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@IT > .NETエンタープライズ新時代 第3回 |
アバナード(Avanade)は、2000年4月に米国シアトルで誕生し、2005年7月に日本上陸を果たしたグローバル企業である。いまや全世界に43カ所の拠点を持ち、5200人以上のプロフェッショナルを抱え、日本でもすでに社員が70名を超えるまでに急成長している。アクセンチュアとマイクロソフトの共同出資によって設立されたアバナードは、マイクロソフト・プラットフォームを利用したソリューションの提供を特徴としている(ただし必要に応じて、さまざまな要素技術を取り入れる)。開発案件は、アクセンチュアのコンサルティング部門で発生した.NETのエンタープライズ向けソリューションと、MCS(マイクロソフト・コンサルティング・サービス)で発生したソリューションへの協業が主であるが、自社の請負案件も増えつつある。実際のソリューション開発では、それぞれの企業の現場に担当者が出向き、開発プロジェクトを進めるという業務スタイルを採っている。 開発するソリューションの形態は多岐にわたる。「全ソリューションの約50%はエンタープライズ .NET アプリケーションのカスタム開発(=パッケージ・ソフトウェアの活用ではなく、個別のソリューションに合わせた独自の開発)が占めています。アプリケーションの形態は、Webアプリケーション、スマート・クライアント、モバイル・アプリケーションなど多岐にわたります。そのほかにもActive Directory環境やExchange Server環境の構築などのインフラ構築、レガシー・マイグレーション(メインフレームからの移行や古いバージョンからの移行など)、パッケージ・カスタマイズ・ソリューション(CRM、ERPなど)、ビジネス・インテリジェンス(経営管理、顧客分析、在庫分析など)などのサービスを主に提供しています」(福井氏) 「開発するエンタープライズ・ソリューションの業種も金融系や通信系などさまざまです。請け負った開発プロジェクトの数は全世界で2300以上に上ります。日本では起業してまだわずか2年間しかたっていないにもかかわらず、すでに30〜40ものプロジェクトを完了し、いずれの案件もお客さまに大変満足していただいています。この結果、アクセンチュアやMCSの顧客企業の中で評価が徐々に高まってくるとともに、導入済みソリューションを利用した企業からの評価も向上しています。日本のマーケットでも『アバナード』というブランドが確立されてきたと自負しています。特に、アバナードの特長の1つである『難しい技術の実装』や『新しい技術の利用』については顧客企業の満足度が非常に高いと感じます」(山根氏) 導入済みソリューションの高い顧客満足度が、アバナードの知名度を一気に高めているようだ。アバナードが高い顧客満足度を獲得できる理由について、福井氏は次のように語る。 「アバナードには“ACA”(Avanade Connected Architecture)と呼ばれる独自の開発ノウハウ/開発ツールがあり、これによって効率的かつ安定的なシステム開発が可能になっています。このACAの効果が、結果的に『スピーディな開発』『リスクの低減』『大幅なコスト・ダウン』という顧客企業のメリットにつながっているのだと思います」
アバナードのソリューション開発では、ACAがキーとなる。ACAによって、高品質を維持しつつ、開発生産性とアジリティ(敏しょう性)を上げ、開発コストを圧縮するという。こうした効果を生むACAとは、具体的にどのようなものなのか。 「ACAは、アバナードが独自に開発した『アセット(開発資産)』『ツール』『フレームワーク』『方法論』などの総称です。具体的には、マイクロソフトのEnterprise Libraryを包含するエンタープライズ・アプリケーション向けライブラリ群のACA.NET、MSF(Microsoft Solutions Framework)などをベースに独自に作成した開発方法論のACM(Avanade Connected Methods)、開発ライフサイクル全体をTeam Foundation ServerをベースにサポートするACA Lifecycle、DSL(Domain Specific Language) ToolsによりSOAのサービスをモデルから自動生成するVisual Studio統合型ツールのSOA Factoryなどで構成されます。なお、この中でACA LifecycleやSOA Factoryについては、現在実プジェクトへの適用に向けた準備中で、これから順次プロジェクトでの適用を行っていきます。」(山根氏)
