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富士通は2009年、IAサーバの開発機能をドイツにある富士通テクノロジー・ソリューションズの開発センターに集約した。一方、ディスクアレイの開発機能は日本に集約しており、日本発の世界市場攻略を進めている。
富士通のミッドレンジ/ハイエンド・ストレージが、日本から世界に提供できる価値とは何か。今回は開発担当者の声をお伝えしよう。今回話を聞いたのは、富士通 ストレージ事業本部 ストレージシステム事業部の山中亮一郎氏(ハードウェア担当)と今井泰武氏(ファームウェア担当)だ。
ETERNUS DX400とETERNUS DX8000は標準およびオプションで、多彩な機能を提供している。例えば128bit AESによるデータ暗号化、災害対策のためにストレージ間の自動データ転送を実現するリモート・アドバンスト・コピー機能、RAIDグループの活性容量拡張、ボリュームの活性容量拡張、MAIDによる消費電力の削減機能などだ。ミッドレンジ/ハイエンドの分野で、最も多彩な機能を備えたストレージシステム製品シリーズの1つに数えられる。
しかし富士通では、機能の数を増やすこと自体を目的とするのではなく、あくまでもユーザーのニーズに合うのか、逆に新機能によってユーザー企業に迷惑を掛けることはないかを検討したうえで、実装の可否を判断してきた。
富士通がストレージ製品の開発で、昔から最もこだわってきたのは高信頼性だ。これも、データを守ることが、ユーザーの最も基本的なニーズを満たすことにつながるという信念からきている。
「『ETERNUS』という製品シリーズ名は『ETERNAL』(永遠)から来ている。このことが示すように、当社ではお客様のデータを守るという部分を最優先し、一丸となって開発を進めてきている。この点に関しては昔から培ってきたものであり、これからもどこにも負けないつもりで、何をするにしても意識している」と今井氏は言い切る。「富士通のストレージは、ミスの許されない官公庁や金融関連などの基幹システムの分野で広く導入されている。トラブルが起こってしまった場合には影響が非常に大きい」。
富士通 ストレージ事業本部 ストレージシステム事業部の今井泰武氏 |
理想的なのは、予想できる使用期間中に、どの部品もまったく壊れないようなストレージシステムだ。しかし、利用するかぎりいずれかの部品に障害が発生する可能性は、どんなストレージシステムのメーカーでも回避できない。
富士通における対策その1は出荷前の徹底的な検査だ。「抜き取りでなく全数検査を行っている。少しでもおかしいところがあれば交換し、再検査して出荷する」。これが富士通の根本的な考え方だと山中氏は話す。
対策その2は、部品が壊れた場合でも稼働を止めない設計にある。
山中氏は、「ハードウェアの担当者としては、必ず壊れることを想定しなければならない。壊れたときにどう壊れたのかが重要だ。当社のストレージではすべての部品を冗長化し、1つの部品が壊れたことで装置がダウンしないようにしている。製品評価の段階では、すべての部品についてエラーを起こす試験を行い、装置としてダウンしないことを確認している。つまり、壊れるならばきちんと壊れてくれる、装置としてダウンしないように壊れてくれるということだ。そこは他社に比べて富士通が優れているところだと思う。お客様にしてみると、壊れたものは壊れたと見えてしまう。しかし問題のないように壊れてくれることも重要なこと。装置をダウンさせてしまう、あるいは止めなくては修理できないというのではお客様に迷惑がかかってしまう。われわれとしてはそういう意識を持って、部品が壊れても影響を局所化するようなつくりにしている」と説明する。
対策その3は予防保守サービスだ。ストレージシステムに障害の予兆やトラブルが発生すると、システムが自動的に電子メールでサポートセンターに通報する。このメールに記載された情報に基づいて、スタッフが問題を迅速に解決する仕組みが用意されている。
対策その4はトラブルシューティングを円滑化するツールの提供だ。「トラブルが起きたときに、ストレージシステムの動作ログをソフトウェアツールにかけてもらうと、何が起きているのか、何をすればいいのかが分かる。そういう仕組みで即時対応できるようにしている。通常の障害対応は、壊れた部品を交換してもらえばいいので、日常的に使う管理ツールでは細かい情報を表示しないケースがあるが、どこが壊れたのか、どう壊れてしまったのかを知る必要のあるお客様もいる。このため、求められたときには出せるようにという仕組みを用意している」(今井氏)。
上記のような高信頼性を基本としながら、ETERNUS DX400/DX8000 seriesでは技術の進歩や、ユーザーのニーズおよび利用目的の変化に対応して、設計の変更や機能の追加を進めてきている。
富士通 ストレージ事業本部 ストレージシステム事業部の山中亮一郎氏 |
技術進歩の例としては、ディスクドライブ容量の飛躍的な向上が挙げられる。SATAドライブでは1TBの製品が使えるようになってきた。しかし、ドライブ当たりの容量向上に比べ、回転数の向上はあまり期待できないのが現実だ。このことは、例えばRAIDのリビルド作業の長時間化につながってしまう。技術が進歩したからこそ発生する問題もあるのだ。
例えば、RAID 5でディスクドライブ1基が故障すれば、即座に新規ディスクドライブを入れ替えてリビルド作業を行えば、ストレージシステムの稼働を続けながら修復ができる。しかし、ディスク当たりの容量が大きいほどその作業に時間が掛かる。富士通のストレージのファームウェアでは、リビルド作業を実I/Oの合間に行うよう、自動的に低い優先度で制御するため、リビルド作業が実I/Oのパフォーマンスに与える影響は少ない。しかし、リビルド作業の間に同一のRAIDグループを構成するディスクドライブがもう1台壊れてしまうと、もはや修復は不可能になる。つまり、リビルド作業に掛かる時間が長くなるほど、データロスのリスクが増大する。
