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須部氏は、「Predictive Analytics」(予測分析、以下「PA」)とは、統計解析、データマイニング、テキストマイニングといった「応用分析」(Advanced Analytics)と、スコアリングエンジン、ルールエンジン、リコメンドエンジンといった具体的なアクションにつながる「意思決定最適化」(Decision Optimization)を組み合わせたものであり、予測→アクション→データの蓄積のサイクルを回して、劇的な業績アップを目指するものだという。そして、近年、企業等において分析を活用する方法や成功例を扱った単行本がベストセラーになるなど、分析に対するビジネスパーソンの関心がますます高まっているとのことだった。
しかし、企業としては、PAそのものではなく、PAをどうやって円滑に導入するかという点に関心が移りつつあるという。そこで、須部氏は、以下の5項目をPA導入についてのSPSSからの提言として示した。
- ビジネスに精通したアナリストを採用し、モデル作成に充てる
- アナリスト/モデラーを保持できる、やりがいのある環境を整える
- 予測分析活動を集中する
- データの準備やスコアリングにデータウェアハウスを活用する
- テクノロジに対する理解度と自信を深める
さて、須部氏によれば、PA導入に当たっては2つの側面を考慮する必要があるという。1つには、上位マネジメントのスポンサーシップ、すなわち支援を得ることである。このためには、投資対効果を明確にするとともに、部門横断的展開を図り、最終的には中長期計画にPA導入を組み込んでもらえるよう働き掛けることが求められる。
一方、導入後のPA運営がうまく行くためには、現場への浸透を図る必要があるという。すなわち、PAを活用できるキーマンの育成とスキル向上を図ると共に、予測結果(アウトプット)を業務の実際のアクションに活用し、定常業務の中に定着させるべきだという。
そこで、須部氏は、PA導入の段階的なアプローチを勧める。まずはトップの理解を得て小規模な投資を行い、並行してキーマンの育成、現場レベルでの教育、啓蒙を通じて成功事例・実績を作る。その後に上位マネジメントからの強力なスポンサーシップを得て大規模な投資に踏み切り、現場レベルで広範囲にPAを展開していくという段取りである。
次に須部氏は、データマイニング立ち上げにおける課題として以下の4点を挙げた。
- ツールのトレーニングを受けただけでは進め方が分からない
- 身近に相談できる、経験豊富な人がいない
- 上位マネジメントの理解が得られない
- 社内事例がないと他部署を巻き込みにくい
そこで、SPSSでは、「Clementineジャンプスタート」の提供を開始しているという。当サービスは、データマイニングを初めて実施する予定であったり、データマイニングプロジェクトの進め方の基本を試したい企業を対象として、最短11日間で一通りのデータマイニング業務を体験してもらうものである。須部氏によれば、すでに当サービスを受けた企業から、「不安を一気に解消できた」「現行業務との関連性がよく分かった」「チームの共通意識を醸成できた」など評価する声をいただいているそうだ。
また、須部氏は、PAを大規模に展開するための地図(Roadmap)づくりを支援するサービス「Roadmap Planning Program(RPP)」についても説明した。当サービスは、PAへの旅(Journey)を開始する準備ができている組織向けの戦略的な組織向けの戦略的な計画策定支援サービスであり、データ主導の意思決定による大幅な増益を目指しているものだそうだ。
須部氏はSPSSでは、従来の各種ソフトウェアの提供に加えて、近年コンサルティングサービスの充実を図っていることを述べてセッションを締めくくった。
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1955年に創立された通販大手、千趣会は、職場のOLを対象とした「こけし」の頒布販売をルーツに事業を拡大、現在は、頒布事業(50万会員)、カタログ事業(646万人)を運営。販売チャネルとして、インターネット通販(PC・携帯)、および店舗(全国7店舗)も展開している。
中山氏が所属する千趣会マーケティングサポートは、千趣会事業の持つ通販ノウハウをほかの通販会社へ提供するために設立された子会社である。中山氏は、千趣会から得た豊富な事例を元にデータ活用の意義と留意点を説明してくれた。
中山氏によれば、通販ビジネスの流れ(フロー)を支援するシステムには、大きくは、「処理系システム」と「情報系システム」があるという。「処理系システム」は、顧客からの注文をコールセンターが受け付け、代金入金や在庫の確認、商品センターでの発送といった業務を支援する。一般に「フルフィルメント」と呼ばれるが、文字通り顧客のニーズを満たす(フルフィル)ための業務を支援するシステムが処理系システムである。
一方、「情報系システム」は、処理系システムから発生したデータを分析することによって、販促企画(品ぞろえ、売上計画など)や販促物制作に活用することを支援する。処理系は、事業の活力を生み出す「動脈」、情報系は、事業の調子を整える「静脈」ととらえることができるそうだ。
