共有機能や、Evernote for Businessの分野にも力を入れていく。“自分たちのために、自分たちがほしいものを開発”してきたEvernoteだが、リービン氏は「会社としても成長してきた今、企業が使えるようなサポートもしていきたいと考えている」と話す。
最後に、「Evernoteが“人々の第二の脳”になったとき、世界はどのようになっていると思いますか?」という@IT記者の質問に対し、リービン氏は、「若者は起業すべきかどうか迷うだろう。その際、最終目標がお金儲けであるなら、起業するのは難しいように思う。しかし、もし“世界を変えたい”という気持ちを基に起業するのであれば、起業は良い方法だ。Evernoteも同じ考え方で、世界を少しでも良い方向に変えていきたいと思っている。われわれが成功すれば、よりスマートに、よりリラックスした形で、『忘れる』というストレスが軽減され、世界中の数十億の人たちにとって、人生が少しでも生きやすいような世界になっていると思う」と回答。
また、今後について、「小さなスタートアップ企業や、新たに誕生した会社に対し、われわれが『こんなこともできるんだ』という可能性を示すことによって、他の企業にインスピレーションを与えていければと思う。そのために、今は素晴らしい製品を開発していくことにフォーカスしている」と述べた。
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