「ペーパーレス」というと「ああ、そういえば昔そんな言葉が流行ったよね」と感じる人がいるかもしれない。しかしこれは決して過去の流行語ではない。むしろ、グローバル展開を見据えて、今着実に進みつつある取り組みなのだ。「とりあえずデータをファイルサーバに放り込む」式のコンテンツ管理から脱却して、訴訟リスクへの対応やライフサイクル管理も見据えた文書管理とはどうあるべきだろうか
「ペーパーレス」というキーワードが叫ばれるようになって久しい。業務で利用するさまざまな紙の書類を電子化することで、紙の管理や保管にかかる手間やコストが削減できるだけでなく、電子化してITシステムから利用しやすくすることで、情報の共有や流通が促進され、ひいては企業の生産性向上や収益向上に貢献するソリューションとして大きな期待を集めた。
しかし、ITシステム化が進んだことでむしろ紙が大幅に増えてしまったようなケースも多く発生したこともあり、今やペーパーレスは、ある意味「古いキーワード」と見なされることが多いようだ。「そういえば、そんな用語が一時期流行ったよね」……そんな捉え方をする方が多いのではないだろうか。
しかし、実はここ2、3年の間で、ペーパーレスに関する新たなソリューションが高い注目を集めているのである。その背景には、一体何があるのだろうか。
企業の文書管理に関するコンサルティングに日々従事している、日立コンサルティング シニアマネジャー 青山ゆき氏によれば、大きく分けて2つの理由があるという。
1つは、「e文書法」と呼ばれる法律への対応だ。
「e文書法は2005年に施行された法律で、それまで紙での保存が義務付けられていた各種法対応ドキュメントを、電子形式でも保存できるようにしたもの。実は法律施行当初は、どの企業も及び腰でドキュメントの電子化がなかなか進まなかった経緯があったが、2009年ごろから国税庁が明確なガイドラインを打ち出し、また大手メガバンクが対応に乗り出したことで、2〜3年前から各企業で対応が進むようになった」(青山氏)
そしてもう1つの理由が、文書管理システムそのものに対するニーズの変化だ。日立ソリューションズで、文書管理ソフトウェア製品「ラビニティシリーズ」を使った文書管理ソリューションを手掛ける、同社コンテンツソリューション本部 第2部 主任技師 石田育央氏は、次のように説明する。
「かつては、契約書なら契約書だけを管理するシステム、設計書なら設計書だけを管理するシステムと、ドキュメントの種別ごとに個別に管理システムを構築していた。しかし、こうしてばらばらなシステムを構築・運用する効率の悪さに多くの企業が気付いた結果、社内のあらゆるドキュメントを一括して管理・共有できる文書管理基盤の構築に乗り出す企業が増えてきている」(石田氏)
こうした背景があり、ここ数年の間でいわゆる「ECM」(Enterprise Content Management)と呼ばれるソリューションが高い注目を集めるようになった。このような変化と、ここ数年で蓄積されてきたノウハウの一端は、3月5日に開催されるセミナーで、青山氏が自ら解説する予定だ。日立コンサルティングと日立ソリューションズが手掛けてきた、ラビニティシリーズを使ったECMシステムの構築案件とそのポイントも紹介される(プログラムの詳細はこちらから)。
では具体的に、企業は文書管理においてどのような課題を抱えており、そして両社はそれに対してどのような解決策を提示するのだろうか? 石田氏によれば、最も多いのが「ファイルサーバに放り込みっぱなし」の状態だという。
「ファイルサーバは手っ取り早く用意でき、また最近はディスクも安くなってきているので、『とにかく何も考えずに電子ファイルをファイルサーバに放り込んでおく』という運用が多い。しかしこれでは、ただ文書を溜め込んであるだけで、本当にほしい情報をほしいときに見つけ出すことができない。こういう状態を改善するには、文書管理が極めて効果的だ」
文書管理でドキュメントを簡単に検索できるようにするには、各ドキュメントを文書管理システムに登録し、キーを手がかりに検索できるようにする必要がある。しかし、既に大量に存在するファイルデータや紙の書類を、文書管理システムに移行するには、少なからぬ手間やコストが掛かる。
「社内に存在するすべての紙の書類を電子化するには、多大なコストが掛かる。そのため、電子化する必要があるものと必要がないものを見極めて電子化するとともに、各文書のライフサイクルの中で、電子化する適切なタイミングを見極める必要がある」
また青山氏も、文書を溜め込んでしまってから管理の方法を模索するのではなく、文書を作成して保管する最初のタイミングで、適切な対処を施しておくことが重要だと指摘する。
「あらかじめ保存期間のルールを定めておき、文書を最初に作った時点で、『その文書は何年間保管する必要があるか』『何年後に捨てるのか』を指定しておく必要がある。これをやらずに、無秩序にファイルを溜め込んでしまった後では、手の打ちようがなくなってしまう」
実は、ラビニティシリーズをはじめとする文書管理システムの主たる機能の1つが、こうした情報を基にした「文書の自動廃棄機能」にあるのだ。あらかじめ、各文書の属性情報として、「いつまで保管しておくか」の期限を設定しておき、その期日が来るとユーザーに通知した上、OKが得られればシステムが自動的にファイルを削除する。これによって、余分なファイルが残ってしまうことによるシステムリソースの無駄を省くとともに、情報を確実に廃棄した証跡をシステム上に確実に残しておくことで、ガバナンスを徹底させることができる。
