日産自動車のPC管理事例や
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2009年5月29日、野村総合研究所主催のセミナー「【野村総研の『覚醒型ビジネスモデル』がPC管理を変えた】出版記念セミナー〜コスト削減方策の思いつかないIT管理者へ、PC管理で抜け出そう!〜」が東京・秋葉原で開催された。本稿では、基調講演から顧客事例までさまざまな「常識への挑戦」についての講演をレポートする。
PC管理と生命保険における「常識への挑戦」 |
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開会挨拶では、野村総合研究所(以下、NRI) 専務執行役員 鈴木 純 氏が、次のように話した。
野村総合研究所 専務執行役員 鈴木 純 氏 |
「昨今の大不況の中、企業の情報システム部門にかかわる方は、統制ガバナンスやセキュリティという企業が強く取り組むべき課題に直面する一方で、ITコストの削減を両立するということに知恵をしぼり苦労されていることと思います。本日は、IT関連のランニングコストの約4分の1を占めるといわれるPC管理について、NRIが顧客とともに取り組んできた事例やソリューションを紹介させていただき、少しでもお役に立てればと思います」
続いて行われた基調講演は、ライフネット生命保険 代表取締役副社長 岩瀬 大輔 氏による「常識への挑戦 〜ネット生保〜」。NRIが取り組んだPC管理ソリューションの原点も、同じく「常識への挑戦」だったという。挑戦・革新をビジネスで実現しているという立場で講演が行われた。
ライフネット生命保険 代表取締役副社長 岩瀬 大輔 氏 |
「生命保険はインターネットでは売れないといわれ続けていましたが、われわれはその常識に挑戦しています」と岩瀬氏は力強く話を始めた。74年ぶりの独立系生命保険として2008年に誕生したライフネット生命保険では、インターネットで生命保険の商品やサービスを提供している。それはなぜか。そこには「ビジネスチャンスがあるから」と岩瀬氏は話す。
日本は世界有数の「セイホ大国」といわれている。日本のGDPは年間約560兆円、生命保険業界は約45兆円、IT産業は約12兆円だ。また、1人当たりの保障金額が他国の3〜6倍で、国民は他国よりも何倍も高い保険料を払っているのが現状だ。この理由について岩瀬氏は、「一つはいわゆるGNP(義理・人情・プレゼント)営業によって手数料が多く掛かり、保険料自体が高くなったため。もう一つは情報を得て納得することもなく複数の生命保険に加入したためではないでしょうか。保険料自体が本来の適正価格なのかどうか、国民は知らされていません」と分析する。そこには大きな矛盾・非効率が存在し、新しいビジネスチャンスがあるという。
また近年の規制緩和によって、行政が定めていた保険料のうち、手数料の部分については保険会社が自由に決められるようになった。この結果、「インターネットを使ったサービス・営業によって手数料を減らせば安い保険料で済む」という覚醒につながった。これについて、岩瀬氏は次のように付け加える。
「『覚醒型ビジネスモデル』は常識を疑うことから始まります。私は自分の良識に従ってベンチャーを立ち上げ、極めて愚直にサービスを提供しているだけです。本当に価値のあるサービスになるには時間がかかるものですが、今後も新しい挑戦を続けていきたいと思います」
PC管理の分野における矛盾・非効率と |
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NRIがPC管理の分野で見つけた、常識の中にある矛盾・非効率とは何なのか。野村総合研究所 主席システムコンサルタント 岡崎 誠 氏が行ったセッション「NRIが提案する『覚醒型』PC管理の取り組みとは」から解き明かそう。
岡崎氏はまずPC管理について「楽しい作業」だと語る。「『たかがPC管理』ですが、何万台ものPCを管理することによってコスト削減ができると非常に達成感があります」(岡崎氏)。PC管理技術はここ10年で進歩しているにもかかわらず、導入時の管理手法のままという企業も多いだろう。しかし進歩の結果、PCに対する知識やニーズの変化が起きているし、手続きのプロセスも古くなり必要なくなっているなど、矛盾・非効率も潜在化している。岡崎氏は、次のような疑問を投げかける。
- PCの移設・更新が一大イベントになっていないか
- 技術を使うことによって、日常的に誰でもできるものはないのか
- 矛盾を改善するためではなく報告のための会議になっていないか
- 会議は事実ではなく印象に基づく議論になっていないか
- 3年以上価格の見直しが行われていないなど、他社や業界の動きに不勉強になっていないか
