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@IT[FYI] 企画:アットマーク・アイティ 営業企画局
制作:アットマーク。アイティ 編集局

掲載内容有効期限:2005年5月31日

 
  Active RFIDで実現する
         次世代システムの可能性
 
〜ユビキタスを実現する最先端テクノロジ〜

 RFID(Radio Frequency Identification)は、情報を授受するためのアンテナとメモリを内蔵したチップであり、専用のリーダやライタでデータの読み書きができる。バーコードの100倍以上のデータを保存できるほか、非接触で情報にアクセスできることから、在庫管理や流通の分野で注目を集めている。

 総務省の「ユビキタスネットワーク時代における電子タグの高度利活用に関する調査研究会」によると、2010年段階でRFIDによる経済波及効果が最大31兆円に達すると見込んでおり、RFIDへの期待の高まりを端的に示している。

 参考:http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/yubikitasu_d/

   RFIDの問題点と改善へのポイント

写真 富士通プライムソフトテクノロジのRFID送信機と受信機。手前右端は大きさ比較用のライター

 RFIDは、大きく2種類に分類される。チップ自身が電源を内蔵する「Active型」と、リーダが電力を供給する「Passive型」だ。

 Passive型は、ISO15693で定められた動作周波数13.56MHzが標準となっている。Active型に比べて、

  • 製造にかかるコストが安価
  • タグ本体を数ミリサイズに収められる

ことから、流通分野での利用が想定されている。利用環境に応じて、形態もカード型やタグ型、コイン型、シールタイプなど、バラエティに富んでいるのが特徴だ。

 しかし、Passive型には問題点も少なくない。比較的安価とはいえ、タグ1個当たりの単価は十数〜数十円ほど。単価が100円程度の商品管理に利用するのはコストが見合わない。また、安価なタグになるほど、通信距離が短くなる。タグの読み書き時に、リーダ/ライタと接触するほど近づけなければならないとしたら、非接触型が売りのRFIDを採用する意義は小さい。

 さらに、Passive型はリーダから電力の供給を受けてタグ内の情報をリーダに発信するため、一度に大量のタグを検知しようとするとコリジョンが発生して、一部のタグが検知できない可能性がある。金属に極端に弱い点も、Passive型の制約になっている。リーダとタグの間にアルミ箔を置いただけで、通信できなくなるのだ。

   Active RFIDへの模索

 RFIDの適用局面は、流通・在庫管理に限定されるものではない。

分野
管理
概要
セキュリティ ビル入退室管理 各フロアに設置された受信機でタグを持った人間の入退室記録を管理。また、異常通知を行う
資産管理 機器・備品の位置を表示することで保管場所・使用状況をリアルタイムに管理すると同時に、盗難・紛失を未然に防ぐ
貸出機器管理 催し場における入場者に貸し出した機器の返却忘れ防止
危機管理 緊急通報 ボタン付きタグを所持し、緊急時にはボタンを押すことで、現地への緊急サポート通報を行う
ICリング 患者データを記録したRFID内蔵指輪を患者にはめ、診察・医薬品投与・手術などに際して、患者の取り違いを防ぐ
迷子サービス 施設内の来場者位置を確認することで、迷子の発見を容易化
ナビゲート 最適ルート案内 催し場において、最適ルートや混雑状況の案内に活用
人材管理 会社内などにおける社員の所在確認
表 RFIDの利用局面

 このような利用局面を想定した場合、必ずしもタグ本体のコストや大きさは致命的な問題とはならない。そこで、Active RFIDが登場する余地が出てくる。

 Active型は、自前で電源を持つため、Passive型に比べると割高でサイズも大きい。一方で、Active型の通信距離は数十メートルもあり、Passive型よりもはるかに長い。また、自ら数秒間隔で電波を発信するという特性上、通信の競合が起こりにくい。障害物があっても電波が回り込めるため、通信の安定性という意味でもPassive型より優れている。

 上記のような利用局面では、Active RFIDを採用することには大いに意味がある。

   Active RFIDによる位置情報システムの実現

 富士通プライムソフトテクノロジ(以下、富士通PST)は、RFIDの導入はActive型から進むと予測している。まず身近な局面からRFIDの着実な導入を図っていこうというのが、同社の方針である。

 以下では、同社が提供するActive RFIDによるLPS(Local Positioning System:位置情報システム)ソリューションの事例を見ていくことにしよう。

 従来の位置情報システムには、以下のような問題があった。

  • 高価な導入コスト
    従来はRS-232C対応の無線受信機が主流だったため、受信機の台数分だけコントロール端末(PC)が必要となる。

  • 地下街や屋内は位置測定不能(GPS)
    代表的な位置検出方式としてGPS(Global Positioning System)があるが、これでは地下街や屋内での位置測定ができない。また、数メートル単位の精度での検出が困難。

  • デッドポイントの発生(Active RFID)
    送信機と受信機との距離によっては、まったくデータを受け取れない場所(デッドポイント)が発生する。これは、電波が障害物によって反射・回折し、同じ電波で打ち消しあってしまうために生じる問題である。無線技術においては、このようなデッドポイントの発生は避けられない課題だ。

 以上のような問題点に対して、富士通PSTはハード/ソフトウェアの両面から以下のようなソリューションを提案する。

  • 受信機に無線・有線LANをサポート
    受信機にイーサネットポートを搭載することで、サーバと受信機で直接ネットワークを形成可能とした。LPSが自動的にIPアドレスを割り当てるため、機器の導入・拡張も容易である。電波状況に応じて受信機の感知強度を検証し、配置位置・間隔を柔軟にチューニングすることが可能となった。

  • 新たな位置検出モデルの確立
    複数の受信機からパケットを検出することで、パケットの安定的な受信を実現した。

    受信機はそれぞれの座標情報として、

    ri=(xi, yi, zi)

