2015年2月初めに発表された「VMware vSphere 6」は、実に650以上の新機能を搭載する大型アップデートとなった。その新バージョンの大きな狙いは、拡張性や可用性を高め、ミッションクリティカルからクラウドネイティブまで、ありとあらゆるアプリケーションに対応するハイブリッドクラウドの統合プラットフォームとなることにあるという。実現するための技術的裏付け、展望を取材した。
数々のプライベートクラウド・パブリッククラウドの基盤となってきた仮想化プラットフォーム「VMware vSphere」。そのプラットフォームが、バージョンアップによりカバー範囲をさらに広げ、文字通り、ありとあらゆるアプリケーションを支えるハイブリッドクラウドの統合プラットフォームに進化しようとしている。
企業の仮想化基盤を支えるプラットフォームが、2011年7月以来の大型アップデートを行った。「VMware vSphere 6」は、実に650以上の新機能を加えてリリースされた。
新バージョンの特徴を一言で表すと、「ハイブリッドクラウド上でありとあらゆるアプリケーションの動作が可能になる」ことに集約できるだろう。VMware vSphereはこれまでも、「Oracle Database」や「SAP ERP」をはじめとするスケールアップ型のビジネスクリティカルなアプリケーションやバーチャルデスクトップの基盤として活用されてきた。VMware vSphere 6はこれらに加え、「SAP HANA」に代表されるインメモリデータベースや、急速に採用が広がっている「Apache Hadoop」などのスケールアウト型のアプリケーション、コンテナーなどのクラウドネイティブなアプリケーションに対応可能な拡張性を兼ね備えているという。
「わざわざ新たに別の基盤を整えなくても、既存のVMware環境の延長線上でありとあらゆるアプリケーションを動作させることができる」(ヴイエムウェア マーケティング本部 シニアプロダクトマーケティングマネージャ 桂島航氏)。同社はこれを「One Cloud, Any Application」というコンセプトで表現している。
しかも、「仮想化やクラウド基盤を担うプラットフォームは多々あれど、ネットワークとストレージの仮想化、パブリックとプライベートのシームレスな連携、全ての分野を横断するハイブリッドクラウドソリューションを提供できるのがヴイエムウェアの強みだ」と桂島氏はいう。
では、VMware vSphere 6は具体的にどのような機能で、さまざまなアプリケーションの異なる要件を満たしているのだろうか。新機能に着目しながら見てみよう。
第一の特徴として挙げられるのは、スケーラビリティの向上だ。仮想マシン、ホスト、そしてクラスターそれぞれに構成上限を拡大している。
例えば、1クラスター当たりのホスト数は32台から倍増して64台に、仮想マシン台数は4000台から8000台に拡大した。仮想マシン1台に割り当てられるリソースも増え、バーチャルメモリは4TBまで利用できるようになった。
こうした拡張によって「インメモリデータベースなどの今まで仮想化しにくかった大きなアプリケーションも仮想化してクラウド上で動作させられる」と桂島氏は述べる。また、vSphere 6では、GPU仮想化の新技術(「NVIDIA GRID vGPU」)の活用により、現実世界のような3Dグラフィックスをクラウドから配信することも可能になる他、後述する「Instant Clone」技術を活用することで、コンテナーを走らせるVMを迅速に複製することもできる。ビジネスクリティカルなアプリケーションはもちろん、スケールアウト型のクラウドネイティブなアプリケーション基盤としての役割も果たせるようになる。
VMware vSphere 6の二つ目の特徴として、可用性がさらに強化された点を挙げたい。これにより、ミッションクリティカル、ビジネスクリティカルなアプリケーションの基盤としての役割がさらに強化されている。
元々、VMware vSphereの機能の一つに、ダウンタイムなしに仮想マシンを別のホストに移動できるライブマイグレーション機能「vSphere vMotion」がある。VMware vSphere 6では、このvMotionが強化され、東名阪といった国内拠点での移動はもちろん、日本・シンガポールなどの国をまたぐ規模でのvMotionが可能になった。
具体的には、通信遅延がRTT100ミリ秒以内であればライブマイグレーションが可能で、データセンター間、あるいは本社のオンプレミス環境とパブリッククラウドとの間など、場所や環境を問わず、柔軟に仮想マシンを移動できる。これにより距離を気にせず、ハイブリッド環境の災害対策や複数サイトにまたがる負荷分散を実現できる素地が整ったといえるだろう。
また、数分単位のダウンなどが許されないミッションクリティカルな基幹系アプリケーションで必要とされるフォルトトレランス機能を提供する「VMware vSphere Fault Tolerance(FT)」も強化した。vSphere FTは、ハードウエアに障害が発生しても無停止でアプリケーションの動作を継続できる仕組みだが、これまでは単一の仮想CPUのアプリケーションのみの対応だった。これが複数の仮想CPUに対応することで、高性能と無停止の両立を実現。従来、UNIXなどの専用ハードウエアが必要とされてきた高性能のミッションクリティカルなアプリケーションを、仮想化環境上に移行、運用の一元化を可能にする準備が整ったといえる。
また、中小企業向けに特に有用なのが、vSphereに含まれるバックアップソフトウエアである「VMware vSphere Data Protection」の強化だ。重複排除を行った上でのレプリケーションや、アプリケーション対応のエージェントなど、いままで有償版で提供していた機能を取り込み、小規模システムに可用性向上をもたらす。
