OpenStackにも複数のプロジェクトで参加へ

ヴイエムウェア、Nicira買収の背景と今後の戦略を聞いた

2012/09/12

 ヴイエムウェアはNiciraをどうしたいのか。8月末のサンフランシスコにおけるVMworld 2012で、ネットワーク&セキュリティ担当バイスプレジデント兼CTOのオールウィン・セクエイラ(Allwyn Sequeira)氏に買収の背景、今後の戦略、OpenStackとの関係などについて詳細に聞いたのでお伝えしたい。セクエイラ氏はTCP/IPの開発にもかかわったネットワーク業界のベテラン。Cloud Security AllianceおよびOpen Networking Foundationの創立時からのメンバーでもあり、今回の買収にも関与したという。

セクエイラ氏写真 米ヴイエムウェア ネットワーク&セキュリティ担当バイスプレジデント兼CTO オールウィン・セクエイラ氏

 前提として、ヴイエムウェアはNicira買収のプレスリリースで、「サーバ仮想化のヴイエムウェアを、Niciraがネットワーク仮想化で補完する」というような表現をしているが、これは非常に表面的な説明だ。

 すでにヴイエムウェアは、VMware vSphere/vCloud DirectorへのVXLANプロトコルの実装を進めてきており、ネットワーク仮想化技術を持っていなかったわけではない。VMworld 2012では、VXLANをVSphere 5.1/vCloud Director 5.1の新機能として大々的に紹介。ネットワーク機器ベンダなどのエコシステムがすでにできあがっていることをアピールした。

 以前の記事にも書いたが、vSphere環境に関していえば、ネットワーク仮想化/Software Defined Networking機能はすでにある。だからこのためにNiciraを買収したわけではない。

 これを踏まえて、セクエイラ氏は、買収の背景を次のように話す。

「Niciraがやってきたこととヴイエムウェアがやってきたことは、ほとんどオーバーラップしていない。NiciraはXen、KVM、Open vSwitch、OpenStack、Quantumであり、サービスプロバイダやクラウドスケールオペレータに好まれている。われわれはvSphereでエンタープライズが中心だ。

 しかし、ネットワーキングは本来、異種のコンピューティング/ストレージ環境を、MAN/WANだろうが、インターネット経由だろうが、プライベートクラウド/パブリッククラウドだろうが、相互接続していくべきだ。

 vSphereを用いて重要な業務システムを運用している企業にも、OpenStackの環境を使う開発者はいるはずだ。彼らも、vSphere環境のOracleやその他の仮想マシン、ストレージを使う必要があるかもしれない。これを可能にするためには相互接続が必要だ。

 Niciraに興味を持った理由の1つは、注意していないと、ヴイエムウェアのネットワークとセキュリティの世界、そしてOpenStackの世界、2つの世界が2つのサイロとして別個に発展していってしまうことだ。

 この2つのスタックについては、初期の段階から共通のネットワーク構成手段を確保する必要がある。

 クラウドサービスプロバイダにしても、vSphereを使う企業向けのサービスと、OpenStackなどを使うコンシューマ/開発者寄りのサービスを持っていることが多い。これら2つのサービスはそれぞれ別個に発展していくだろうが、サービスプロバイダは共通のネットワーク構成フレームワークを必要とするだろう」

 今回の買収は、VMworldの直前に完了した。では、Niciraは独立した企業として残るのか、それともヴイエムウェアの組織に統合されるのか。

「その問題は一部解決していない部分がある。どちらにも利点と欠点がある。オープンに考えているところだ。組織的にどうなるとしても、2つのチームのオファリングを統合する方法を見いだしていく」

 しかし、Niciraは自らを証明するべき重要な段階にいる。組織的な統合は阻害要因になるのではないか。

「その指摘はよく分かる。Niciraがかかわっている大規模顧客と話したが、彼らもヴイエムウェアがNiciraの方向性を変えるべきではないと強く要望している。われわれもOpenStack、オープンソース、OpenFlow、Open vSwitchにもっと貢献していく。Niciraの方向性を変えるとしたら愚かなことだ。Niciraは自社の技術をデプロイし、スケールしていかなければならない重要な段階にいる。Niciraの今の勢いを殺さないこと、これは間違いなく最優先事項だ。

