SSDはVNXにとって不可欠な存在に
Isilonは仮想化対応強化、EMCのミッドレンジ製品の明日
2012/05/23
EMCは同社のスケールアウトNAS「EMC Isilon」で、大規模サーバ仮想化などの企業内IT用途を本格的に開拓するため、同製品のOSを大幅に機能強化する。「EMC VNX」「EMC VNXe」でも、VMwareとの連携をさらに強化するという。米EMCが5月21日よりラスベガスで開催中のEMC Worldで発表した、これらミッドレンジ製品の新製品と新機能を以下に紹介する。
Isilonの売り上げは世界で年率100%の成長を見せているという。10PBを超えるレベルまで、1ファイルシステムの容量を容易拡張できる同製品は、これまでマルチメディアをはじめとした、大サイズデータの大量保存用途を中心に利用されてきた。日本でもここにきて、ゲーム制作会社などでの導入が加速化しているという。
EMCに買収されてからのIsilonは「ビッグデータ担当」として位置付けられてきた。だが、実際には過去2、3年、上記のような用途に加え、サーバ仮想化のストレージプラットフォームとしての導入拡大を目指していた。EMCは2012年後半に、IsilonのストレージOSである「OneFS」で新バージョン(コードネーム「Mavericks」)を投入する。この新OSにおける機能強化で、本格的に企業IT市場を開拓する。
米EMC Isilon事業部門 プレジデントのスージャル・パテル(Sujal Patel)氏は、ビッグデータ・ストレージとエンタープライズITのストレージの世界が重なり始めており、ここに新しいビジネス機会が生まれつつあると表現する。サーバ/クライアント仮想化、ユーザーデータ、アナリティクス、アーカイブといった用途で、Isilonを推進していくという。
新OSでは、仮想化をはじめとする企業内アプリケーションに求められるランダムI/O性能を大きく向上する。具体的には遅延を現在の2分の1に低減するとともに、IOPSは毎秒160万I/Oを実現するという。これととともに、VMware vSphereとの連携を強化する。VAAIおよびVASAへの対応に加え、仮想マシンの書き込み可能クローン(複製)を、ストレージ側で作成する機能を搭載する。
アーカイブ用途でも、SEC17a-4への準拠、管理者権限のきめ細かな分割、事業部門間でのアクセス権限の明確な分離など、ガバナンスとコンプライアンスに関する機能を強化する。また、2つの遠隔拠点に配置したIsilonストレージ間で、1クリックでのフェイルオーバ/フェイルバックを実現するという。
パテル氏は、「エンタープライズITをサポートしやすくするため、より低価格な機種を投入する考えはないのか」という@ITの質問に対し、現在のところそうした考えはないと否定した。より小規模な、あるいは容量の伸びを予測しやすい用途はVNXにまかせ、Isilonは大規模な、あるいはストレージ消費量の伸びを予測しにくい用途に使ってもらうという棲み分けは、エンタープライズIT市場開拓においても従来どおりのようだ。
VNXではフラッシュの利用をさらに促進
ブロックストレージにNAS機能を統合したユニファイドストレージであるEMCの主力製品、VNX/VNXeについて、EMC ユニファイドストレージ部門プレジデントのリッチ・ナポリターノ(Rich Napolitano)氏は興味深い発言をしている。「VNXでは、ちょっとのフラッシュが大きな貢献をする(A little flash goes a long way)ということを知った」。同氏によると、60%以上のVNXが、フラッシュ(SSD)と組み合わせて販売されているという。「フラッシュは、全体の5%の容量しか搭載しなくても、(EMCの階層管理機能を使えば)I/O性能を70〜80%向上できる」。EMCはVNXにおけるフラッシュの利用をさらに促進する取り組みをしていくという。また、VNXはVblockのようなパッケージ型製品での売り上げも伸びており、クラウドへのエントリコストを低減することも含め、こうした形での販売に今後も注力していくという。
エントリストレージのVNXeでは、2012年後半に「EMC VNXe 3150」を投入する。最大100ドライブを搭載可能で、1Uあたりの容量とパフォーマンスを50%向上するという。また、VNXe全体で、2.5インチドライブをサポートし、管理面では管理ツール「Unisphere Remote」で、遠隔拠点に分散する数千台のVNXeを、本社などから一括管理できるようにする。ナポリターノ氏は、ファイバチャネル接続に対応したVNXeも、来年に提供の予定と話した。
VNXシリーズのソフトウェアは新バージョンを投入する。このバージョンでは、SSDを生かすことのできる自動階層化機能(「FAST VP」)で効率を改善する。まず、記憶媒体(SSD、SAS、ニアラインSASなど)で、それぞれ異なるRAIDレベルを設定し、これらを同一のストレージプールに組み込んでFAST VPを適用できるようになる。また、FAST VPを構成するいずれかの媒体にドライブを追加すると、自動的にバランスを調整する機能を搭載する。
また、仮想化環境でのVNXの稼働監視を改善するため、ヴイエムウェアの管理製品「vCenter Operations Management Suite」のストレージ管理機能のライセンスを受け、VNXの管理機能と連携させた「VNX Storage Analytics Suite」を販売する。ボトルネックの判別やエラーからの復旧が容易になるという。
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