@IT読者はIaaSをどこまで使いこなしている? 実は半数近くが「まだこれから」。情報システムの担当者が抱えるリアルな課題と、その解決策を取材した。
@IT編集部が2013年末に実施した読者調査*によると、IaaSを既に利用している読者の多くは、クラウドサービス市場をけん引してきたAmazon Web Servicesを利用している、という結果が出た。一方で、約4割程度の読者がいまだにIaaSを利用していない状況があることも浮き彫りになった。また、IaaSに対する不安要素に対する質問では、「セキュリティの不安」「トラブルに自社で対応できない不安」「サービスの可用性への不安」の順で回答数が多かった。
*読者調査 @IT編集部が2013年秋に実施した読者調査。IaaSに関しては、約20.2%の読者が「利用する予定がない」と解答している。「中長期的に検討している」段階の読者を合わせると約38.6%と4割近い読者がIaaSを利用していない状況にある(調査方法:@IT Webサイト上の自記式アンケート、調査対象者:@IT読者、調査期間:2013年10月24日〜11月25日、有効回答数:1154件。なお全回答者のうち、78.6%が何らかの情報システム関連職に就いている)。
これらの意見は、IaaSサービス市場が立ち上がった黎明期から語られてきた問題だが、現在も多くの読者の中で、課題のまま残されているという実態が明らかになった。自由記述を求めた項目では、「クラウド事業者の対応の良さや解決能力など任せて安心できる事業者を選定したい」「障害発生時どこまで安全や稼働が保証されるかが知りたい」といった声も聞かれた。
一方、国内外には多数のIaaS事業者が存在する。価格競争に挑む大手サービスプロバイダーの他、日本企業のニーズを多くくんでいる点に強みを持つ国産IaaSプロバイダーも存在する。日本企業の情報システム部門では長らくSI企業への依存が指摘されてきたが、現在はコスト削減や運用効率化の1つの選択肢として、企業情報システム部門側からIaaS導入検討が進みつつあるとも聞く。
これから業務でIaaSサービスを利用しようとする読者に対して、国産IaaSプロバイダーは、どのようなサービスやサポートを展開しようとしているのだろうか。編集部では、国産IaaSベンダーの1つである、ニフティクラウドに取材した。対応いただいたのは、ニフティ クラウド本部 クラウド事業部 クラウドマーケティング部 課長 渡邊太郎氏だ。
――インフラをサービスとして利用するIaaSの活用が広がっていますが、まだまだ保守的な企業や中小規模事業者の中では利用をためらう声も聞かれます。一方で、今後の企業情報システムは、規模の大小は異なれど、システムの下位層であるサーバーやネットワーク、ストレージといった領域はスケールメリットを得られるIaaSサービスに委ねる効率化手法が必然である、といった論調もあります。いま、IaaSサービスを利用していないユーザーが利用するメリットはどこにあるのでしょうか?
渡邊 物理サーバーの故障リスクを考えると分かりやすいでしょう。故障すると大変ですから、1台のサーバーが故障してもデータの保全性を担保できるようにしたい。それをお客さまの社内で実現するとしたら、例えばデータセンターなどで複数のサーバーを立てて、それら全てのデータを同期させ、冗長化するといった環境を構築しなければなりません。
IaaSを含むクラウドサービスは、どこかにトラブルが起こっても、お客さまのデータやサービスに影響が出ないように設計されています。データのバックアップはもちろん、同期や冗長化といった運用も全てニフティ側で行いますので、そのような煩雑な管理は必要なくなります。
オフィス内にサーバーを置いている場合、例えば、建物の法定点検などに関わる停電前後の作業は、情報システム部門担当者にとって負担の大きなものです。読者の方々にもご経験があるのではないかと思いますが、UPS(無停電電源装置)を用意していたとしても電力を供給できる時間は限られているため、万が一に備えてデータのバックアップをしっかり取り、予定されている停電に対しては、事前にサーバーの電源を落としておかなければなりません。電源復旧後に起動するときには、起動の順番もありますし、「なぜかうまく立ち上がらない」という事態は多くの方が経験する問題です。クラウドサービスではこうした問題がありません。
――それでもなかなか踏み切れない要因の1つには、手元にサーバーがないことへの不安があるのだと思います。
渡邊 確かに、インターネットの向こう側にサーバーがあると、具体的に何が心配なのか分からないけれど、漠然とした不安を感じるお客さまは多いですね。まずサービスそのものの安全性という意味では、事業継続性の高いニフティという事業者が、PCI DSS*やISMS**のような外部認証をしっかりと取得してサービスを提供していますので、安心してご利用いただけます。
またデータの安全性という意味では、先にご紹介したような冗長化した堅牢な運用を行っていますし、お客さまのオフィスにサーバーを置くよりも、はるかに安全なデータセンターで管理していることも、自信を持って申し上げられます。
東日本大震災を機に、データセンターの安全性の高さ、またクラウド、もしくは遠隔地にデータを置くことの大切さについて、認識されるようになってきています。
* PCI DSS セキュリティ基準の1つ。クレジットカード事業社が中心となって策定されたが、システム全体のセキュリティ要件を規定していることから、現在ではクレジットカード事業社以外でも認証取得が行われている。
** ISMS 情報セキュリティマネジメントシステム。企業や組織が自身の情報セキュリティを確保・維持するために、セキュリティポリシーに基づいたセキュリティレベルの設定やリスクアセスメントの実施などを継続的に運用する枠組みを指す。
――サービスの品質を保証するSLAに関しては、月間稼働率99.99%とのことですが、これも安心の証明といえますか。
渡邊 われわれのSLAは、実際に実現できている稼働率で水準を定めています。99.99%ですから、基本は何事もなく平和な日々をお過ごしいただけると思います。
