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@IT > SPSS事例探求 第15回 山形銀行編 |
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2006年に創立110周年を迎える山形銀行は、健全な財務体質と親身なサービスで顧客から高い信頼を得ている地方銀行である。当行では、住宅ローンの与信審査システムを「SPSS Clementine」をベースに開発、2005年5月に全店(79カ店)に導入したという。
これにより、これまで1週間程度を要していた同行の与信審査は最短30分程度で処理できるようになった。そして、この大幅な審査時間の短縮は住宅ローン借り入れを希望する個人客、個人客と山形銀行の間をとりもつハウスメーカーなどの住宅関連業者、同行の各店営業担当者など、すべての関係者にメリットをもたらした。今回は、この画期的な業務革新ともいえる与信審査システム開発の経緯をご紹介する。
これまで同行の住宅ローン残高は堅調に推移してきたものの、個人客対象のマーケティングを担当する同行個人部では、第2次長期経営計画の重点課題である「収益構造改革」のため、住宅ローンの増強により一層注力しているという。というのも、近年、金融機関の住宅ローン獲得競争が激化しているからだそうだ。 今回開発・導入に成功した住宅ローンの与信審査システムは、およそ1年前の2004年5月に開発プロジェクトがスタートした。この開発の背景について緒方氏は次のように語る。
「住宅ローンの保証料は、これまで自己資金の有無に基づき2段階の料率が設定されていました。しかし、実際に保証業務を行う当行関連会社の『山銀保証サービス』では、個人の返済能力に応じて多段階の保証料が設定できる仕組みを必要としていました。きめ細かなリスク対応が可能になれば、信用コストを引き下げることができるからです」
また、安部氏は、
その一方で、住居の建築や購入を希望している個人客にとっても与信審査結果が出るまでに1週間程度待たされるというのは、同行に対する不満の種となっており、個人客と対面する同行各店の営業担当者からは与信審査業務の改善に対する切実な要望があがっていたという。 こうした関係者からの強い要求を受け、同行では早急に与信審査システムの開発を核とする業務改善に取り組むことになった。だが、その実現のためにはさまざまな制約や解決しなくてはならない問題/課題があったという。 <主要な問題や課題>
課題が山積み状態の中、解決策を模索していた山本氏だったが、2004年の春先に東京SPSS本社で開催されたある金融関連のセミナーを受講し、初めて「Clementine」というデータマイニングツールの存在を知る。このセミナーを通じてClementineの優れた機能や使いやすさに驚嘆した山本氏は、その年の5月に開催された「SPSS Data Mining Day 2004」にも参加したという。 そして、改めてClementineの有用性を確信し、同ソフトを用いた与信審査システムの開発を決断するに至った。 山本氏は、 「“Clementine”は、ほとんどマウスだけの操作でモデルの作成・更新が可能ですから非常に扱いやすいと感じました。ビジュアルにノード図を描くことができるので、作成したモデルの透明性が高く、どのような仕組みで与信審査が行われるのかについて説明するのも容易です。また、与信審査モデルを各店に導入するには “Cleo”が有効だと直感しました。“Clementine”で作成したモデルを“Cleo”でWebアプリケーションに展開すれば、使い慣れたWebブラウザ上で各店の担当者が与信審査を迅速に実行できるようになるだろうと考えたのです。実際のところ、各店の担当者のPCに新たにソフトウェアを導入する必要はありませんし、与信審査モデルのWebアプリケーションを新たに開発する必要もありませんでしたので、今回のシステム構築コストについては、通常同様のシステムを開発・導入するのに必要と思われる金額の10分の1以下に押えることができたと思います」 と、「Clementine × Cleo」によって構築するシステムの利便性・低コスト性を高く評価している。
与信審査システム開発にあたっては、中核となる与信審査モデルの開発を浜銀総研のコンサルタントが支援し、ClementineとCleoの実装に関するテクニカルサポートをSPSSが担当した。当システムの主な特徴は次の通りである。
与信審査システムの導入にあたっては、個人部門を担当する600名ほどの社員を対象に研修を行い、現在は山形県内外にある7カ所の住宅ローンプラザを中心に全店舗に展開、利用が進んでいるという。
それと同時に、当行では業務プロセスを見直し、「仮審査制度」を導入した。審査依頼を受けた営業担当者は、手元のPCからWebブラウザ上に展開されている与信審査モデルを操作してリスク度判定を実行する。その結果、リスクが低いと判定された場合には、すぐに個人客へローン審査OKの連絡を行うこととしたのである。 この仮審査制度の導入により、個人客は数日にわたって待たされることもなくなり、同時にローンを仲介したハウスメーカーにとってもスムーズに契約を進められると大変好評だという。もちろん、その後正式なローン審査を行うが、それはあくまで「追認」という形で処理される。 さらに山本氏が語った内容は、与信審査システム開発・導入が成功裡に終わったことを物語っている。 「以前は当行の営業担当者と審査の専門家である審査会社の担当者とでは審査そのものに対する温度差というものがありました。つまり、審査に関する経験やスキルの差、あるいは立場の違いといったものかもしれません。しかし、いまはこの与信審査システムによって計量化されたリスク度を双方で共有することができます。これがとても効いていて、いまではその温度差も解消されつつあります」
当行では今後、無担保ローンの審査システムの見直しや見込み度の高いターゲット層を発見してセグメントを絞り込んだダイレクトメールを送るなど、効率的・効果的なプロモーションへのデータマイニングの適用を考えているそうだ。 今回のシステム開発で得たノウハウ、つまり「Clementine」によって得た知見を「Cleo」によりWebアプリケーションという形で全店舗へ展開するというノウハウを活かせば、営業担当者レベルでより効果的な個人客へのアプローチが可能になるだろう。これにより、営業効率がアップし、売り上げが上がるとなれば、それはまさにSPSSが今年の「SPSS
Data Mining Day 2005」で披露した「Predictive Enterpriseへの旅」そのものに違いない。
提供:エス・ピー・エス・エス株式会社
企画・制作:アットマーク・アイティ 営業局 掲載内容有効期限:2005年8月28日 |
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