しかし、社内にある紙の文書を何でもかんでも、片っ端から電子化すればいいというわけでもないと青山氏は指摘する。
「紙の文書は可視性に優れるなど、特有の使い勝手の良さがあるため、これを依然として必要とする業務も多い。そのため、紙と電子媒体を適材適所で使い分けることが重要。例えば、契約書の原本は紙で保管しておき、それを取り扱う業務では、スキャンした電子ファイルを使うといった具合に、業務ごとにうまく使い分けることをお勧めしている」
ECMを再考する! 〜データの生成から廃棄まで。データのライフサイクル全体を管理する〜
日時:2014年3月5日(水)15:00〜17:20
会場:日立ソリューションズ セミナールーム
定員:40名
参加費:無料
日立コンサルティングでは、各クライアント企業の業務の実態をヒアリングした上で、前記の「紙と電子の使い分け」も含めた、適切な文書管理の取り組みに関するコンサルティングに従事している。そして、ここでまとまった要件に基づき、今度は日立ソリューションズがラビニティシリーズを使ったシステムの導入と運用を行う。
このように、上流のコンサルティングと下流のSIが一体となることで、顧客企業の要望を確実に反映させた文書管理システムの導入が可能になるのだという。
「私たちコンサルタントは、現在企業が社内で抱えている文書の棚卸しをして、文書の管理体系をルール化して電子化するものを選別するとともに、将来的に新たに発生するであろう業務とそれに付随する文書も棚卸しして、その電子化の是非を検討する」(青山氏)
「われわれシステム側としては、コンサルタントが要件の抽出をしっかり行ってくれるため、システムの検討に専念でき、大変助かっている」(石田氏)
ラビ二ティシリーズの中でもラビニティ Oneは国産の文書管理システムとして確かな実績や多くのノウハウを詰め込みパッケージ化した製品だが、特に柔軟なシステム連携機能に特徴を持っているという。文書管理システムの利用が根付かない大きな理由の1つに、文書の登録が煩雑なことがある。そこでラビニティ Oneでは、各種業務システムで生成されたドキュメントが、自動的に登録されるよう、システム連携を容易に実装できるようになっているという。
また、単に文書を登録・検索できるだけでなく、登録された文書を承認する処理をシステム上でできるようにもなっている。社内稟議の業務フローを、ラビニティ Oneを使ってある程度自動化することも可能だ。もちろん、文書管理システムとしての基本的な機能も充実している。
「特に、文書のライフサイクル管理機能は、これまで充実を図ってきた。例えば、文書の属性情報として保管期限を設定しておけば自動的に廃棄されるし、現在管理されている文書の一覧を『存在証明』として提示することもできる。各種の法制対応や、社内のガバナンスを効かせる意味でも、こうしたライフサイクル管理機能は極めて有用だ」(石田氏)
「文書のライフサイクル管理の取り組みを実際に始めてみると、当初は見えなかった新たな要望が必ず出てくる。そうした際には、適切なタイミングでシステムの改変のお手伝いをさせていただく」(石田氏)
なお、ラビニティ Oneを使った両社の文書管理ソリューションは、今も絶えず進化を続けているという。青山氏は、今後のラビニティ Oneの機能強化には大いに期待していると述べる。
「文書の管理ポリシーを、今よりさらに簡単に設定できたり、あるいは文書のアクセス権をより細かく設定できるようになれば、なお使い勝手が上がると思うし、今後そうした機能が実現することを期待している。近年では、日本企業の海外進出に伴い、海外拠点を含めたグローバルでの文書管理や、海外での訴訟リスクに対応するための証跡管理のために、大規模な文書管理システムのニーズが高まってきている。そうしたニーズにも対応できるよう、我々も進化しながら今後も提案を続けていきたいと考えている」
こうした新たなニーズに対応していくためにも、弊社のドキュメントソリューション ラビニティシリーズでは、今後もこれまで通り各種の機能強化を続けていくとともに、主にパフォーマンス面やスケーラビリティを中心とした非機能要件の強化にも取り組んでいくと石田氏は述べる。
「ラビ二ティシリーズで最も大規模、大容量に対応できる企業内コンテンツ管理基盤 ラビニティ ECMの最近の導入事例では、約1000万件のレコードの検索をほんの数秒で実現した例もある。また弊社では、検索スピードを高めるための各種チューニングのノウハウも豊富に持っている。そうした知見を今後も生かして、大規模案件やグローバル案件に対応していくとともに、性能強化や大規模運用のための機能強化にも取り組んでいきたいと考えている」
ECMを再考する! 〜データの生成から廃棄まで。データのライフサイクル全体を管理する〜
日時:2014年3月5日(水)※終了しました
会場:日立ソリューションズ セミナールーム
定員:40名
参加費:無料
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提供:株式会社日立ソリューションズ
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2014年3月12日