 2つの技術の統合を図っていくが、これはシンプルな作業だ。Niciraがこれによって注意をそらされることはない。Niciraがヴイエムウェア製品の絡まないビジネスを進めても全く問題はない。vSphereなどをそうした環境に押し込みたいわけではない。彼らのブランドや事業をそのまま維持し、すばらしい成功を収めてほしいと思っている」

 だが、サービスプロバイダに対してはVXLANも積極的に推進していくのか。

「Niciraが現在相手にしているようなクラウドサービス事業者に対してはNiciraがいいだろう。VMware、vCloud Directorを使っているような事業者にはVXLANを推進する。

 おもしろいのは、ハイブリッド環境をどうするかだ。この場合、当初はvSphere環境側にはVXLANを使ってもらい、OpenStack側はNicira/STTを使ってもらい、ゲートウェイでつなぐことになるだろう。

 Nicraも現在はVMware環境に対応していない。Open vSwitchをvSphereに移植する取り組みは確かになされているが、パフォーマンスなどの点で問題がある。

 1、2年後の時点では、顧客の選択次第だと思う。すべてNicira環境にしたいのか、すべてVMwareにしたいのか、ハイブリッドなのか。市場がどう進展していくかを見定めたい。

 将来はプロトコルやカプセル化について両者のすり合わせができればと思うが、どうなるかは今後見極めたい。

 しかし実際、トランスポートやカプセル化手法はさして重要ではない。顧客はVXLANやSTTを買いたいわけではない。顧客にとってはネットワーク仮想化や迅速なプロビジョニング、分散ファイアウォールなどの方が重要だ。さらに相互接続性の確保およびロックインを回避できることが重要だ。

 これらすべてが意味することは、しばらくの間2つのスタックは別個に提供されていくということだ。OpenStackの世界はVMwareの世界と非常に異なる。この2つを無理矢理1つにするのは意味がない。

 短期的には、方向性の変化はほとんど見られないかもしれない。場合によっては中期的にもだ。われわれは市場の力の動きに任せたい。

 サービス事業者がNiciraを積極的に使い始めたら、Niciraへのリソース投入を加速する。世界がハイブリッドを求めるようになるなら、ハイブリッド・ソリューションに力を入れる。NiciraでvSphereを統合したいというニーズは出てこないとは思うが、どのように市場が進展するかを見たい。

 私の感覚では、Niciraは初期導入がうまくいきさえすれば、サービス事業者の間で多大な人気を獲得するだろう。デファクトスタンダードになるかもしれない。

 しかし、予想できないのは、こうしたネットワーク仮想化のソリューションをどれだけの事業者が渇望するか、市場が拡大するスピードやタイミングはどうなのかということだ」

 ヴイエムウェアは8月に、OpenStackへの参加を申請した。その目的について、セクエイラ氏は次のように説明した。

「われわれはOpenStack環境においても重要なプレイヤーになっていきたい。Niciraの買収により、われわれはこれまで参加していなかったスタックに対する戦略的に重要な足がかりを手にすることができた。

 OpenStackの一部の人々は確かに、ヴイエムウェアの参加を好まないかもしれない。しかし、ほとんどの人たちは受け入れてくれるだろうという印象をわれわれは持っている。既存の全プログラムに今後もコミットすると表明したし、これまでと何も変わらない。変わるとすれば、OpenStack、Open vSwitch、Quantumなどにつぎ込むリソースが増えるということだ」

 ネットワーク仮想化のうえにセキュリティサービスを構築していくという点でも、ヴイエムウェアはOpenStackに貢献できるという。

「Niciraはレイヤ2の仮想化を実現している。次に仮想化されるべきなのはファイアウォールだ。仮想NIC単位でファイアウォールを構築し、これらを仮想的に束ねられなければならない。Niciraは仮想ネットワークのポリシーををNVP Controllerで一括管理するが、これに相当するFirewall VP Controllerのようなものが必要だ。さらにもう1つ、サードパーティのIDS/IPSやウイルス対策製品、負荷分散製品がプラグインできる仕組みが必要だ。われわれはNiciraおよびOpenStackコミュニティと協力していきたいと考えている。これらはすべて、VMwareの世界では実現していることだ。

 vSphereへのVXLAN実装は、美しいくらいによく動いている。HPとジュニパーを除いて、主要ネットワーク機器ベンダはすべてサポートしている。われわれは、OpenStackにおけるVXLANサポートも推進するかもしれない。すでにシスコなどがこれに取り組んでいる」

(@IT 三木泉)

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