NECのクラウド型ソフトウェア開発環境「ソフトウェアファクトリ」

クラウド型開発環境導入で10〜20%のコスト削減

2012/09/27

 NECは9月27日、同社のクラウド型ソフトウェア開発環境「ソフトウェアファクトリ」の利用者が1万人を超えたと発表した。3年後に利用者3万人を目指すほか、2013年度には外販も視野に入れているという。

自動バグ検出やセキュリティ脆弱性までを開発環境に包含

 ソフトウェアファクトリは、クラウド上でプロジェクト管理や開発ツールの提供、ソースコードや仕様書の共有、バグ検出などを利用可能にする統合開発環境。NECでは従来、グループごとに別々の開発方法やツールを利用。プロジェクト状況を把握することが難しいことからリスク対応が遅れがちだったという。さらに、コスト削減のために、生産性の向上が必要だった。多くのケースでは、テストや検証環境用のハードウェアも自前で用意していた。

 こうした背景を踏まえ、同社ではソフトウェア開発環境の改善と効率化を目的に、2009年からソフトウェアの開発環境の集約化・標準化を推進。その中心的役割を果たす統合環境として、クラウド型のソフトウェアファクトリを開発したという。

山元氏写真 NEC 執行役員常務 山元正人氏

 NEC 執行役員常務 山元正人氏は、「ソフトウェア開発では、主に開発プロセスや方法論などに関する『マネジメント』、ツールや標準化などに関する『エンジニアリング』、現場でPDCAを回す『現場改善活動』の3点がポイントとなっており、当社では特に『いかに現場をサポートしていくか』を重視して取り組んでいた。そして、現場の環境改善にソフトウェアファクトリは有効だ」と説明した。

 具体的には、例えばマネジメントについては、同社ではグループ内に17種類の指標を標準化し、生産性やバグ摘出率、スケジュール適性度を測りプロジェクト管理手法と品質の向上を目指していた。エンジニアリングでは、開発案件ごとに異なっていた開発ツールやドキュメントを統一・最適化することで、コスト削減と品質向上を目指しているという。

 また、現場改善活動では、組織ごとに行っている創意工夫や成果を共有して横展開するべく、発表の場を設けていた。

夜間バッチでバグやセキュリティ脆弱性などを自動検証

 これらを踏まえ、ソフトウェアファクトリでは、クラウド上で開発環境を提供することで、開発方法やツール、プロジェクト管理指標などをすべて統一。開発環境の手配〜構築などの付帯業務から解放したという。

 具体的には、東日本と西日本のデータセンターにソフトウェアファクトリの環境を構築。東西で日次のバックアップを実施してBCP/DRを実現しているほか、社内外からのアクセスを想定したセキュアな開発環境を実現しているという。開発ツールとしては同社の「SystemDirector」を、プロジェクト管理ツールも同社独自ツールを採用している。

 開発環境を共有することで、ソースコードや仕様書などの成果物を共有できるだけでなく、複数個所で開発していた場合のソースの不整合などが起きなくなり、製造・テスト工数の10%〜20%の削減を実現したという。

 また、ソフトウェアファクトリに保存したソースコードに対しては、夜間バッチで自動検証を実施。セキュリティの脆弱性検査、バグ検出、オープンソースを勝手に修正して利用するライセンス違反リスクなどを自動的に検査する。また、クラウドサービスであるため、従来必要だった個別の開発環境の構築の手間が省けることから、環境の構築リードタイムが10分の1から100分の1に軽減できているという。

 NECでは、海外事業拡大に伴いソフトウェアファクトリを海外に展開。2012年10月からインドで稼働を開始、2013年度には中国での稼働を目指しているという。「現在は両国で数千人規模だが、APACなどは急速にビジネスが伸びているので、国内合わせて3年後には3万人規模での利用を想定している。オフショア開発の場合には、現在日本のソフトウェアファクトリの環境をインドの開発者に利用してもらっている状況だ」(山元氏)と説明した。

 同社ではさらに組み込み系開発のニーズが急増していることから、外部の組み込み開発事業者などに向けて、2013年度にも外部に提供することを検討しているという。価格は未定。

 山元氏は、「10〜20%の工数削減効果に加えて、環境構築リードタイムも大幅に削減できたことで、3年間で200億円の削減効果もあり得ると考えている。国内のSI業界は厳しいが、海外需要や組み込み開発業界はまだまだ活況だ。現に当社でも、ITソリューション事業は今年のQ1は前年同期比増だった。ただし、今後もソフトウェア開発の競争は激化するため、ソフトウェアファクトリのようなクラウドサービスで効率化することがより重要となる。このように今後さらにニーズは高まるだろう」と語り、今後ソフトウェアファクトリのニーズが高まるとの展望を示した。

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(@IT 大津心)

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