真夏の祭典「WordBeach 2012」開催レポート
Microsoft WordでWordPressを更新する方法
2012/08/28
8月25〜26日、名古屋の新舞子まなビレッジ南浜荘で「WordBeach 2012(以下、WordBeach)」が開催された。WordBeachは、パブリッシングプラットフォーム「WordPress」のユーザーによるWordPressユーザーのためのカンファレンス。2日間に渡るイベントから、いくつかのトピックを抜粋してレポートする。
WordでWordPressを更新
まずはじめに、本イベントで最も盛り上がったといっても過言ではない「ライトニングトーク」を紹介したい。フリーランスでWeb制作に携わっている野村圭氏が「WordでWordPressを更新」する方法を語った。
「CMSを入れれば、Word感覚で簡単に更新できる」という言葉を耳にしたことはないだろうか? しかし、結局は作業が面倒で更新が止まってしまう例が多い。しかし、「Microsoft Office Word」から直接投稿できるならばどうだろうか。今よりも頻繁に更新されるようになるかもしれない……。そんなテーマで、野村氏は3分で魔法のようなプレゼンをしてくれた。
実は、Microsoft Office Word 2007以降には、CMSに直接投稿できる機能が標準で用意されているという。Officeボタンから「発行」、「ブログ」へと進むと、WordPressの情報(URL、ログインID、パスワード)を入れる画面が現れる。WordPress側の設定は「WordPress、Movable Type、MetaWeblog および Blogger XML-RPC 投稿……」にチェックを入れるだけ。あとは編集をするだけである。タイトル欄にタイトルを入れ、本文には、通常の投稿と同じように画像や図、書式を入れる。
カテゴリについても、「分類の挿入」からプルダウンで選択でき、「発行」ボタンを押せば、公開完了というわけだ。さらに、後から記事を修正したいときにも、元のWordファイルを修正して発行を行えば上書きされる。ただし、画像だけはそのままのサイズで投稿されるため、注意が必要とのことだ。
これを実現しているのが、XML-RPCという仕組み。この仕組みは、WordPress独自のものではなく、主要なブログサービスなどで幅広く活用されているという。この仕組みを使うことで、ローカルにあるCSVファイルから一括投稿できたり、外部サービスのAPIやcronと組み合わせて毎日決まった時間に自動でコンテンツを投下できたりするという。
野村氏のテンポのいいプレゼンに、会場からは「おぉー!」「ほぉー!」などという歓声がスライドごとに湧き起こっていた。
プラグイン無料配布戦略
続いて印象に残ったのは、石川栄和氏のセッションである。WordPressのテーマやプラグインを無料配布するメリットと、その収益モデルについて語った。
石川氏は、「BizVektor」というテーマを作成し、2012年1月にリリースして以来、無料で配布しているという。BizVektorの無料配布には、いくつかの戦略があった。
まず、スピードである。有料で売ろうとすると、品質を保証しなければいけない。そのため、モノが完成しても、バグチェックなどでどうしてもリリースが遅れてしまう。Web業界は、早い者勝ちという一面もあるため、バグチェックをしている間に先を越されてしまうというリスクがあるのだ。Facebookの創始者マーク・ザッカーバーグ氏の有名な「Done is better than perfect(完璧を目指すよりまず終わらせろ)」という言葉があるが、早くリリースすることに重点を置いたのだという。
そして、次の論点は「売ろうとすれば、売れるのか」ということである。買ってもらうためには、ユーザーにその存在を知ってもらわなければならない。存在を知ってもらうためには、SEOで上位に来るようにコンテンツをたくさん作るか、あるいは、広告費に人的コストや金銭的コストをかけなくてはならない。さらに、見付けてもらったとしても、ネット上ではすでに数多くのWordPressのテーマが配布されている。そんな中で、名前も聞いたことないような企業が置いている有料テーマに、お金を出してくれるのだろうか、と考えたという。買ってもらうのには敷居が高いのだ。
逆に無料配布にすることで、ユーザーはTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアで拡散してくれる。すると、知名度を一気に上げられる。また、何もないところから売るのは難しいが、一度使ってもらえれば、良い評価を得たり、次の有料サービスや新しいサービスの足場となる。サイトへのアクセス数も、有名ブロガーとまではいかないが、ある程度稼げるため、広告バナーを張ることもできる。
また、テーマやプラグインを配布することで、自分自身のことを覚えてもらえるというメリットもあるようだ。イベントでLTをしたり、名刺交換のときに「こんなテーマを配布しています」などをいうと、「●●を作っている▲▲さん」という形で覚えてもらえるという。このように覚えてもらうことで、交流が深まり、困ったときに助けてもらえる仲間もできる。
さらに、会社のブランディングにも役立つ。例えば、「このテーマやプラグインを作っているところに発注するなら安心」と思ってもらえるため、仕事が来やすくなるのだそうだ。中には、「このテーマを作っている人に仕事をお願いしたい」などと指名でくる仕事もある。このように舞い込んできた仕事は、無茶な要求や価格競争などもない。何より、指名してもらえる仕事というのは光栄なことで、とても気持ち良く仕事ができるという。
極めつけは、次の仕事のタネになってくれるということ。例えば、配布しているテーマやプラグインを直接カスタマイズしてほしいという案件も来るそうだ。また、ホームページリニューアルや、デザイン変更時などに声をかけてもらうこともある。
石川氏は、「人に受け入れられるものは、自分が必要なものである」と話す。「BizVektorは、自分が必要だったから作った。結論として、自分だけでなく他の人も必要だったというだけのことだ。そういうものを作ってほしい」(同氏)。そうすることで、自分の技術力が上がり世界中の人に使ってもらうことができる。プラグイン無料配布戦略は、まさにいいことづくしなのである。
これだけでは終わらない、真夜中のWordPressとももクロだZ
WordBeachはまだまだ続く。夜通しで、3つの部屋に分かれてそれぞれの時間を過ごしたのだ。
1つ目の部屋は、「WordPressの動作原理について議論する部屋」。その模様は、朝までUstreamを通じて中継された。
2つ目は「お酒の部屋」。ここはわざわざ説明するまでもないだろう。
そして3つ目は、女性アイドルグループ「ももいろクローバーZ」のライブ映像を楽しむ部屋だ。WordBeach運営スタッフに目をやると、スタッフ用Tシャツはいつの間にかコンサートTシャツに変わっており、ポケットからはハート型のペンライト5本が……筆者は生まれて初めて、生ヲタ芸を目にすることになった。
名古屋のWordBeachは、カンファレンスあり、LTあり、動作原理USTあり、お酒あり、ももクロヲタ芸ありの、まさに「真夏の祭典」であった。次回は、2012年9月15日にWordCamp Tokyo 2012、2012年11月3日にWordCamp Osaka 2012が開催される予定だ。WordPressスタッフはフレンドリーで、本当に楽しいイベントだった。初めてでも気兼ねせずに、まずは参加してみてはいかがだろうか。
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