- アウトソーサーから自主的な提案があるのか。提案がないのであれば、それは馴れ合いの取り引きになっているのが要因ではないのか
野村総合研究所 主席システムコンサルタント 岡崎 誠 氏 |
「厳しいようですが、こういったアウトソーサーは顧客の価値創造に覚醒していないといえます。『NRIがPC管理を行う』意味は、PCの管理や保守といった部分を人手ではなく技術でカバーできるようにするなど、さまざまな運営面での工夫を加えていくということにより、自主的に価値創造のための改革案を提示していくことです。そして、われわれとしてはそういった改善を介してより付加価値の高いPC運用を提供し、顧客企業が「やるべきコア業務に集中する」という方向に覚醒していただくことを提案します」(岡崎氏)
岡崎氏は覚醒の次のステップとして、変革を挙げる。変革するためには、何をどのように行えばよいか、他社ではどのようにしているのかを事例を基に紹介した。NRIによる、無償のPC運用診断サービスや、責任マトリクス・業務フロー作成による業務分析、そして組織や業務の再設計、ユーザー展開・説得、ソリューション移行にいたる業務最適化へとフェイズを進めていく。特に、ユーザー展開・説得のフェイズでは、「声の大きいユーザーだけの意見を聞くのではなく、サイレントマジョリティの意見・満足度を入手することが重要です。そのためには印象ではなく、インシデントの記録による事実を基に話をすることが大事」と岡崎氏は強調した。
NRIとしては変革に向けて、既存体制のままの改革に加え、変革を実行する協力会社とそれをコントロールするプライムベンダを変える「ゼロベース改革」、そしてプライムベンダだけを変える「チェンジマネジメント改革」を提案する。特にチェンジマネジメント改革では、プライムベンダをNRIが担当することによって、引き継ぎなどに掛かる初期コストを含め全体的なコストを削減した実績があるという。岡崎氏は、セッションの最後にこう締めくくった。
「変革ができれば、それで終わりというわけではありません。NRIは、運用が落ち着いても、さらに変革できる部分があるのではないかという思いで、顧客と利益を共有しながら双方でアイデアを出し合うという展開を提供します」
「品質を上げると、コストが下がる」 |
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岡崎氏のセッションで話された変革の重要な要素として、PCの管理や保守に、人ではなく技術を使うことが挙げられたが、それは本当に可能なのか。それにはどのような技術が有効なのか。野村総合研究所 上席システムコンサルタント EXIN認定ITILマネージャ 北村 俊義 氏のセッション「『マル投げ』からの脱却と、継続改善プロセスの埋め込み」で詳しく説明された。
野村総合研究所 上席システムコンサルタント EXIN認定ITILマネージャ 北村 俊義 氏 |
現在の不況で各企業に強いられる「コスト削減」。これには後ろ向きなものというイメージが付きやすい。しかし、北村氏はこれに異を唱える。「コスト削減は本当に後ろ向きなことなのでしょうか。そこには『コストとサービスレベルはトレードオフ』という間違った常識があり、それが『コストを下げるには品質を下げなければならない』という思考につながっており、コスト削減を後ろ向きなものにしています。しかし、NRIはそうは考えません」
例えばNRIは、自社のPC管理ソリューションに対してエンドユーザー満足度調査を毎月行っていて、満足度をより高める一方で、不満足な結果に対するフォローをすべて電話で行っている。これらの努力によって満足度が上がり、クレームが減少してサポート要員を削除可能になって、コスト削減できたという。
またPC管理の分野では、ユーザーの現場での作業を廃止することによって、コスト削減と品質向上を実現しているという。企業がPCのリプレイスを行いたい場合に、NRIは「オーダーメイドデリバリ」という仕組みを提供している。キッティング作業をユーザーの現場ではなく、できる限りキッティングセンター内で行い、しかも自動でユーザーごとに異なるPCの設定や、必要なアプリケーションのインストールまで行うのだ。技術的には、ユーザーごとに必要とされるアプリケーションや環境変数、INIファイルの設定などを古いPCから自動取得したり、追加で必要なアプリケーションはWebフォームから受け付けて管理して、それらをキッティングセンターに連携するようになっている。各PCからの設定情報の収集と各PCへのアプリケーション配布には、マイクロソフトのSMSのような資産管理ツールを用いている。
