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@IT > SPSS Data Mining Day 2005 イベントレポート前編 |
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「SPSS Data Mining Day 2005」の開催は、今年で7年目。会場の新高輪プリンスホテルには、セミナーのほか、SPSS各製品のデモを体験できる「SPSSブース」、パートナー企業のソリューションを紹介する「パートナーブース」、大スクリーンによるプレゼンテーションが行われる「シアターステージ」の各コーナーが設置され、それぞれ多数のセミナー参加者が詰めかけていた。
今年のSPSS Data Mining Dayの基本コンセプトは、「The Predictive Enterprise」である。これは、「Predictive Analytics」を全社的に導入した企業が、どんな新たな価値を実現できるのかに焦点を当てたものだ。午後1時からのセミナーの冒頭、あいさつに立ったSPSS Inc. CEOのジャック・ヌーナン氏は、「The Predictive Enterprise」とは、Predictive Analyticsによる分析結果が現実の業務プロセスや行動の変化に反映されることにより、高いROIを達成できる企業であると主張していた。 当レポートでは、午前中に行われたプレセミナーを除く、午後からのセミナープログラムについて概要をレポートする。
基調講演を行った明治大学大学院教授、上原征彦氏は、34、5歳ころまでは、多変量解析などを駆使する計量分析派だった。しかし、その後マーケティング理論といった概念の構築に関心が移り、データ分析からはしばらく遠ざかっていたという。
しかし、最近再びデータ分析、とりわけデータマイニングに注目しているそうだ。なぜなら、データマイニングでは、「全体の構造を把握し、かつ個別を位置づける」ことができるからである。従来の分析手法では、平均値などを見て集団の構造を分析するにとどまっていたが、さらに、集団中での個々のデータを鋭く見ていけるのがデータマイニングのメリットだと、上原氏はいう。これは、マーケティングの焦点が、マス(大衆)から個へという流れにも符号したものである。 上原氏は、データマイニングのメリットとしてもう1つ、好きなときに大量のデータを取り込んで素早く分析できる点を挙げている。上原氏は、分析の目的として、仮説を検証することではなく、新たな仮説を発見することを重視してきたそうだが、優れた仮説が見つかる確率はせいぜい1〜2割だという。したがって、優れた仮説、いわば「珠玉の真実」を見い出すためには、大量のデータをさまざまな分析手法で繰り返し分析することが必要である。もちろん、優れた仮説が得られない結果に終わることがほとんどだが、「大きな魚をすくうためには、雑魚も一緒にすくわなければならない」と上原氏は考えている。
最後に、上原氏はマーケティングの進化について説明したうえで、今後のデータマイニング発展の方向性として、次の3つのポイントを挙げて講演を締めくくった。
今年のSPSSソリューションの紹介は、村田氏による「The Predictive Enterprise」の定義の説明に続いて、SPSS社員による寸劇が披露され、「The Predictive Enterprise」が机上の空論ではなく、実際に機能することを分かりやすく、また楽しく理解できるストーリーで解説していく、創造性に富んだ内容であった。 村田氏は、「The Predictive Enterprise」とは、Predictive Analyticsを用いて、データ分析に基づく科学的な意思決定を行う「理想的な企業」のことであるという。 ただし、「The Predictive Enterprise」は、業種を限定しない。学校、官公庁、製造業などすべての組織が「The Predictive Enterprise」になり得る候補だという。また、部署も限定しない。経理、研究開発、営業、サービス、マーケティングなど、すべての部署が、「The Predictive Enterprise」になるための旅に同行するのである。 「The Predictive Enterprise」とは、具体的には、将来をより良くするために、起こり得ることを予測(Predict)し、予測に基づいた有効なビジネスアクションを取ることができる企業である。例えば、プロセスを変えることによりオペレーションを改善し、その結果、売上増加、コスト削減などの実質的な成果をもたらすことのできる企業であるという。村田氏は、次表(図1)を示しながら、顧客との接点(タッチポイント)において、「The Predictive Enterprise」はどのように対応するのかを具体的に説明した。