ただ、皆さんもご存じのように、クラウドに限らず「絶対に」障害が起こらないシステムはありません。万が一何かトラブルが起こったときに、どういう対応ができるかということは、お客さまに安心していただくための大きなポイントだと考えています。
――万一の障害発生時に、どこを操作して何をすればよいかが分からない、いわば「分からないところが分からない」という状況になるのではないか、という懸念を持つ読者も少なくありません。ハイエンドの技術スキルがない、という思いから利用を踏みとどまるケースもあるようです。
渡邊 管理画面の使い勝手や情報提供にも自信を持っていますが、その背景となるニフティクラウドの誕生についてご紹介しておくと、よいかもしれません。
もともとニフティクラウドは、ニフティ自身が「@nifty」というコンシューマー向けサービスを提供する基盤として、自社の環境をクラウド化したことに始まります。自らが利用者となって積み上げてきたノウハウを広く活用していただこうと、2010年1月からサービスを開始しました。サービスを提供する際、@niftyのWebメールを企画開発した部隊が、コンシューマー向けサービスで培ったノウハウを生かし、使い勝手にこだわって「コントロールパネル」という管理画面を開発しました。
クラウドに限らず、アプリケーションのUIやドキュメントの一部が英語だったために、苦労した経験をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、純国産のニフティクラウドでは、もちろん全てのドキュメントを日本語で提供しています。クラウド分野特有の用語も、現在、社内にあるシステムと同様の表現に置き換えているので分りやすくなっています。
また当社のFAQは、他のクラウドサービスに比べても、桁違いに多くとても充実しています。よくお問い合わせいただくことに関しては、出し惜しみせずにどんどん情報公開していこうという方針なので、たいがいの困りごとはFAQに記載されています。
――FAQが多いだけでは、問題解決できないケースも想定できます。例えば、仮想化技術やIaaS環境そのものに不慣れな状況での、問題の切り分けや対処はどうでしょうか?
渡邊 そうですね。まずどこで起きている問題なのかという、切り分けが難しいことも多いでしょう。「何だか分からないけれどうまくいかない」という状況でも、まずわれわれのサポートセンターにご相談いただければ、問題を切り分けるところから親身になってサポートします。
サポートセンターのポリシーは各社さまざまですが、当社の場合は漠然とした「ふわっ」とした状態でもお問い合わせいただけるのが特徴の1つです*。こういう相談のしやすさを重要視されるお客さまは多いですね。
*「ふわっ」とした問い合せ ふわっとした状態で、さらに問い合わせしやすいよう、本稿末に簡単な問い合わせ用のアンケートフォームを設置しました。簡単な入力項目のみですのでぜひ活用ください。
――問題が分かったとしても、結局「サポート範囲外」ということもありますね。
渡邊 問題を切り分けた結果、それがOS以上の問題だったような場合でも、できる限りの助言はさせていただいています。サポートスタッフが、マニュアル通りの回答をするというよりも、お客さまの立場に立って、お客さまが何を期待しているのかを読み取ろうとする姿勢での対応を、モットーとしています。
また技術やマーケティングなど、他の部門との情報共有や連携も密に行っていますので、サポートスタッフから「こういう回答をしたいが問題ないか」など、気の利いたエスカレーションもできる体制ができています。この点も、他より優れている点だと自負しています。
――導入時のシステムの移行も、ハードルの高い作業かと思います。
渡邊 当社はサポートセンターに加えて、オフィシャルパートナーと連携した技術サポートの体制を持っています。大掛かりな作業の場合は、パートナーをご紹介して、実際に移行作業などをお手伝いすることもできます。
お客さまご自身で移行する場合も、現在お使いのサーバーをイメージ化して、それをUIでサーバーにインポートして展開すると、そのままの環境を移行することができるツールを用意しています。このツールも、われわれ自身のシステム構築の経験を基に作ったものなので、「かゆいところに手が届く」機能を持ったツールです。
管理用のUIであるコントロールパネルの操作マニュアルも充実していますから、多くの問題をここで解決できるはずです。それでも分からないことがあればサポートセンターにご相談いただけます。夜間休日を含め、24時間/365日いつでも、専門の知識を持った担当者が全て日本国内で対応しますから「夜中にトラブルの問い合わせをしたら海外のサポートにつながって要件を伝えることもままならない」というようなこともありません。
――サポートがとても重要だという思想なのですね。
渡邊 クラウドの良さは、利用されるお客さまの「運用が楽になること」です。複雑だったり分かりにくかったりして、かえって、お客さま側の運用の手間が増えてしまっては、本末転倒です。
われわれは、クラウドの技術を使いこなすことを求めるのではなく、クラウドを誰でも使いこなしていただくための技術を提供したいと考えています。また、ニフティクラウドのサービスを企画する段階から、サポート部門も企画に参加し、必要なサポートは何かということも含めて企画してきました。
こういうサポートに対する考えは、ニフティがプロ向けではなく、ISPというコンシューマー向けのサービスを手掛けてきた歴史によって、培われた文化でもあります。お客さまのしたいことや困りごとはさまざまですから、お客さまがしたいことを実現できるように親身になってサポートする。実際、サポートに満足していただいたことで、長くお使いいただいているお客さまも多くいらっしゃいます。
――試してみたいのですが、費用の見積もりも難しそうです。初めての場合はどのような構成を選べばよいのでしょうか? また、段階的な変更は柔軟に行えるでしょうか?
