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システムインフラベンダ ブリーフィング(2)

富士通、階層型ストレージ管理への道筋


三木 泉
@IT編集部

2008/9/22

富士通のストレージ・ソリューションが最終的に目指すところは、階層型ストレージ管理だという。しかし、これに至るには、欧米とは異なる国内ユーザーの動きを正しく把握する必要がある

 本連載では、サーバ・ハードウェアやストレージ・システム、データセンター・ネットワーキングなど、システムインフラ関連の製品やサービスを提供するベンダそれぞれの現在と将来への展望を、インタビューを通じて明らかにしている。

 第2回は、富士通のストレージ事業を取り上げる。富士通は日本の主要システムベンダの1社だが、ストレージ事業で大きな国内シェアを維持しており、関連製品のバラエティも非常に幅広い。国内市場における海外ベンダとの提携も積極的に進めているが、自社製品の海外での販売にも力を注いでいる。ストレージ事業は富士通において重要な戦略的役割を担っている。では、同社はユーザー企業におけるストレージ利用の現状をどう考え、どのような問題を解決していこうとしているのか。富士通 ストレージシステム事業本部長代理 松島等氏に聞いた。

 ユーザーが意識しなくていい階層型ストレージ管理とは

 富士通では、非構造型のデータをどう管理していくかが大きな課題になってきている点に特に着目する。これに対する同社のストレージ・ソリューションが最終的に目指すところは、階層型ストレージ管理だという。

 富士通は1Tbytesのディスクドライブから高速なストレージまでを持っている。MAIDと呼ばれるディスクドライブの回転を止める省エネ機能もある。いまでは少なくなったテープライブラリを作れる企業の1社でもある。このように、富士通はあらゆるストレージ階層の製品を全部持っている。これらの製品をお客様のニーズに対してどううまく組み合わせられるかが、1つの大きなカギだと思っている。

 当社ではストレージに関して、さまざまな先進的な機能を提供しているが、日本ではまだお客様自身が成長しきれていない。それはこれから訴求していかなければならない。分かりやすいいい方をするならば、増えるデータに対して、どうベストな解決策やパフォーマンスを提供するか。このためには、箱だけではなく制御系、マネジメント機能を付加していくことが重要だ。海外ではソフトの会社とのコラボレーションも視野に入れたうえで戦略を進めていく。

 テープライブラリを作れる数少ない企業ということだが、ストレージベンダは一般的にテープへのバックアップから、ディスクドライブへのバックアップへの移行を狙っている。そのなかでのテープの可能性をどう考えるのか。

 富士通でもD to D、つまりディスクを使ったバックアップは重要だと思っている。テープの利用価値はバックアップではなく、アーカイブにシフトする。アーカイブにもいろいろなパターンがあるが、重要なのは長期保存だ。日本のJEITAでも「100年ストレージ」というキーワードが出ているし、アメリカでも同様なことが議論されている。

 100年ストレージをやろうとすると、5年程度といったディスクの玉の寿命は短い。テープメディアはマイグレーション+長期保存ではもう一度見直されるべきだ。

 では、お客様がなぜテープに二の足を踏むケースが多いかを分析すると、要はトラウマだといえる。テープは管理がとても大変だ。昔のメインフレームのオープンリールでは、EDP室の人が媒体を倉庫に保管しておいて、5年経ったからリロードをかけるなどということをしていた。そこで読んでみると、剥離(はくり)が起きていて読めないといったことが起こっていた。それに加え、現在ではセキュリティがいわれ、事故を起こす媒体としてテープが一番多いとされている。そういったネガティブな話がトラウマ的に積み重なっている状況で、お客様がD to Dを一番に考えるのは当然だ。

 しかし、それを逆手にとれば、お客様のネガティブな悩み、苦い経験をすべて吸収できればいいということにもなる。だから私どもはテープライブラリを売るのではなく、テープを組み込んだ階層ストレージを売りたいと考えている。

 例えば、当社ではアーカイブ型のストレージでバックエンドにテープをつけているものを出している。その中で、世代管理やメディア管理、メディアが読めなくなったときにプールから新しいメディアにコピーする、ストレージベンダから新しい製品が出た時にコンテンツを移行する、といった機能を作り込むことによって、D to D to Tという階層型ストレージが完成する。第3段階として、テープという市場はまだまだ伸びると思う。

 富士通は金融系の顧客を持っているのでテープにこだわっているのではと思われがちだが、それとはまったく別の世界の話だ。階層化管理の時代に、テープはもっとうまく使えるはずだ。

 富士通で最重要課題として考える階層型ストレージ管理の目指すところは、ファイルが利用状況や重要度に従って最適な媒体に格納され、そのことをユーザーが意識しなくていいという状況だという。以前一部で導入された階層ストレージ管理(HSM)は、データが利用頻度や重要性に応じて媒体間を移動していく際に、ユーザーがデータの移動先を逐次把握していなければならない。これではなかなか広まらない。

 階層型ストレージを一般化するということを考えた時に、実は重要な技術はファイルエリアの仮想化(グローバルネームスペースの意味)だ。現実のファイルシステムでやろうとしても無理だ。ファイルエリアで仮想化すれば、マウントポイントはつねに一点なのでファイルがどこに行っても同じようにアクセスができる。これを実現したい。

 ファイル仮想化の技術を使えば、それぞれのファイルサーバは元の場所にそのまま置いておき、あとはグローバルネームスペースの技術を導入(してポリシーを設定)すれば、データが自動的に動いていくようにできる。エネルギーコストの観点からも、ファイルの価値に応じて最適なストレージ媒体を適用できるメリットがある。

 国内でストレージ統合は進むか

 欧米に比べて国内の動きが遅いといわれるストレージ統合について、富士通ではどう考えているのだろうか。

 (国内でのストレージ統合の普及は)まだかと思う。J-SOXで大騒ぎして、情報コンプライアンスのためにストレージ統合が必要と喧伝されたが、期待されていたようなインフラのリフレッシュはなかった。しかし今後監査のためにレポートを提出しなければならない場合に、いまの状態では非常に難しいはずだ。企業の皆さんは、取り急ぎ決められたことを実行できるような対策をしたのだろうけれども、監査に耐えられるような統合的なレポートのできる体制をつくっていくというときに、本当のストレージ統合だとか、長期保存のための階層化の必要性があるということに、日本のお客様が気付くかどうか。そこが1つのポイントだ。

 
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富士通、階層型ストレージ管理への道筋
Page1
ユーザーが意識しなくていい階層型ストレージ管理とは
国内でストレージ統合は進むか
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エコは新しいインフラのスタイルにつながる

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