セキュリティや信頼性をアピール

AWSのアーカイブサービスGlacier、記憶媒体はテープ?

2012/08/24

 米Amazon Web Services(AWS)が東京を含む5つのリージョンで提供開始した低料金のデータアーカイブサービス「Amazon Glacier」。8月24日にアマゾンデータサービスジャパンの技術統括部長/エバンジェリストである玉川憲氏が行った説明に基づき、補足情報をお伝えしたい。

 このサービスの概要は8月21日に書いた記事のとおりだ。信頼性やセキュリティについて、玉川氏は次のように説明している。Amazon S3の10分の1の料金だが、データは3カ所以上の拠点の複数装置に複製され、定期的にデータ一貫性のチェックと自動回復を行うなど、データの耐久性はAmazon S3と同程度という。アップロードされたデータはサーバで自動的に暗号化されるが、ユーザー側が暗号化を施したうえで、アップロードすることももちろんできる。このサービスはAWS Identity and Access Management(IAM)にも対応する。従って、データへのアクセスができるユーザーを制限できる。データ転送はSSL通信で行われる。

 データのアップロード・プロセスは、比較的シンプルだ。Amazon GlacierのAPIあるいはSDKを用い、データをアプリケーションでGlacierに転送する。前回の記事の繰り返しになるが、このサービスを使うには、単一あるいは複数のファイルで「アーカイブ」をつくり、アーカイブ単位でアップロード/ダウンロード、あるいは削除することになる。従って、このサービスそのものは、それぞれのファイルの中味が変更されるようなデータのバックアップには向いていない。一般的なバックアップと同じような使い勝手を実現したければ、アプリケーション側で差分を管理する機能を実装するなどの工夫が必要だ。いったん作成されたら変更されないデータを、ほとんど取り出さない前提で保管する先として、最も適しているのがAmazon Glacierだ。

 多少複雑なのはデータのダウンロード・プロセス。ユーザーのアプリケーションがデータの取り出しリクエストをAWS Glacierに発行すると、「3.5〜4.5時間で」データが取り出され、ダウンロード可能な(AWS用語では「ホットな」)状態になる。その時点で、HTTP、メールなどによる通知がユーザーに送られてくるため、ユーザーは通知後24時間以内にダウンロード処理を開始しなければならない。

aws01.jpg データのダウンロードは、いったんAWSにより対象データが「ホット」にされ、その旨通知を受けてから24時間にダウンロードするという手順

 なぜデータの取り出しに3.5〜4.5時間掛かるのかを尋ねてみたが、システムのアーキテクチャにかかわることであり、非公開だと玉川氏は答えた。完全な憶測でしかないが、このサービスは記憶媒体にテープを使っているのかもしれない。取り出し対象のデータが保存されているテープを(ロボットなどで)保管場所から取り出し、このテープ内の該当データをサーバのハードディスクに移し、URIを割り当てるまでの時間が、およそ「3.5〜4.5時間」といっているのではないだろうか。データの削除についても、ユーザーアプリケーションからの削除コマンドがあると、データが実際に削除されるかどうかは別として、コマンド直後からユーザーは対象データへのアクセスができなくなると玉川氏は説明している。これも、削除対象アーカイブのメタデータを消すことで、とりあえずアクセスできなくし、あとで削除しているのかもしれない。

 繰り返すが、上記はまったくの憶測だ。そしてもし記憶媒体にテープを使っていたとしても、このサービスの価値が下がるわけではない。ただ、Amazon Glacierに保管されたデータが必要な時に即座にダウンロードできるわけでないこと、そして短期間あるいは大量のデータダウンロードは上乗せ料金の対象になることには注意が必要だ。

 Amazon Glacierについては、例えば医療画像をクラウドに保管するサービスを提供している東芝からも、期待の声が寄せられているという。GlacierはAWS Import/Exportにも対応していると前回の記事に書いたが、東京リージョンではまだAWS Import/Exportサービスが提供されていない。Glacierの登場で、日本でもAWS Import/Exportのニーズがさらに高まると予想されることから、玉川氏はできるだけ早くこのサービスを日本で提供したいと話した。

(@IT 三木泉)

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