今回のバージョンアップで大幅に強化されたのがストレージ仮想化関連、特に「VMware Virtual SAN 6」と「VMware Virtual Volumes」だ。
VMware Virtual SAN(VSAN)は、いわゆるサーバーベースのストレージを実現する機能だ。サーバー内蔵のSSD/HDDを仮想化し、vSphereからまとめて一つのストレージプールとして扱えるようにすることで、SANやファイバーチャネルといったストレージに関する複雑な設定を意識せずに利用できる。「これまではストレージの専門家が時間をかけて行っていた構築作業を、VSANならば2クリックで自動セットアップできる」(桂島氏)。こうした点が評価され、VSANはリリースから9カ月ですでに1000社を超える導入例があるという。
新バージョンでは、オールフラッシュ構成に対応、ノード数も従来の倍である64ノードまで広げ、スケーラビリティを高めた。またスナップショットの機能も拡充しており、「ビジネスクリティカルなアプリケーションも安定稼働させることができる、vSphereに理想的なストレージに仕上げられている」(桂島氏)という。
またVMware vSphere Virtual Volumes(VVOL)では、サードパーティ製のストレージ製品を用いながら、仮想マシン単位のストレージポリシー設定や、プロビジョニングの自動化などが実現できるようになる。既に、EMCやHP、デル、NEC、富士通や日立をはじめ29社のパートナーがVVOLへの対応を表明しており、これらベンダーの製品を利用してきた企業では、これまでのストレージ運用プロセスを変えることなく、レプリケーションやスナップショットといった機能を仮想マシン単位で利用できるようになる。
ヴイエムウェアはストレージ仮想化によって、従来のストレージシステムよりもずっと効率的で俊敏性の高い「Software-Defined Storage」の実現を目指している。ヴイエムウェアは「Software-Defined Storage」をVMware Virtual SAN 6とVMware vSphere Virtual Volumesを通して具現化しようとしている。
最近インフラ周りでは、「Docker」をはじめとするコンテナー技術が注目を集めている。これに対するVMwareの一つの回答が「Instant Clone」で、コンテナーに匹敵する素早さで仮想マシンの展開を可能にする機能だ。メモリイメージを共有して差分だけを複製する仕組みを採用しているため、従来に比べ13倍高速にプロビジョニングを実行できる。
しかも、これまでvSphereプラットフォームで提供されてきた管理性はそのままだ。コンテナー並みの素早い展開を実現しつつ、ライブマイグレーションやHAといった仮想マシンならではのメリットも享受できる。むろん、メモリイメージを共有していることから仮想化のメリットの一つでもある集約率もいっそう高められる。
この他にも、クラウド基盤ソフトウエア「OpenStack」のVMwareディストリビューションとなる「VMware Integrated OpenStack」も提供される。ヴイエムウェア製品のドライバーも含めた形で検証済みの組み合わせを提供するため、互換性などを意識することなくすぐに利用できる上、サポートもヴイエムウェアから一括して提供される。
これもまた、VMware vSphereという一つのプラットフォームで、さまざまなアプリケーション、さまざまなニーズに対応していこうという取り組みの一環といえるだろう。「エンタープライズのお客さまからもOpenStackを使ってみたいという声が出てきているが、そのときにわざわざ、今までと異なるインフラを作らなくてもいい。vSphere上で簡単に、安定して動く環境を作ることができる」(桂島氏)
このように、インメモリデータベースもビッグデータも、コンテナー技術もOpenStackも、もちろんこれまでvSphereが得意としてきたビジネスクリティカルアプリケーションも……、というように、ありとあらゆる技術を、今まで構築してきた仮想環境を生かしながら利用できることを目指したのがVMware vSphere 6だ。これまでも提示してきたSoftware-Defined Data Centerというアーキテクチャの上で、One Cloud, Any Applicationを実現していく。なお、VMware vSphere 6の詳細情報は期間限定のオンラインセミナーでも確認できる。本稿と併せてオンラインセミナーを閲覧すれば、vSphereがありとあらゆるアプリケーションを支えるハイブリッドクラウドの統合プラットフォームを指向していることが確認できるだろう。
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提供:ヴイエムウェア株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2015年3月31日
VMware vSphere 6をはじめとする今回の発表の詳細情報に関する、期間限定のオンラインセミナーが開設されている。vSphereがありとあらゆるアプリケーションを支えるハイブリッドクラウドの統合プラットフォームを指向していることが確認できるだろう。
本稿で取材したVMware vSphereの開発・提供元であるヴイエムウェアのWebサイト。VMware vSphereだけでなく、パブリッククラウドサービス「VMware vCloud Air」の情報や、オンラインハンズオンなども。