これら「品質を上げ、コストを下げる」を実現するソリューションとしてNRIは「PCLifecycleSuite」「Robonex」を提供する。前者は、より大規模企業向けのオーダーメイド型サービスで、サービスレベルや業務管理方法、ツールもすべて個別に設定できる。後者は、企業規模を特に限定しないレディメイド型サービスで、増設・移設・回収・障害対応などをASP型で提供する。詳細は、記事「PC管理は、コスト削減の最後に残った宝の山か!? 」を参照してほしい。
北村氏は最後に強調する。「NRIに限らず、PC管理で改革を行う場合は決して丸投げしないでください。なぜなら丸投げされると、どうしても見えない部分が出てきてしまうからです。改善のヒントは常に、現場にあります。顧客の側から積極的にアプローチした場合は必ず成功していました。主役は顧客です」
「BEST」から「Change」する日産自動車が |
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最後のセッションは、日産自動車 グローバル情報システム本部 IS資源統括部 主管 塚田 達士 氏による「ワールドクラスレベルへの挑戦」。PC管理において丸投げをしていない顧客事例として興味深いセッションとなった。
ワールドワイドにビジネスを展開し、4万台のPCを抱える日産自動車は、システムもまたグローバルかつ迅速に展開する必要があるという。日産自動車が、この目標を達成するための指針を「BEST」といい、以下の頭文字を取っている。
- 「Business Alignment」(経営層を巻き込んだユーザー部門との関係強化)
- 「Enterprise Architecture」(アプリケーションの合理化と再利用の促進)
- 「Selective Sourcing」(ITベンダとのコミュニケーション・関係の見直し)
- 「Technology Simplification」(ITプラットフォームの標準化と統合・簡素化)
日産自動車 グローバル情報システム本部 IS資源統括部 主管 塚田 達士 氏 |
「Selective Sourcing」について詳しく触れると、日産自動車は2001年からシステム保守運用業務を外部ベンダにアウトソースしているが、これについて塚田氏は、「同一の会社との関係を長期間続けていると、われわれのシステムに関する理解度は非常に深まるため、“任せて安心”な状態になります。その半面、自分たちでは細かい部分が何も分からなくなり、徐々に“馴れ合い”にもなってしまいます。これらを改善するため、アウトソースは単一の総合ベンダから複数の専門ベンダに変えました。また契約期間も短くし、3年ごとに見直すことにより、良い緊張感が保てるようになりました」と話す。複数のベンダの1つは、もちろん2004年から取り引きをしているNRIだ。
これらの施策によって、効率性においては、2007年度にワールド・クラスを達成できたという。では、今後はどうするのか。昨年からは、ビジネスの有効性においてもワールド・クラスを達成するために、「BEST」を強化した「Change2012」という指針を立て、さらなる挑戦を続けている。「COBITやITILをベースにした情報システム部門の業務の見直しや、UISS 1.2をベースした内製人員の役割の見直し・強化、そしてコストの5割以上を占めるアウトソース業務の見直しを図ります」(塚田氏)
Changeのフェイズになった日産自動車の情報システム部で活躍する塚田氏。最後に、NRIに対しての期待を語った。
「岡崎氏の持論『維持管理をしてはいけない』に共感します。管理は維持するものではなく、進化するべきものです。ワールド・クラスのビジネスの有効性を達成するための積極的な提案をお願いします。また、さらなる効率性を追究するための従来とは違う“覚醒型コスト削減”にも期待します。そして、PC管理以外の分野においても新規参入者としてぜひ切り込んできてください」
このような期待を講演の場で堂々と話す顧客。NRIが良い関係を築いていることが伺い知れる講演だった。
ホワイトペーパー
一般的に後ろ向きなイメージが付き纏いがちなコスト削減活動。しかし、野村総研は品質を上げることによりコストを下げる「覚醒型PC管理」で前向きなコスト削減を実現してきた。その実践的手法とは。
提供:株式会社野村総合研究所
アイティメディア 営業企画
制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2009年07月28日
ホワイトペーパー
一般的に後ろ向きなイメージが付き纏いがちなコスト削減活動。しかし、野村総研は品質を上げることによりコストを下げる「覚醒型PC管理」で前向きなコスト削減を実現してきた。その実践的手法とは。
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