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@IT > SPSS Data Mining Day 2004 イベントレポート後編 |
企画・制作:アットマーク・アイティ
営業企画局 掲載内容有効期限:2004年6月25日 |
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ユーザー事例として最初に講演を行ったのは、株式会社ティップネスの上野和彦氏である。現在、同社は34店舗を展開する、売上高215億円(2003年度)のフィットネスクラブの大手企業の1つだ。 フィットネスクラブ業界は、最近の健康志向の高まりから、成長著しい市場だろうという先入観がある。しかし、上野氏が示した市場規模の推移グラフによると、実際はほとんど伸びておらず、人口に対するフィットネスクラブへの参加率についても、米国では2002年時点で17%に達しているのに対し、日本では同6.3%であるという。しかも、1998年時点で5.2%であったものが、この5年間でわずかに1%増加したにすぎないというのだ。 同社の顧客の特徴についての考察では、この数年で顧客の年齢別構成比は大きく変動したという。2000年には20代の利用者が最も多かったそうだが、2004年には20代が減少し、目立ったところでは60代以上の利用者が増加している。 そして、フィットネスクラブのサービス内容については、顧客ニーズや利用スタイルの変化に適応するため多様化が進んでおり、最近ではマッサージやエステ、パーソナルトレーナーといった、いわゆる“one-to-one”で提供されるサービスに人気が集中しているのだそうだ。 業界自体が伸び悩みを抱える一方で、顧客ニーズの多様化にも取り組まねばならず、試行錯誤を続けながら次なる手を打ち続けなければならない。このような閉塞感を打破するため、同社は次のような課題への取り組みを迫られることになる。
すなわち、より適切なデータ分析・活用の必要性が高まったのである。ちょうどそうした時期に、上野氏は2年前のSPSS Data Mining Dayに参加し、新たな分析手法についてのヒントを得て、2003年2月ついに「Clementine」の導入に踏み切ったという。 上野氏によれば、これまでのところは、既存会員の維持施策への反映を主な目的として、データマイニングに取り組んできた。一般に、こうした施策の評価のためには、会員のうちどの程度の割合が退会しているかという「退会率」を指標とすることが多い。しかし、同社では切り口を変え、会員がどの程度の期間在籍しているかという「在籍率」の分析に取り組んだ。その結果、在籍率は入会後6カ月間において低下していくが、それ以降はほとんど変化しない、ということが分かったという。 もちろん、すでに感覚的には理解できていた結果ではあるが、きちんと分析結果を示すことによって、経営者から現場のスタッフまでが、データに基づく顧客理解を深めることができるという点に、データマイニングのメリットを感じているそうだ。実際、現場に対しては「入会後6カ月がもっとも大事だ」という意識が浸透しつつあるという。 同社では、さらにクラスター分析を行い、利用パターン(利用頻度や利用回数)別に7つのクラスターを発見し、それぞれのクラスターに含まれている顧客の利用パターンの変化や在籍率、キャンペーンの反応率などとの関係の分析を深めている。 同社は、まだデータマイニングに取り組んで1年強であるため、データのクリーニングやどのような切り口で分析を行うべきかなどの点でいろいろと試行錯誤を続けている段階だそうだが、同社とSPSSのコンサルティングチーム、そして外部のマーケティングアドバイザーの3者でプロジェクトチームを編成し、積極的に取り組んでいるとのことだった。 今後、データマイニングが同社のビジネスにどう貢献していくのか、興味を引かれる講演だった。
SPSS 上級副社長 村田悦子氏のプレゼンテーションは、「Predictive Analytics(PA)」における「入口」、すなわちデータの取り込みの部分、および「出口」、すなわち分析結果の展開部分に焦点を絞って行われた。 村田氏によれば、そもそも「PA」の概念は、SPSS社が2002年に提唱したものであったという。その後、米国のIT業界専門の大手調査会社Gartner Groupが新たな概念として正式に採用したことから、IT業界で一般的に口にされる言葉になりつつあるそうだ。 さて、「PA」は、先に登場したヌーナン氏も強調したように、分析結果を具体的なアクションに落とし込むことに意義がある。村田氏は次の図(図1)を示し、データが蓄積され、また現状を把握することを主目的とする「Business Intelligence」から、PAはデータを取り込み、データマイニングを行い、予測モデルなどを作成。さらに、そうしたモデルを日常業務遂行のためのシステムである「Operational System(OS)」に展開するという位置づけにあることを説明する。そして、PAによって作成されたモデルが日常業務に組み込まれ、活用されて初めて、IT投資からのリターン(ROI)が大きく伸びることになるという。
