フォールバックに備えてJAIPAなどが情報提供
IPv6の世界へようこそ〜World IPv6 Launch、始まる
2012/06/06
日本時間の6月6日午前9時から、Webコンテンツ事業者やインターネットサービスプロバイダ(ISP)、ルータなどの機器ベンダが「恒久的」なIPv6対応を開始する「World IPv6 Launch」が始まった。World IPv6 Launch日本語版のページによれば、いまのところ、特に異常は報告されていないという。
World IPv6 Launchは、2011年に実施された「World IPv6 Day」と同様にInternet Society(ISOC)が主催するイベントだ。参加各社の一覧は、「Webサイト運営者」「ネットワークオペレータ」「ホームルータベンダ」という3つのカテゴリに分けてWorld IPv6 LaunchのWebページに掲載されている。特に、Facebook、Google、Yahoo!、Bingといった主要なWebサービスの運営元が参加することは、大きな影響を与えるものと思われる。
日本からは、Webサイト運営者としてはNTTコミュニケーションズ、NTTぷららなど100社近くが参加を表明した。また、ネットワークオペレータとしてはKDDIとSuperCSIが、ホームルータベンダとしてはNECアクセステクニカとヤマハの名前が挙がっている。
アジア太平洋地域でIPv4アドレスの在庫が枯渇したのは2011年4月のことだ。とうとう訪れた在庫枯渇を機に、IPv6への移行の必要性があらためて浮上し始めた。だが、事業者側では「IPv6ユーザーが少ないので対応するメリットがない」、一方ユーザー側は「サービスがIPv6に対応していないので移行するメリットがない」と互いに様子をうかがう、鶏が先か卵が先かという状況が長年続いていたのも事実だ。
今回のWorld IPv6 Launchでは、参加各社がIPv4に加えてIPv6にも対応する。しかもWorld IPv6 Dayが24時間限定でIPv6対応を図るという試みだったのに対し、World IPv6 Launchは「恒久的」にIPv6に対応する点がポイントだ。これを機に、インターネット全体でのIPv6対応が急速に進み、IPv4からIPv6への移行が本格的に始まると期待されている。
懸念される「フォールバック」問題
しかし日本のインターネット環境では、早くからIPv6に取り組んできたがゆえの問題が懸念されている。NTT東日本/西日本の「フレッツ光サービス」などを利用している場合の「フォールバック」の発生だ。
フレッツ光サービスではクライアントに、インターネットには接続できないIPv6「閉域網」のアドレスが割り当てられる。この環境で、Windows Vista/7といったIPv6対応のクライアントを使い、IPv4とIPv6の両方に対応しているデュアルスタックのWebサイトにアクセスしようとすると、最初にIPv6で接続を試み、うまくいかない場合はあらためてIPv4での接続に切り替えるという挙動を取る。これが「フォールバック」で、サービスとしては許容できないほどの時間がかかったり、接続に失敗するケースが報告されていた。
日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)では、この問題に関する文書を公開し、対策方法とともにISP各社の対応方針を紹介している。
ソフトウェアのアップデートやポリシーテーブルによっても解消できる可能性があるが、根本的な対策は、フレッツ光サービス上で利用可能なIPv6サービスを導入すること。当たり前だが、IPv6クライアントがIPv6ネットワークを介して、IPv6対応のWebサイトにアクセスする場合は何も問題が生じない。そこでNTT東日本/西日本では、IPoE(ネイティブ)方式のIPv6サービスをデフォルトで提供し、工事費も無料とすることを発表した。
一方、暫定的な対策としては、DNSサーバ側で応答するアドレスをIPv4のみとする「AAAAフィルタ」がある。これを導入すれば、はじめからIPv4でアクセスするためフォールバックは発生せず、それに伴う遅延も生じない。ただしIPv6対応ユーザーまでもがIPv6で接続できなくなってしまうという問題も生じるため、導入するかしないかはISP各社の判断に委ねられている状況だ。
JAIPAのWebページには、ISP各社の対応状況と案内用Webページへのリンクが紹介されている。現時点ではトラブルは報告されていないというが、障害の可能性が疑われる場合はこうした情報が参考になる。
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