左端のダイレクトメールを実施する場合、Predictive Analyticsによりレスポンス率を予測し、適切な顧客のみをターゲットとして実施した成果として25〜40%のコスト削減が実現できるということが、SPSSのユーザー企業からの報告で判明しているそうだ。また、コールセンターでは、顧客行動を予測してセールスチャンスを見出し、適した商品をレコメンドするなど、クロスセル/アップセルを通じて、売上を大幅に増加させた企業がある。Webサイト上の行動の分析により、Webサイトを最適化し、クリック率の向上につなげたケースもあるということだった。 では「The Predictive Enterprise」は、実際どのように機能するのか。村田氏は、一言でいえば、「分析を用いて意思決定のプロセスを最適化すること」だという。そのプロセスは、まず、現状を把握すること、すなわち過去を検証し、将来を予測することから始まる。そして、データからインサイト(洞察)とフォーサイト(先見)を取り出す。次に、インサイトとフォーサイトに基づき、売上増加、コスト削減などの結果を出すことに焦点をあてて、ビジネス改善のための戦略を立てる。そして、戦略を実施する準備ができたら、施策を実行し、最後にその結果を検証するという流れになる。村田氏は、この一連のプロセスを旅に例え、そのプロセスは繰り返されるものだという。
SPSS社員による寸劇は、クレジットカード業務を取り扱う架空の会社「SPカード」を舞台として行われた。想定されたターゲット顧客の1人として、30代前半の独身男性を演じる西牧氏のところに、クレジットカードの入会案内のダイレクトメールが届き、その内容に興味をもった西牧氏がSPカード会社に電話する場面から寸劇は始まる。 電話を受けた「SPカード」のコールセンターでは、オペレーターが見ているPC画面に、西牧氏との会話に応じて、適切な質問やレコメンデーションの内容が自動的に表示される。オペレーターはその内容に則して、セールストークを行う。その結果、オペレーターは、西牧氏をゴールドカードに入会させることに成功するというストーリーが展開された。これにより、Predictive Analyticsにおいては、コールセンターが単なる受付窓口ではなく、クロスセル、アップセル、退会防止、見込客の発掘など、収益を生み出すチャネルとなり得るということが参加者にも容易に理解できたであろう。 次のシーンでは、村田氏演じるSPカードのCEOがPC画面に表示された同社の業績推移を険しい表情で見つめている。売上が低下傾向にあることを知り、同社のマーケティング部長を演じる多川氏に原因の解明を命じる。多川氏は、キャンペーンの現状や顧客動向について詳細に分析することにより、インサイトとフォーサイトを得て、業績改善のための戦略案を村田氏に提案する。多川氏のアイデアは、3つの施策にフォーカスすることだった。1つ目は新規入会キャンペーンを実施すること、2つ目はクロスセルの見直しを行うこと、3つ目は退会防止の施策をコールセンターに展開することである。
多川氏の提案に村田氏は早速ゴーサインを出し、多川氏は戦略実行のための施策立案を部下の寺垣氏に命ずる。マーケティングを知り尽くした寺垣氏は、キャンペーンを最適化するアプリケーション「Predictive Marketing」の機能を用いて、最も反応率の高いターゲット顧客を絞り込み(画面1)、最適な新規入会促進キャンペーンやクロスセルキャンペーンを立案していく。
シーンが変わって登場したのは、同社アナリストを演じる長谷川氏。長谷川氏は退会防止のための新たな施策を立案するため、データマイニングツール“Clementine”を操る。Clementineの分析によって退会しそうな顧客を予測し、その顧客に対してどのような退会防止のオファーを行えば、退会率が低下するかを導き出す。そうして、精度を大幅に向上させた「退会防止モデル」を作成した。
こうしていくつかのPredictive Analyticsによるアクションが組み合わされ、そこから生み出された業績回復のための施策が寺垣氏によって実行に移された。実行されている様子については、再びゴールドカード会員の西牧氏が登場し、Web上でのクロスセルのオファーに応じて、公共料金の引き落としの申し込みを行ったり、トラブルによって退会しそうになっている西牧氏に対して、コールセンターのオペレーターが適切なトークを展開することによって、退会を思いとどまらせることに成功するなど、具体的なストーリーが展開していった。 そして、舞台はその2カ月後。マーケティング部長の多川氏が、Predictive Analyticsによる一連の施策が実行に移された結果、新規入会者数の増加、クロスセルの成功、退会者数の低下によって業績が大幅に持ち直していることをCEOの村田氏に報告するというシーンで完結した。 今回のSPSSソリューションでは、Predictive Analyticsが業務にしっかりと組み込まれ、実際に機能している「The Predictive
Enterprise」で起こり得るストーリーを寸劇形式でプレゼンテーションすることによって、単にスライドを用いた説明だけでは得られない、深い理解と納得感を参加者に与えていたようだ。
提供:エス・ピー・エス・エス株式会社
企画・制作:アイティメディア 営業局 掲載内容有効期限:2005年6月30日 |
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