「OpenFlowの恩恵を受けない組織はない」
Open Networking Foundationから見たSDNとOpenFlow
2012/06/15
「SDN(Software Defined Networking)はOpenFlowよりもはるかに大きな(概念)だ。しかしOpenFlowはSDNにとって不可欠な役割を果たすと(ONFでは)考えている」。6月12日より千葉・幕張で開催されているINTEROP Tokyo 2012のために来日したOpen Networking Foundation(ONF)のエグゼクティブ・ディレクターであるダン・ピット(Dan Pitt)氏は6月11日、ONFの活動について説明した。OpenFlowおよびSDNは、今回のINTEROPにおける最も注目のキーワード。会場ではこれらを解説するセッションや、相互接続デモが多数繰り広げられている。ONFはOpenFlowの仕様策定の場となっている団体で、このプロトコルの適用範囲を拡大するとともに、OpenFlowを超えてSDNに向けた活動をしていく。
ピット氏は、「SDNという言葉は人によって定義が違う、しかしユーザーは(この言葉を通じて何を実現したいのかが)分かっている」と話している。ONFではSDNの定義を、データプレーンとコントロールプレーンを分離し、グローバルな可視化ができる集中制御ソフトウェアを用い、ネットワークの直接的なプログラマビリティを実現するという3つの抽象化を実現することだとしている。サーバもストレージも、仮想化によって柔軟にユーザーのビジネスニーズを反映できるようなものになりつつある。しかし、ネットワークだけは、硬直的なものであり続けているという状況を打開するのが目的だという。
ピット氏は、SDNでは抽象化レイヤを提供し、オープンなプログラムインターフェイスを提供することを目指し、OpenFlowではアプリケーションによる直接的なネットワークの制御を実現していくとする。「こうした取り組みからまずメリットを得るのはクラウド事業者や通信事業者だ。しかし恩恵を受けない組織はいない」。
ONFはSDNをネットワークの世界の新たな常識にすることをビジョンとして掲げ、SDNの周りに活気のある市場を作り上げ、こうした活動をベンダではなくユーザーによる主導で行っていくことを目的としているという。
ONFのボード(理事会)を構成するのは大規模クラウドサービス企業、通信事業者、大学だ。理事会にはベンダはいない。しかし1年少し前に23のメンバーでスタートしたONFは、いまでは主要ネットワークベンダを含む、71のメンバーが参加しているという。「われわれがベンダに、(ONFへの)参加を促す必要はない。ベンダのほうからわれわれを追いかけてくるからだ」。
ONFでは、OpenFlow仕様の策定を進めてきた。ONFメンバー間での自動的なクロスライセンスを前提とし、知的財産権を主張しないことで、普及スピードを高めているという。開発成果はロイヤリティフリーでメンバーに提供される。しかし標準化活動だけをやっているわけではなく、アーキテクチャの策定、啓蒙、そして普及に向けたその他の活動を進めているという。
ONFではネットワーク機器とOpenFlowコントローラを結び付けるプロトコルであるOpenFlowに加え、構成プロトコルも策定している。OpenFlowコントローラとプログラムを結び付けるAPI(ONFでは「Northbound API」と呼んでいる)については、必ずしも標準化をすると決めているわけではないが、これにかかわる要件を探索(explore)しているという。
「どんなネットワーク機能をアプリケーションに提供する必要があるかということもあるし、どんなアプリケーション機能をネットワーク側に知らせる必要があるか、それによってアプリケーションに対してネットワークを仮想化できるか。アプリケーションがネットワークの詳細を知らなくてすむようになれば、プログラマにとっての大きな助けになる」。
ただし、「現在、各OpenFlowコントローラ実装がそれぞれ妥当な理由で、個別にNorthbound APIを提供している。ソフトウェアのAPIの世界では、オープンソースのAPIにしろ、商用APIにしろ、デファクトの標準が生まれてくるのが普通だ」。だからONFのような団体が標準化をすべきかどうかは、自明ではないのだという。
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