1つの対策として、ハイエンド・ストレージ製品に広がっているのはRAID 6への対応だ。RAID 6なら、パリティを二重に保持することによって、同時に2台のディスクが壊れていても、復旧が可能だ。ただし、RAID 6はRAID 5に比べてディスクドライブの利用効率が低下するため、敬遠されることも多い。
ETERNUS DX400/DX8000 seriesでは、より経済的な仕組みとして、「リダンダント・コピー機能」を提供している。これは、RAIDグループ内のディスクドライブに故障の予兆を検出すると、自動的にスペアディスクに対してバックグラウンドでデータの再構築を実施する機能。新規スペアディスクにデータを再構築してしまえば、故障しそうなディスクドライブを切り離してスペアディスクをRAIDグループに組み込むことができる。
さらにコスト効率がいいのは「ディスクドライブパトロール」だ。ディスクドライブをシステムが定期的にチェックし、いずれかのドライブのブロックにエラーが検出されるとRAIDグループのほかのディスクドライブのデータから正しいデータを計算し、このデータだけを別のブロックに書き込むというものだ。
また、データ量の増大ペースが高まり、業務を停止させずに容量拡張したいというニーズも急速に高まっている。これに対しては、既存のRAIDグループに、稼働を止めることなくディスクドライブを1台ずつ追加できる機能がある。同じく稼働を止めずに、論理ボリューム(LUN)を拡張できる機能を組み合わせて利用できる。
最近のニーズとして顕著なのは、コスト効率の向上と環境への配慮だ。対応すべくETERNUS DX400/DX8000 seriesが搭載している機能の1つには、例えば「シンプロビジョニング」がある。仮想的に大きな論理ボリュームを定義しておき、実際にはデータが書き込まれた時点で初めて、領域の物理的な割り当てを行う。これによって、ストレージシステム購入時に、無駄なディスクスペースを用意しておく必要がなくなり、ストレージ投資を効率化できる。
富士通のストレージがいち早く実装したMAID(Massive Array of Idle Disks)技術は、環境への配慮という点で非常に注目されるようになってきた。MAIDでは、アクセスされない時間帯に、ディスクドライブ群の回転を止めることができる。通常、電源を入れていれば常時回転している状態のディスクドライブに対し、このようなインテリジェントな制御を導入すると、電力消費を例えば15%低減することもできる。
今井泰武氏と山中亮一郎氏 |
これらの新しいニーズの背景としては、ストレージ統合や仮想化の普及という大きなトレンドがある。いずれも、サーバとストレージがもはや1対1の関係ではなく、ストレージ1台で多数のサーバのI/Oを引き受けることを意味している。このことは、パフォーマンス管理に大きな影響をもたらす。
「10台のサーバのデータを1台のストレージにまとめられ、なおかつ10台のストレージと同じ性能が出せるということが求められている。性能向上はこれから先も課題であり続けるだろう」(今井氏)。
ETERNUS DX400/DX8000 seriesではコントローラ用のプロセッサおよびキャッシュを強化するとともに、ファイバチャネルディスクのドライブインターフェイスを4Gbpsに高速化。SSDも搭載できるようにして、高度な性能ニーズに対応している。ただし、SSDを使えば速くなるという単純な話ではない。
「道路にスピードを出している車 (ディスクドライブ) がいると、これからその道路に合流しようとしてくる車はなかなか合流できずに待たされてしまう可能性もある。飛ばしすぎないことで、装置全体のパフォーマンスを引き出せるケースもある。」(今井氏)。パフォーマンスを追求したいユーザーには、富士通でストレージの性能管理を担当する部署で、専任のスタッフがニーズに合わせてチューニングのアドバイスを行える体制を築いている。
では、IT業界における最大のキーワードとなったクラウド・コンピューティングについてはどう対応していくのか。ストレージメーカーの間でも、「クラウド」という言葉に紐付けた、製品の宣伝合戦が繰り広げられている。
ETERNUS DX8000 seriesは、ディスクドライブを最大2760台、記憶容量を2.7PBまで確保できるため、拡張性という点ではすでにかなりのレベルまで到達している。また運用スリム化、全体最適化といったクラウド要件も上述の機能をはじめソフトウェアとの連携ソリューションで実用レベルに達している。今後も富士通におけるサービスやサーバを含めた全社的な取り組みの進展とともに、これから導き出されるニーズに応える機能を、製品に組み込んでいく予定という。
また、ストレージ事業のグローバル展開の過程では、欧州や米国の事業担当者からのリクエストに基づき、日本では提供していないモデルやオプションを追加したり、管理用のユーザーインターフェイスをカスタマイズするなど、個別対応に力を入れている。
このように、1つの製品を世界中に押し付けるのではなく、個々の市場ニーズにも応えながら、高い品質とサポート体制を提供していくこと。これがおそらく、富士通のストレージ事業を貫く最大の柱といえるだろう。
提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画
制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2010年03月31日
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