Analysis

ITを省エネに生かすことの難しさ

2008/04/14

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 東京大学本郷キャンパスは、東京都でCO2排出量が最大の事業所なのだそうだ。地球環境工学に精通する東京大学総長の小宮山宏氏は、4月11日の入学式の祝辞で、「主なキャンパス全体で、2012年までにCO2排出量を15%減らし、その間に、2030年までに50%減らすためのアジェンダを作る」と宣言した。

 具体的な取り組みの1つとして、大学院 情報理工学系研究科の江崎浩教授の主導でまもなくスタートする「グリーン東大工学部プロジェクト」がある。ITを活用したビル管理により、消費電力の削減を目指すもので、民間企業とコンソーシアムを結成し、研究を始める。

 これまでも、ビルの各種設備を統合的に制御することで、消費電力の削減を図る取り組みは散発的に見られた。例えば日照量やオフィス内の在室者の分布に応じて空調や照明をきめ細かく制御するといった仕掛けだ。松下電工が東京本社ビルの建設時に自社技術でこの種の仕組みを導入、30%近くの省エネ効果を確認したと発表したことがある。

 しかしこれまでのITによるビル統合管理システムは、ほとんどの場合ビルの新築時に導入されている。今回のプロジェクトでは、既築の建物である工学部総合研究教育棟を対象としてエネルギー消費の計測と省エネ対策の検証を進めることで、東京大学のみならず、ほかの既築事業所にも適用できる成果を得ることを目指すという。

 ITを活用したビル設備の統合制御による省エネは、理屈としては効果が予想できるにもかかわらず、現在のところ採用が広がっているとはいいがたい。その理由には、空調システム、入退室システム、電気設備などがそれぞれ別個のベンダにより提供されているため、協調制御の仕組み作りが容易ではないことや、こうした取り組みを主導するメリットがあるはずのビルオーナーにとって、省エネ効果が定量的に見えにくいことなどが指摘されている。

 「グリーンIT」の1つの側面であるIT機器自体の省エネ化とCO2の削減は、ある意味分かりやすいし普及もしやすい。しかしもう1つの側面である省エネ活動へのITの活用では、グリーン東大工学部プロジェクトのような、地道な活動が欠かせない。

(@IT 三木泉)

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