Analysis
ソフトウェアのライセンス体系は時代遅れ
2009/10/26
仮想化の普及やサービス化の流れは、ソフトウェアのライセンス体系に確実に影響を与えつつある。しかし、いまのところ、ソフトウェアベンダが仮想化に全面的に対応しているとはいいがたいこともたしかだ。
マイクロソフトはWindows Vistaで、Windows Vista Enterprise Centralized Desktop(VECD)と呼ぶデスクトップ仮想化対応のライセンスを提供している。これは利用する端末の台数をベースとしたライセンスで、その点では従来のOSライセンスと基本的な考え方は変わらない。それでも、教育機関のようにユーザー数に比べて端末の台数がはるかに少ないような利用シナリオでは特に、ライセンス料を節約しながら各ユーザー専用の環境を提供できるという点でメリットがある。
しかし不思議なことに、マイクロソフトは同様なデスクトップ仮想化技術を使ってDaaS(Desktop as a Service:仮想デスクトップサービス)を提供しようとする事業者を支援するようなライセンスを提供していない。マイクロソフトはサービス事業者に対してSPLA(Service Provider License Agreement)というライセンス方式を提供している。これはサービス利用ユーザー数、あるいは提供サーバプロセッサ数に応じ、月額でライセンス料金をマイクロソフトに支払えばいいというものだ。しかし、マイクロソフトはデスクトップOSをSPLAの対象から外している。従って、DaaS事業者はOfficeなどについては月額課金ができるものの、肝心のOSについてはユーザー企業に購入してもらうことになる。これではDaaSのメリットが半減してしまう。
サーバ・ソフトウェアのライセンス体系はさらにややこしい。マイクロソフト以外のソフトウェアベンダを含めて、仮想化対応はまだ道半ばだ。
例えばマイクロソフトは2008年に、いわゆる「90日ルール」を撤廃し、サーバ仮想化環境でライブマイグレーションを自在に行えるように、アプリケーションのライセンスを修正した。しかし、この修正はOSには適用されない。Windows Server 2008やWindows Server 2008 R2に関しては、仮想化インスタンス無制限のData Center Editionがあるので、これでカバーできるという考えかたもあるだろうが、Data Center Editionは1 CPU当たり参考価格が46万3000円と、決して安くはない。
サーバ・ソフトウェアに関していうと、ほかのアプリケーションベンダもユーザー企業にとって仮想化環境で便利なライセンス体系を積極的に提供しているとは言い切れないのが現状だ。マルチプロセッサ化に対応するため、企業向けソフトウェアベンダの間ではコア数に基づく課金からソケット数(つまりCPU数)に基づく課金へと移行する動きが進んできた。しかし仮想化環境ではどうなるのかについて、明確な指針を示しているベンダは、まだ多いとはいえないのが現状だ。
もともとソフトウェアライセンス体系は一般的にいって複雑すぎ、その条項は明確性を欠く場合も多く、真面目に対応しようとしているユーザー企業は混乱す るばかりだ。ソフトウェアベンダにとってライセンス収入は生命線であり、ライセンス体系を単純化してしまうと利益を最大化できないという事情もあるだろう。しかし、ユーザー視点で時代に即したライセンス方式を真剣に考えてこそ、ユーザー企業から信頼され続けることができるのではないだろうか。
情報をお寄せください:
- Windows 10の導入、それはWindows as a Serviceの始まり (2017/7/27)
本連載では、これからWindows 10への移行を本格的に進めようとしている企業/IT管理者向けに、移行計画、展開、管理、企業向けの注目の機能について解説していきます。今回は、「サービスとしてのWindows(Windows as a Service:WaaS)」の理解を深めましょう - Windows 10への移行計画を早急に進めるべき理由 (2017/7/21)
本連載では、これからWindows 10への移行を本格的に進めようとしている企業/IT管理者に向け、移行計画、展開、管理、企業向けの注目の機能を解説していきます。第1回目は、「Windows 10に移行すべき理由」を説明します - Azure仮想マシンの最新v3シリーズは、Broadwell世代でHyper-Vのネストにも対応 (2017/7/20)
AzureのIaaSで、Azure仮想マシンの第三世代となるDv3およびEv3シリーズが利用可能になりました。また、新たにWindows Server 2016仮想マシンでは「入れ子構造の仮想化」がサポートされ、Hyper-V仮想マシンやHyper-Vコンテナの実行が可能になります - 【 New-ADUser 】コマンドレット――Active Directoryのユーザーアカウントを作成する (2017/7/19)
本連載は、Windows PowerShellコマンドレットについて、基本書式からオプション、具体的な実行例までを紹介していきます。今回は、「New-ADUser」コマンドレットです
|
|
キャリアアップ
- - PR -
転職/派遣情報を探す
「ITmedia マーケティング」新着記事
トランプ氏勝利で追い風 ところでTwitter買収時のマスク氏の計画はどこへ?――2025年のSNS大予測(X編)
2024年の米大統領選挙は共和党のドナルド・トランプ氏の勝利に終わった。トランプ氏を支...
AI導入の効果は効率化だけじゃない もう一つの大事な視点とは?
生成AIの導入で期待できる効果は効率化だけではありません。マーケティング革新を実現す...
ハロウィーンの口コミ数はエイプリルフールやバレンタインを超える マーケ視点で押さえておくべきことは?
ホットリンクは、SNSの投稿データから、ハロウィーンに関する口コミを調査した。