オラクルが「Oracle Endeca Information Discovery」リリース

いまのビッグデータはソーシャルデータに偏り過ぎ?

2012/09/11

 日本オラクルは9月11日、ビッグデータ解析の新製品「Oracle Endeca Information Discovery」(以下、Endeca)を提供開始すると発表した。参考価格は、最小構成1CPU/25ユーザーの場合で900万円から。

構造化と非構造化データをマッシュアップ

三澤氏写真 日本オラクル 専務執行役員 製品事業統括 三澤智光氏

 Endecaはデータウェアハウスやログなどの社内に存在する構造化データと、ソーシャルメディア等の外部に散在する非構造化データを検索・収集し、分析を可能とするソフトウェア製品。オラクルの分析専用システム「Oracle Exalytics」上での動作が保証されているため、超高速処理も可能だという。

 そもそもEndecaは、オラクルが2011年10月に買収した企業の製品。買収前から非構造化データの分析技術に優れており、600社以上の顧客を抱えていたという。オラクルは、従来から構造化データの分析ツールなどは持ち合わせていたが、この製品を統合したことにより、非構造化データの分析も容易になり、構造化と非構造化を組み合わせたデータ分析が可能になった。

 この点について、日本オラクル 専務執行役員 製品事業統括 三澤智光氏は「野村総合研究所(NRI)の調査結果などによると、日本は『構造化データの活用』では世界と同等以上の活用を行っているが、『非構造化データの活用』では、米国や中国にも大きく後れをとっている。『日本ではまだ真のBI市場は立ち上がっていない、ただのレポートツールとして使っている』状況だ。一方、日本の先進企業は非構造化データを積極的かつ有効的に活用している。つまり、先進企業とそうでない企業の差が大きい。今後は構造化・非構造を組み合わせた分析が重要となるため、当社のように構造化/非構造化問わずに分析できる点は、競合他社との大きな差別化ポイントだ。また、Endecaは元々ECサイト向けの製品でBtoCの操作性などを取り入れているため、非常に使いやすい。これにより、アナリスト以外の一般社員にも使いやすいツールで社内で普及しやすいだろう」と説明した。

Facebook上のユーザーの声を調べることで売上減の原因を究明

 オラクルではEndecaの実際の使い方の参考として、ある大手衣料製造小売業社の利用事例をベースとしたデモを紹介。

デモ画面 Endecaのデモ画面。Facebook上のユーザーの声が視覚的に分かりやすく表示されている。緑色が良い意味のコメントで、赤色がマイナス因子のコメント。出現頻度の高いものほど大きく太字で表示されているという

 デモは、ある上着の売り上げが急減した要因を分析するというもの。EndecaでFacebookなどの非構造化データを分析した結果、ある綿製のシャツのいいね数が減少しており、その原因は「価格の高さ」にあることが判明した。

 Endecaの画面上では、社内の構造化データとFacebook上の非構造化データが同一画面上で同じように扱えるほか、各データを容易にドリルダウンすることで原因究明できるストーリーだった。この点について、同社 製品事業統括 EPM/BI事業統括本部 EPM/BIソリューション本部 ビジネス推進部 シニアマネジャー 福岡浩二氏は、「売上減という社内の構造化データを、ソーシャル上の非構造化データを分析することで原因究明した事例だ。『価格が高い』という原因が分かったことで、価格を下げるキャンペーンなどの施策を打つことができる、この差は大きい」とコメントした。

「ビッグデータ=ソーシャルメディア分析」は間違い?

 オラクルは他社との差別化ポイントとして「豊富な海外実績」を挙げる。前述のように、Endecaは600社以上の顧客を抱えており、その実績をベースに各種テンプレートを用意。それをベースに展開できる点が非常に強みになるとした。

 また、日本語の非構造化データを分析する際に問題となるのが「日本語の辞書をどう持つのか?」だ。この点、オラクルはSCSKやNRIなどのテキストマイニングベンダと協業し、日本語辞書の充実を図っているという。

 そのほか、「専任部隊の設置」「オラクル青山センターにデモ環境を整備」「先進的ユーザーとβ取り組みの開始」などの施策で更なる差別化を進めるとした。

 三澤氏は、「日本では現在ビッグデータが話題になるが、『ビッグデータ=ソーシャルメディア分析』と考えているユーザーが多く、そのような報道もよく見かける。しかし、実際にはソーシャルメディア分析だけでは見えてこない部分も多く、社内で活用されていないだけで『実はお宝の山』と言える社内の構造化データも多い。Endecaでは、これらのデータを組み合わせてマッシュアップすることで、より価値のあるデータを導き出すものだ。また、ECサイトという最も競争の厳しい部分で鍛えられたUIを提供することで、従来アナリストしか使わなかったBIをすべての従業員でも使えるようにしている点も大きい。これにより、いままで得られなかった知見が多く得られるようになるはずだ」とコメントし、今後のEndecaの売れ行きに自信を見せた。

(@IT 大津心)

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