マルチデバイス・ワークスペースを実現
iOS端末の「仮想化」も、ヴイエムウェアのHorizon
2012/08/30
米ヴイエムウェアは8月28日(米国時間)、エンドユーザーコンピューティング環境管理製品群「Horizon Suite」のベータ版を2012年中に提供開始すると発表。CTOのスティーブ・ハロッド氏はVMworldの基調講演で、このHorizon Suiteと、同社が5月に買収を発表したWanovaの「Wanova Mirage」についてデモを通じて紹介した。また、Android端末の仮想化技術を発表済みの同社だが、開発中のiOS端末の「仮想化」技術についてもハロッド氏が紹介した。
Horizon Suiteとは、企業の社員などが多様な端末で、一貫した業務環境を使えるようにする一方、企業のIT部門がその環境全体を集中管理できるようにするためのソリューション。この製品群により、「マルチデバイス・ワークスペース」を現実のものにすると、ハロッド氏は話した。Horizon Suiteには、製品を提供済みの「Horizon App Manager」、開発を進めてきた「Project Octopus」、「Project AppBlast」、そしてモバイル端末の仮想化技術「Horizon Mobile」などが含まれる。
Horizon Mobileにより、社員は1台のスマートフォンで、個人用と業務用の、2つの環境を切り替えて使える。企業は、業務用のスマートフォン環境に対して業務アプリケーションや業務データを、会社としての管理ポリシーに基づいて社員に提供できるようになる。Android端末用にはハイパーバイザ「Mobile Virtualization Platform(MVP)」の技術を提供開始済みの同社だが、今回はiPhone/iPadの仮想化もHorizon Suiteに含めると発表した。
ただしiOS端末の仮想化は、アップルが許可しないかぎり、ハイパーバイザを使うことはできない。そこで苦肉の策としてヴイエムウェアが提供するのは、アプリとしての仮想ワークスペースの実装だ。
HorizonをiOS端末にインストールすると、ユーザーからは、アプリフォルダのように見えるようになる。このフォルダを開くと仮想デスクトップ(VMware View)、業務用SaaSアプリ、業務用ファイルスペースなどが、アプリアイコンとして見え、それぞれを起動できる。これを「仮想化」と表現できるかどうかは微妙だが、かえってMVPのようなハイパーバイザ方式に比べ、実際の導入や運用がはるかにやりやすいことは容易に想像できる。社員の私用端末にハイパーバイザを導入するのは、心理的にも技術的にもハードルが高いが、アプリとして業務環境を入れさせるのであれば、心理的な抵抗をさして感じずに社員自身が実行できるからだ。
Horizon Suiteには、ほかに次のような製品が含まれる。
- モバイル端末を含めた各種端末を、社内・社外のアプリケーションと結び付け、集中管理する役割を果たす「Horizon App Manager」。アプリケーション・カタログ、Webアプリ/SaaS、ThinAppアプリへのシングルサインオンを実現するためのアカウント管理、アプリケーションの利用状況管理などの機能を持つ。今回の講演でハロッド氏は、シトリックスシステムズのXenAppのアプリケーションもシングルサインオンの対象にすると話した。
- 企業向けのDropboxライクなサービスとしてヴイエムウェアが開発してきた「Project Octopus」。セキュリティを確保しながら、端末間で業務ファイルを同期できる。
- アプリケーションUIのHTML化技術「AppBlast」。ただしハロッド氏は、個々のアプリケーションのHTML化ではなく、VDI画面のHTML化をまずは実現すると話した。アシストが日本で販売しているEricomの「PowerTerm WebConnect」のようなものを意味しているのであれば、さまざまな端末からWebブラウザ1つで、HTML5/WebSocketsにより仮想デスクトップを利用できるようになる。
Mirageにより、物理PC環境も集中管理へ
ハロッド氏が、エンドユーザーのための自由度と柔軟性の向上と、IT部門による集中管理の両立のために役立つもう1つの技術として紹介したのは「Mirage」だ。今年5月にヴイエムウェアが買収を発表したWanovaという企業の製品で、米国では9月に、ヴイエムウェアのブランドで販売開始する。
Mirageは物理PCを対象とした、PCのシステムイメージの集中管理製品。各ユーザーのPCのOS、アプリケーション、ユーザーデータ、ユーザープロファイルなどをリアルタイムでIT部門のサーバにバックアップし続ける機能を持つ。このため、ユーザーPC端末が壊れても、デスクトップ環境を完全に復旧できる。また、この製品は、IT部門がつくった社内標準システムイメージを、物理PCに統一的に適用できる機能を持つ。
ハロッド氏は上の図のように、Horizon SuiteとMirageを並べて示し、この2つによって、デスクトップ仮想化環境、および仮想化されない既存のPCをまとめて、集中環境の対象とすることができると説明した。Mirageについては今後、VMware Viewとの連携を図っていくという。
MirageとVMware Viewが連動すれば、例えばMirageで物理PCのバックアップを維持しておき、このデスクトップ環境を後で仮想化する、さらにその逆にいったん仮想化したデスクトップを、ユーザーの外出時などに、オフラインで利用できるようにローカルで走らせる、といったことが実現できるという。
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