    を持つ。パケットを受信した受信機の座標集合(電波の反射などの影響を受けた受信機はあらかじめ除外)に「近さ」による重み付けを掛けたものから重心を算出することで、対象物の位置情報をより精密に求めることができる。ここでいう「近さ」とは、各受信機が一定時間に受信したパケットの確率から求められる。

    無論、この場合もデッドポイントの発生は避けられない。しかし、複数の受信機がパケットを受信しているため、致命的なパケットロスを防げるのが特徴だ。

大須実証実験の概要と結果

 LPSはいまだ黎明期にある技術だが、実用化に向けた実証実験はすでに開始されている。その一例として、2003年12月に実施された「大須商店街での1to1マーケティング実験」について紹介する。この実験は、総務省 TAO(通信・放送機構)の委託研究として、富士通、富士通PST、九州大学雨宮研究室が、大須商店街連盟、万松寺、大須AICの協力で実施された。

 本実験の目的は、Active RFIDを利用して、商店街を訪れた人間に時間、場所、属性に応じた情報を伝える「ピンポイント情報配信システム」の実現である。

[実験手順]

  1. 実験参加者はあらかじめ自分のし好、携帯電話番号を登録。この際、実験参加者に専用の微弱無線タグを配布

  2. 実験参加者に商店街の中を散策してもらう。商店街の実験参加店に近づくと、参加者のし好に応じて「お得情報」を携帯電話に配信(個人情報は携帯電話から変更することも可能)

  3. 実験終了後、微弱無線タグを返却し、アンケートに返答

[システム構成]

図1 実証実験システム構成

[実験結果と注目すべきポイント]

  • 受信機の設置は約2時間で終了
    ネットワークを微弱無線によるアドホック・ルーティングで構成することで、受信機の設置、チューニング工数を大幅に削減した。ちなみに、1年前の実験時は、設置作業に徹夜を含む丸2日間を費やしている。

  • 非公開顧客情報を保護しつつ、情報共有
    セントラルサーバなしでデータマイニング店舗(個人)が保有する非公開顧客情報を保護しつつ、商店街として統合した。セントラルサーバを持たないため、情報配信に際して高いパフォーマンスが望めると同時に、店舗間の情報を共有することで、顧客のし好に応じたより適切な情報配信が可能になった。

 顧客情報の統合に当たっては、処理をマルチエージェントによって権限分散しているのが特徴だ。マルチエージェント機能は、九州大学のKODAMAと富士通研究所のVPCによって構成される。これにより、セキュリティ(プライバシ)を保護しつつ、顧客のし好を的確に把握可能にした。

図2 マルチエージェントによるセキュリティ保護
  KODAMAによって階層化されたVPNを構成する
  店舗1の非公開情報Aをポリシー内で暗号化し、カプセル化して送信
  店舗2のセキュアデバイス内でポリシーが非公開情報Bを参照し、計算結果を返信

 大須実証実験は、同社LPS実験の3回目になる。前2回が純粋な実験に近かったのに対して、大須実証実験は実際のサービス提供をにらんだものになりつつある。参加人数も870名に及び、購買実績の上昇から、高い効果があることも分かった。

 以上、Active RFIDによる位置情報システムの実現について見てきた。Active RFIDが現実的な導入への一歩をすでに歩み出していることがお分かりいただけたと思う。

 RFID技術は発展途上にあり、そのポテンシャルを引き出すのは容易ではない。システム構築に当たっては、単に無線ICタグと受信機を設置すれば良いというものではない。タグに保持できる情報量が限られている以上、バックエンドシステムとの連携は欠かせない。利用シーンに応じて、必要なシステム構成も大きく異なる。ハードウェアの素材、設置情報、運用方法、ソフトウェアの構成などなど、RFIDによるシステム構築に際しては、RFIDそのものよりも構成要素の特性や制約、組み合わせをより深く考慮する必要がある。大須実証実験は、単にRFIDだけでなく上記の問題を提起し、RFIDを有効活用できるシステムの枠組みを開発・実験したものとして意義がある。

 逆に、構成要素の組み合わせ次第で、現在各社が想定している以上の可能性をRFIDから引き出せる可能性がある。事実、ユーザー企業ではさまざまな利用シーンが模索されており、その中にはサプライヤ企業の思惑を超えたものも少なくない。富士通PSTは、さまざまなユーザー企業と話し合いを積み重ねることによって、RFIDを使った利用シーンの開拓、改善、工夫、提案など、新たな市場に向けたノウハウの蓄積、創造に日夜努力している。

 独自技術を日々生み出し、ユーザー企業・大学など産学の枠を超えて実証実験や実用化のコンサルテーションを行う富士通PST。こうして同社が蓄積してきた経験とノウハウは、RFID市場において他社をリードする大きなアドバンテージとなっている。

ユビキタスを実現する最先端テクノロジ
  第1回 Active RFIDで実現する次世代システムの可能性
  第2回 組込み開発の常識を変えるintentの衝撃
  第3回 組込みLinuxを真のリアルタイムOSに
  第4回 ESECリポート:最先端組み込みソリューションを一挙紹介

 
関連リンク集
「組込みLinux向けサポートサービス」の販売開始(プレスリリース)

アクティブ型RFID(無線ICタグ)を利用した位置検知システム「Local Positioning System(LPS)」の販売開始(プレスリリース)

第7回 組込みシステム開発技術展 ESEC(イーセック)出展報告

視覚障害者の方たちへのバリアフリー情報配信実験

国産マネジメント型Linux OS 「Nature's Linux」を活用したビジネスアライアンス「Nature's Linux Alliance」設立のお知らせ(プレスリリース)

宅配便の最短配達サポートシステム「SAITANDePo」

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