VMworld 2012での最大のメッセージとは
ヴイエムウェアのこれまでの4年、これからの4年
2012/08/28
米ヴイエムウェアは一時のような輝きを失い、OpenStack、CloudStackやHyper-V/System Centerに対して今後、守勢一方の状況に陥っていくのではないか。米国のメディアで、最近こうしたトーンの記事が散見されるようになってきた。8月27日(米国時間)にサンフランシスコで開幕したVMworld 2012において、ヴイエムウェアの新旧のCEOが登場した初日の基調講演は、こうした見方に対して婉曲的に反論するような内容だった。「OpenStack、CloudStack、Hyper-V/System Centerと競合するように思われることは心外だ、そんな狭い世界を目指していたことなどない」とでもいいたげだった。
ヴイエムウェアは9月1日付で、現在EMC情報インフラ製品部門のプレジデント兼COOであるパット・ゲルシンガー氏がCEOに就く。現CEOのポール・マリッツ氏はチーフ・ストラテジストとしてEMCに戻り、ヴイエムウェアの取締役会に残る。マリッツ氏はインテル時代の同僚であり、約30年前からの旧知の仲として、ゲルシンガー氏を紹介した。
CEOは交代するが、戦略は変わらない。マリッツ氏は2008年にヴイエムウェアのCEOに就任して以来、仮想化インフラの企業を、クラウドプラットフォーム企業に変身させるためのさまざまな活動を進めてきた。SpringSourceやGemFireを買収して(PaaSレベルに相当する)アプリケーションプラットフォーム製品群を構築し、SaaSレベルに相当するアプリケーションもいくつか買収した。一方で稼働監視や障害解析などの製品を統合して管理製品群を構築し、またマルチテナント環境におけるネットワーク分離やセキュリティの機能を備えたクラウド運用ツールvCloud Directorを、クラウドサービス事業者や大企業の間で浸透させつつある。クラウドプラットフォーム(マリッツ氏は「クラウドOS」という言葉を使っていたが)とは、仮想化だけでなく、狭義の運用管理だけでもなく、さまざまなレイヤ、さまざまな角度での抽象化や自動化を進めることだという考え方を、技術や製品として具現化してきたのが、これまでのマリッツ氏の4年間だった。ゲルシンガー氏の仕事はこの基本的な方針を受け継ぎ、クラウドという目的に照らして同社の製品群や技術をより洗練、成熟した完成度の高いものに発展させていくことだ。
ヴイエムウェアは今回のVMworldで、VMware vSphereのマイナーバージョンアップ版である「VMware vSphere 5.1」を発表(ちなみにVMware vSphere 5.1では、不評だったvRAM単位のライセンス方式を以前のCPUライセンス方式に戻すとゲルシンガー氏が話すと、場内からは大きな拍手が起こった)。これとともに新パッケージ製品「VMware vCloud Suite 5.1」を発表した。vCloud Suite 5.1は、vSphere 5.1のEnterprise Plusエディションに、「vCloud Director 5.1」、VXLANによるネットワーク仮想化機能(これはNiciraのNVPではない)やファイアウォール機能のvShield Edgeを含む「vCloud Networking & Security」、そして災害復旧自動化ツール「vCenter Site Recovery Manager 5.1」をバンドルしたものだ(vCloud Suiteには、正確には3つのエディションがあり、エディションごとに含まれる製品は異なる)。クラウド関連、特にクラウドサービス事業者の世界ではOpenStackなどのクラウド運用基盤製品が話題に上ることが増えてきた。しかしこれに対し、「クラウド運用基盤とは単なる仮想化+運用自動化ではない」というヴイエムウェアの考えを製品の形にしたのがvCloud Suiteだという捉え方もできる。
製品や技術の要素はかなりそろってきた。これからはこれらの相互間の統合度をどう高め、さらにクラウド化ツールとして使いやすいようなものにしていくかが重要になる。どんなに豊富な機能がそろっても、エンドユーザーや運用担当者にとって複雑なものでは意味がない。
ゲルシンガー氏は基調講演で、今後新しいアプリケーションを立ち上げるのに要する時間は、現在のように数時間から数日といったレベルでなく、数秒から数分にならなければならないと話した。そのためには「Software-defined Datacenter」が必要になってくるとする(これについては別記事をお読みいただきたい)。CPU以外の、ストレージやネットワークについても、「抽象化」「プール化」「自動化」を推進していくという。
ヴイエムウェアCTOのスティーブ・ハロッド氏も同じ基調講演に登場。まずあらゆるアプリケーションが仮想化の対象になることをはっきりさせ、80%以上のアプリケーションが仮想化される世界を目指すと語った。例えばデモを見せた「Serengeti」というツールは、コマンドラインでHadoopノード数を指定することで、ノード数を即座に増減させられるマクロ的ツールだ。こうしたツールを通じ、Hadoopの運用に仮想化環境が適していることを示すとともに、夜間の遊休IT資源を活用して、夜間だけHadoopを動かすといった使い方も提案していこうとしている。
クラウドの高度化という観点からは、ハロッド氏はアプリケーションも含めたクラウド運用の自動化ソリューションをデモした。ヴイエムウェアが5月に発表した「VMware vFabric Application Director」では、アプリケーションの展開をシンプル化し、自動化できる。vCloud Directorにより管理されるクラウドで仮想データセンターをつくり、Application Directorでシンプルにアプリケーションをデプロイし、その後の運用は「vCenter Operations Manager」という製品で容易に管理できる。一連の流れとして抽象化できること、シームレスにつながることが重要だ。
こうしたクラウドインフラの縦・横双方向の自動化と運用の簡素化を実現する一方で、マルチクラウドのIT環境を統合管理できる仕組みを今後発展させていく。クラウド関連技術において、まだまだ「未開拓地」は数多く残されている、今後も、それらに一番最初に乗り込んでいく、というのがおそらく今回のVMworldでの最大のメッセージだ。
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