さて、通販は「科学的ビジネス」といわれることがあるが、データベースマーケティングによるデータ活用が重要な役割を果たしている。千趣会でも、高度な情報系システムを構築しており、データをフルに活用しているそうだ。
千趣会においてデータ分析の対象としているのは、顧客、商品(サービス)、媒体(店舗)の3つである。この3つの対象の組み合わせによってほとんどの分析がカバーされる。例えば、顧客についての分析には、顧客プロフィール分析やRFM分析があり、商品(サービス)との関係性を見る場合には、購買パターン分析や、顧客行動分析などを行う。また、分析は段階的に行っているという。まずは「単純分析」として、単体分析とクロス分析を行う。さらに「個別詳細分析」、「高度分析」と分析を深めていくそうだ。
中山氏は、上記のような分析テクニックだけでなく、顧客を理解することの重要性を指摘した。例えば、男性で自分のYシャツのサイズを知らない世代と知っている世代があるという。自分のサイズを知らないのは団塊の世代より上の方だそうだ。彼らはYシャツの購入を妻に任せているためである。団塊から下の世代になると自分で購入する方が増えるため、自分のサイズを知っているのだそうだ。また、千趣会の利用者は主婦が多いが、届いた商品を夫が見て、「お前のものばっかりだな」とうらやましがられるのがいやで、夫のものも一緒に購入する人がいるという。こうした購入を千趣会では「申し訳買い」と呼んでいるとのこと。データ分析結果を解釈する上では、こうした消費者心理に対する深い洞察が必要なのだそうだ。
中山氏は、データ活用上の留意点として、加工・分析された結果だけではなく、生データをざっくり眺めてみて、気になる傾向を発見したり、全体の構造を把握することが重要だという。またデータはただ「在るもの」とみなすのではなく、有効な知見を引き出せるように「育てる」(必要なデータを集める、加工する)ものだと考えているそうだ。
最後に中山氏は、優れたデータ分析者になる、また育てるための以下の4つのポイントを示して、当セッションを締めくくった。
- 鳥の目と虫の目の両方を持つ。すなわち高いところからの俯瞰(ふかん)的視点と、近づいて詳細にみる視点の使い分けること
- PDCA(Plan-Do-Check-Action)を回すこと
- 人の心理の微妙な綾を読み取れる感性マーケターを目指すこと
- ジョブローテーションで複数の部署を経験すること
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シー・エム・シーは、食品卸最大手「菱食」の100%出資会社であり、事業内容としては、小売業向けサービス、メーカー向けサービスなどを展開している企業である。中でも事業の柱は、ポイントカードなどの発行による顧客会員化を通じて行う、各種販売促進施策、すなわち「FSP」(フリーククエントショッパーズプログラム)の分析や企画・運用だそうだ。
飯田氏は、同社が保有するFSP関連データを用いて、販促効果の高い顧客セグメント方法について解説してくれた。飯田氏はまず、消費者、市場を取り巻く環境とマーケティングの変化について触れ、販売戦略においては、「マスマーケティング」→「顧客識別マーケティング」→「ライフスタイルマーケティング」と移行してきているという。そして、同社の主要顧客である小売業の場合、マーケットシェアではなく、「顧客シェア」を維持・拡大することが成長戦略の主軸であると指摘する。
さて、飯田氏によれば、顧客シェアの維持・拡大のため、FSP関連データに基づき、金額別などでの顧客セグメントを行い、炭酸飲料など、商品カテゴリ別でのクーポン発券などの販促施策を行ってきているそうだ。セッションでは実際の反応率の数字も示して、どの程度の効果があったかを教えてくれた。
しかし、同社では、近年「ライフスタイル識別マーケティング」に力を入れているという。従来のマーケティングは、特定商品のヘビーユーザーにさらに購入を促すもので、いわば凸凹の「凸」を伸ばす「守り」の発想に基づくものであったが、ライフスタイル識別マーケティングでは、まだ顧客自身が気付いていない潜在ニーズを発見し、あらたな需要を創造しようとするものであり、凸凹の「凹」を埋める「攻め」の発想だといえる。
例えば、ミネラルウォーターについていえば、単にミネラルウォーターのユーザーに対してアプローチするだけでなく、ライフスタイルの分析から、無洗米やコーヒーの購入者の対象とした販促や、子どものいる家庭を対象とした販促を行い、一定の成果を収めているそうだ。
こうしたライフスタイルを発見する糸口として飯田氏は、「あなたが何を食べているかで、あなたが何者かが分かる」という考え方に立ち、購入明細データ(バスケット)の分析から一定の傾向(バケツ)を発見し、購入者のライススタイルを推測するという方法を行っていると述べ、ライフスタイル識別マーケティングの実務上の留意点を示してセッションを終えた。
SPSS DIRECTIONS Japan 2008 イベントレポート − 前編へ
提供:エス・ピー・エス・エス株式会社
企画:アイティメディア 営業本部
制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2008年12月31日
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