10Gbpsや40Gbpsの「PCI Express over Ehter」も視野に
リソースはイーサネットの先に、NECがExpEtherを製品化
2012/05/24
NECは5月24日、PCI Expressバス接続をイーサネットを介して行えるようにする技術「ExpEther」を実装した初の製品を発表した。CPUと、ストレージやグラフィックボード、USB機器といったコンピューティングリソースとの間をイーサネットで接続できるため、筐体サイズやケーブルの長さ、部屋の面積や電源容量といった物理的な制約にとらわれずに拡張可能なコンピューティングシステムを実現できる。
ExpEtherはNECが2006年に開発した「PCI Express over Ehter」技術だ。通常のPCやサーバではPCI Expressバスで転送されるDMAを、イーサネットフレームでカプセル化して転送する。輻輳や再送制御も行うため、高速かつロスレスのデータ転送が行える。また、電源のオン/オフなどを命令するレベル信号も転送可能だ。
ExpEtherを利用すれば、サーバやPCのリソースを物理的な制約にとらわれることなく、必要に応じて追加、拡張できる。ExpEther越しのリソースは、CPUから見れば、ローカルリソースと同じように利用可能だ。この結果、筐体サイズなどの制限で困難だった、高いレベルの「スケールアップ」が実現できる。「ExpEtherはコンピュータとネットワークの垣根を超える技術だ。ネットワークの先にさまざまな資源を置くことで、ネットワーク上に大きなコンピュータを構築できる」(NEC 応用アプライアンス事業部 技術部長 岡山義光氏)。
NECは今回、ExpEther技術をLSIに実装した「ExpEtherエンジン」を製品化した。このエンジンをCPU側とリソース側の双方に対に導入すれば、ExpEtherを介してデータを転送できるようになる。ハードウェアのみで処理を行うため、オーバヘッドを最小限に抑えることができるのもメリットという。当初のスループットは1Gbpsだが、すでに10Gbps版での検証も済ませており、将来的には40Gbpsへの高速化も視野に入れている。
基本的にイーサネットフレームでの処理となるため、シンクライアントシステムのようなルータ越しの通信は行えない。どちらかというと近い距離にある閉じたネットワークで高速に処理を行うための技術という位置付けだ。
ExpEtherエンジンを搭載した新製品は3種類。サーバやワークステーションの拡張バスに接続する「ExpEtherボード」(2万5000円から)、GPUやHDDといったI/Oデバイス群を接続してリソースを追加するための「ExpEther I/O拡張ユニット」(4万円から)、KVMのように画面表示や音声出力などのユーザーインターフェイスをExpEtherで提供する「ExpEther クライアント」(3万5000円から)だ。すでに大阪大学が、汎用コンピュータシステムにExpEtherを導入することを決定している。
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