「いずれも幅広い分野での利用が可能ですが、実際の開発プロジェクトでこれらをすべて使うというわけではなく、適材適所で導入しています。例えばプロジェクトで利用する汎用ライブラリについていえば、現状の国内向けソリューションでは、Enterprise Libraryの適用のみで、ACA.NET独自の拡張である、アスペクト機能やWebサービス機能、バリデーション機能などは利用しないというケースもあります。」(荻原氏)
開発ソリューションに新しいテクノロジを積極的に採用するのもアバナードの特徴である。これを可能にする背景として、前述したような強固な開発基盤を備えているということもあるが、それに加えて、各技術者の好奇心や向上心が非常に旺盛であるということも大きく寄与しているようだ。アバナードにはそれを支援する独自の情報共有基盤がある。柳氏は、社内の情報共有について次のように語る。 「アバナードでは、メーリングリストやMicrosoft Office Grooveというグループウェアを使って情報共有を行っています。特にメーリングリストは、世界中にいるアバナードの開発者がさまざまなテーマで頻繁に情報交換を行っていて、ここから新技術に関する刺激を毎日のように受けることができます。いくつかのメーリングリストに参加しただけで、すぐに1日100件以上もメールを受信することになります。情報のキャッチアップだけでも大変ですが、技術レベルの高い開発者の投稿は、実践的に役立つ貴重な情報が多く、技術者魂を大いに刺激してくれます」 世界中でソリューション開発に従事する同社の開発者からの豊富な情報が「もっと知りたい」「新しい技術を利用してより良い製品を作りたい」という技術者への刺激になっているようだ。こうした開発者への刺激が、過去の実績にばかりとらわれるのではなく、最新技術を積極活用し、結果として最新技術の長所を生かした高レベルのソリューション開発につながるという好循環を作り出している。
アバナードでは、チーム開発環境としてVisual Studio 2005 Team System(以降、VSTS)を日常的に活用している。 「Team Foundation Server(以降、TFS)のソース管理や自動ビルドなどはよく利用しています。また、プロジェクト品質管理の共有機能や、バグ・トラッキング機能も利用頻度は高いです。特にソース管理の『シェルブ』という機能は、従来のVisual SourceSafeにはないもので、想像以上に便利だと評価しています。シェルブ(棚上げ)とは、プロジェクトのソースをサーバ上で一時的に分岐させて、チーム内で共有する機能です。その後、本体のソースにマージしたり、そのまま破棄したりすることができます。『実装手法を実験的に試してみたい』ということは、どのような開発プロジェクトでもよくありますが、そのようなケースで有用です」(山根氏) TFSだけでなく、VSTSの各機能も局面ごとに積極活用している。 「ソース・コード編集やビルド処理など、開発環境の基本機能を使うことはもちろん、単体テストやリファクタリング、コード・カバレッジなどのVSTSの機能もよく使います。VSTSの単体テスト機能を使えばテスト駆動開発(TDD)を実現できますし、リファクタリング機能のクラス名の自動生成やメソッドのスタブの作成は、コーディング時に大変便利です。またミッション・クリティカル用途など、顧客によってはフル・カバレッジ(=すべてのコードを実行して検証すること)が求められることもあります。このようなケースではコード・カバレッジの測定機能が役立っています」(荻原氏) ■ アバナードには、エンタープライズ・ソリューション開発で優れた業績を持つ開発者や“Microsoft MVP”としてコミュニティで活躍している技術者などが次々に入社してきているという。その理由としては、「目先の開発作業で消耗するのではなく、将来につながるスキルアップが見込めるから」「技術に対する興味や関心を維持できそうだから」などという声が多いようだ。このように、開発者に高く評価される魅力的な企業環境が、アバナードの大躍進の背景にあるようだ。 開発プロジェクトの成功に欠かせない「人」を大事にする。このことが、エンジニアの技術力と知的関心をさらに高め、最終的に最新技術を積極活用した最適なソリューションを生み出している。非人間的な作業に忙殺されがちな従来の開発現場ではなく、技術者の知的好奇心とクリエイティビティを刺激し続け、それらから生み出される優れた人間の知恵を実際のソリューションに反映させていく。アバナードにはそれを可能にする環境とノウハウがある。アバナードの急速な躍進は、ソリューション開発の成否を大きく左右する要因が、より一段レベルの高い「人間の知恵」に移りつつあることを裏付けている。
提供:マイクロソフト株式会社 企画:アイティメディア 営業局 制作:デジタル・アドバンテージ 掲載内容有効期限:2007年6月30日 |
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