渡邊 最初に費用規模を概算で見積もったときは安いと思ったのに、最終的に必要なオプションを付加してみると意外と高くついたという経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
ニフティクラウドの場合は、価格体系が明確ですし、ネットワークも最大10TBまでは無料です。初期費用はゼロですし、従量課金だけでなく、月額課金のプランもあります。
最初は従量課金で小さく始めて、途中から月額に切り替えることも可能です。エントリープランの「mini」であれば、月額4800円(税抜)です。また、サーバーの追加や削除、スペックの変更なども、コントロールパネルから行うことができますので、常に最適な規模でご利用いただけます。
当社のWebサイトに「見積シミュレーター」がありますので、ぜひ試してみてください。もし「実現したいことのために必要なスペックが分からない」という場合は、導入前サポートにご相談ください。どのくらいのスペックが必要か、アドバイスをさせていただいています(詳しくは見積シミュレーターの解説、導入前サポートの使い方参照)。
――今後ニフティクラウドはどのような方向に進化していくのでしょうか。
渡邊 より容易な自動化の方向に力を入れていきたいと思っています。例えばブロックのように、サーバーとネットワークとディスクをUI上で繋ぐとシステムが構築できるとか、よく利用される構成のテンプレートが用意されていて、それを選ぶだけで組み上がるといったイメージです。
ニフティクラウドでは、サーバーやネットワーク、ディスクといった基本的な部品だけでなく、システム構築に便利な「お役立ち部品」をさまざま取りそろえていますので、これからは、それらの部品をいかに容易に扱えるようにするか、いかに組み立てやすくするか、というところを突き詰めていくことになると思います。
現時点でIaaSサービスを利用しているお客さまは、まだまだ技術的に長けた方が中心だと思いますが、これからは特別な技術を持っていない方々にも普及していくと思っています。そういう方々が使えてこそのクラウドでしょう。われわれが提供すべき価値は、インフラに関して知識がない方でもインフラを扱えるようにすることだと考えています。
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本稿冒頭で、本誌読者の4割がIaaS未経験者であること、日本の企業情報システム担当者とSI事業者の関係、業務の委託・分掌などについて指摘した。
大手企業を中心に、既にSI事業者とともにIaaS環境の導入やプライベートクラウドとの併用による、ハイブリッドクラウド環境の導入などが進む一方で、こうしたSI事業者を介さずシステムを運営・構築してきた日本企業にとって、IaaS環境の選定は非常に難度の高い問題であると推察される。はじめの第一歩としてのIaaSサービス選定の際には、移植容易性、運用の利便性、万一のサポート体制が1つの選定指針となることだろう。
IaaSサービスに関して言うと、機能面では細かな仕様を除いては多くのプロバイダーが類似のサービスを提供しているイメージがあることは否めない。しかし、導入後・利用開始後の、利用者側の運用負荷やサポート面では、日本的で、かつコンシューマー視点を持つ本稿で取材したニフティクラウドのようなサービスプロバイダーに一日の長があると見ることもできる。
本稿中で言及した「見積シミュレーター」は、下記のリンクからアクセスできる。ご自身のオフィスにあるサーバー環境と対比してコストなどの検討を進めてほしい。
例えば、ロードバランサ―などを設定せず、サーバーをグローバルIPアドレス固定で1台設定し、OSをCentOSとした場合で、ネットワーク転送量が10TB以内であれば、月額費用はわずか5040円である(2014年4月現在)。
シミュレーションだけでなく、このまま見積書の発行も自動で行える。
また、本文で言及した通り、導入前相談の窓口も充実している。現在の使い方や移行の方法を含め、周囲に詳しい人材がいない場合でもアドバイスを受けられる。本稿末の質問フォームでの問い合わせもお勧めだ。
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提供:ニフティ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2014年6月11日