同社は、「PA」が有効に機能するために「入口」と「出口」の部分を重視しており、「入口」、すなわちデータの取り込みについては、ビジネス情報の85%を占めるテキストデータから知見を取り出すツールとして「Text Mining for Clementine」を提供している。そして、膨大なデータが日々生み出されているWebサイトのアクセスログ解析ツールとして「Web Mining for Clemenitine」を提供している。この2つのソリューションについては、自社のブランドイメージに関するアンケートデータをテキストマイニングした結果や自社のWebサイトのログデータを分析して得られたサイトリニューアルの効果検証など、自社内で積極的に活用した結果をもとにそれぞれのソリューションの利用例が発表された。 一方、「PA」の出口を意味する展開(Deployment)については、あるClementineユーザーの言葉である、「施策に落とせてナンボ」を引用しながら、次の3つの展開方法があることを説明する。
* 展開方法の詳細については、「Predictive Analyticsの中核を担うデータマイニング導入の手引き」を参照していただきたい 最後に、村田氏は、SPSS米国本社が主催する「World Wide User Conference(2004年10月24日〜27日、The Flamingo Hilton Las Vegas、米国ネバダ州ラスベガス)」を紹介し、会場に集った多くの人へ参加を呼びかけてプレゼンテーションを終えた。
Data Mining Dayの最終プログラムは、ユーザー事例の2例目として東陶機器株式会社の小代禎彦氏の講演であった。小代氏は、SPSS事例探求シリーズ第11回「商品開発のための砂金探し〜テキストマイニング活用事例」にも登場いただいている。 小代氏は、Text Mining for Clementineを導入した2001年から、テキストマイニングに積極的に取り組んできた先駆者の1人であり、今回の講演では、テキストマイニングについての本質的な議論を中心に話を進めた。 小代氏は、テキストマイングとは、大量のテキストデータの中から砂金を掘り出すようなものであり、仮説検証よりも、むしろビジネスチャンス発見が目的であると考えている。近年、テキストマイニングが注目されている背景には、インターネットの普及や、コールセンターへの各種問い合わせが増加したことによって、テキストデータが増大していることがあるという。 ただし、小代氏は、マイニングツールは、データを入れれば有効な分析結果が簡単に得られるようなものではないと注意を促す。特に日本語は解析が難しい言語であるため、日本語解析上の問題点を十分に理解した上で、マイニングツールを使いこなし、うまくエッセンスを引き出すテクニックが重要であるという。つまり、テキストマイニングツールを利用する担当者の分析スキルを高める必要がある。そして、うまくマイニングツールを使いこなすことができれば、さまざまな気付きを与えてくれる道具になるという。 現在、小代氏が利用している「Text Mining for Clementine 2.0」は、旧バージョン1.0からのユーザーである小代氏の意見や提案も反映して改良された最新バージョンであり、講演の中では当ソリューションを利用して再分析した事例を紹介してくれた。テキストマイニングの対象となったのは、食器洗い乾燥機についてのアンケート自由回答データ(回収数4000件)である。アンケートで収集した食器乾燥機についての消費者が持つさまざまな意見や感想を分析し、それらの言葉の相関関係から興味深い知見が得られることを示した。 小代氏は、テキストマイニングの結果から見出すべき知見は、あまり目立たない少数意見だが、商品開発のヒントになりえるような「小さな声」であるという。多くの消費者が口をそろえていうようなクレームや意見は、いわば「大きな声」であって、どの企業でも容易にそれに対応した製品を開発できる。むしろ、「小さな声」を他社に先んじて拾い、商品開発に反映させることが新たなビジネスチャンスにつながるのだと考えているそうだ。 最後に、小代氏は、ツールを利用する担当者のスキルを重視しているのは前述した通りだが、まず担当者自身が消費者としての意識をしっかり持っておくこと、すなわち消費者のプロになることの重要性を説いて講演を締めくくった。テキストマイニングの先駆者らしい、示唆に富む講演であった。
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