ヴイエムウェアによる、2015年2月3日の「VMware vSphere 6」およびこれに関連する「VMware Virtual SAN 6」「VMware vSphere Virtual Volumes」「VMware Integrated OpenStack」などの発表に関する注目ポイントを、文脈とともにお伝えする。
ヴイエムウェアの日本法人は2015年2月3日、米国における数時間前の発表を受け、同社の仮想化プラットフォームの最新版「VMware vSphere 6」をはじめ、「VMware Virtual SAN 6」「VMware vSphere Virtual Volumes」「VMware Integrated OpenStack」、ネットワーク仮想化製品「VMware NSX」とクラウドサービス「VMware vCloud Air」の連携に基づく「VMware vCloud Air Hybrid Networking Services」など、一挙に多数の発表を行った。注目される機能を、文脈とともにお伝えする。
VMware vSphere 6は2015年第1四半期中に提供開始の予定。vSphere 6関連の発表の要点は次の通り。
長距離vMotionで、無停止のクラウド移行も
仮想マシンを、ダウンタイムなしで別物理ホストに移動できるライブマイグレーション機能「VMware vMotion」は、vSphere 6で「Long-Distance vMotion」、すなわち長距離間(RTT最大100ミリ秒)の移動に正式対応した。vSphere 6では、vCenter ServerにまたがるvMotionにも対応している。RTT 100ミリ秒なら、東京―シンガポール間の移動も可能という。
日本からシンガポールまでの程度であれば、距離をことさら気にせずにvMotionができるということは、重要な意味を持つ。例えば(vSphere 6ベースの)クラウドサービスに対してレイヤ2接続していれば、アプリケーションの稼働を止めることなくクラウドサービスへ移行し、あるいは逆にクラウドサービスから無停止で社内に戻すことも(少なくとも理屈としては)できるからだ。米ヴイエムウェアは、同社カンファレンスVMworld 2014で、ユーザー組織の社内データセンターからVMware vCloud AirへのvMotionをデモした。
他の用途として、基幹アプリケーションの災害回避などが考えられるという。
VMware FTが4仮想CPUに対応
VMware FTは、仮想マシン間のメモリ同期によるアプリケーション可用性維持機能。自動再起動型の可用性向上機能と異なり、アプリケーションを動作するメイン仮想マシンがダウンしても、完全に無停止で運用を続けられる。vSphereならではの機能といえる。これまで単一仮想CPUのアプリケーションにしか対応していなかったが、最大4仮想CPUまでのマルチCPUアプリケーションがサポートされることになり、適用範囲が広がった。
「Instant Cloning」で仮想マシンの集約度とスピードを向上
vSphere 6でさらに注目されるのは、「Project Fargo」と呼ばれていた仮想マシンの「Instant Cloning」、文字通り、瞬時に仮想マシンをクローニング(複製)する機能だ。動作中の仮想マシンからの複製により、事実上別の仮想マシンを作成する。ただし、仮想マシンを完全に複製するわけではない。これまでの仮想マシンファイルのクローニングで、実際には差分だけをすればよいのと同様だ。新たに作り出された「子」の仮想マシンは、「親」の仮想マシンのディスクおよびメモリを共有し、差分のみを独自に保持する。
事実上、メモリやディスクの消費量の少ない仮想マシンを多数、一瞬にして作成できるわけで、vSphereにおける仮想マシンの集約率を高め、配備のスピードを向上できる。ヴイエムウェアでは仮想デスクトップ(VDI)、開発・テストなどの用途を想定している。
最近話題のコンテナ技術に関していえば、コンテナクラスタの迅速な展開が可能になる。これはまた、「集約率と展開スピードだけを理由にコンテナ技術を使う必要はない」というメッセージでもある。
vSphere 6では拡張性がさらに向上
vSphere 6は、既存バージョンのvSphere 5.5と比較し、1クラスタ当たりのホスト数が64、仮想マシン数が8000と2倍に増加。ホスト1台当たりの仮想マシンが4倍に増加するなど、拡張性が向上した。仮想マシン1台当たりの仮想CPU数は128で従来の2倍、仮想マシン1台当たりの仮想メモリは4TBで従来の4倍に向上した。
VVOLがとうとう正式提供開始
ストレージ関連では、長らく開発が続けられてきた「VMware vSphere Virtual Volumes(VVOL)」が、とうとう正式提供される。これは、サードパーティのストレージ製品が、ヴイエムウェアの提供するAPIを用いることで、データを仮想マシン単位で管理できるようにする機能。仮想マシン単位でのレプリケーションやストレージI/O性能の管理が行える。複数のストレージ製品を混在利用する場合にも、一貫したポリシーに基づく制御が可能になる。ストレージアクセスに新しいプロトコルを持ち込むものではなく、ファイバチャネル、iSCSI、NFSのストレージ製品による対応が進められている。
VVOLに先駆けて、仮想マシン単位の制御を特徴としたファイルストレージを提供してきたティントリは、「上から下まで」VVOLをサポートすると発表した。100万の仮想ボリュームに対応できるという。同社は後述のVMware Integrated OpenStackにも対応するとしている。
VSAN 6はオールフラッシュ構成も可能に
「VMware Virtual SAN 6(VSAN 6)」は、サーバーに内蔵の記憶媒体を活用し、ネットワークストレージなしにvSphere環境のストレージ機能を提供できるソフトウェアの新版。
これまではデータのキャッシュにフラッシュ、永続的な保存にハードディスクドライブという構成しかサポートされていなかったが、VSAN 6ではキャッシュと保存の双方にフラッシュを用いることができるようになった。ヴイエムウェアは、これまで仮想デスクトップ、開発/テストなどの用途を対象にVSANを推進してきたが、VSAN 6より業務に不可欠なアプリケーションも本格的にサポートしていくという。
VSAN 6では、1クラスタ当たり64ノードと、拡張性が従来の2倍に向上する。1ホスト当たりの IOPS は、SSD/HDD構成で従来の 2 倍、 オールフラッシュで4倍以上だという。
ベータ提供されてきた「VMware Integrated OpenStack(VIO)」が正式提供される。これはVMware vSphereの上にOpenStackをかぶせる形で構成される、ヴイエムウェアのOpenStackディストリビューション。vSphereの堅牢性やvMotion、VMware FTなどによる運用性を生かしながら、OpenStackの良さであるAPIを生かせるというのが、この製品のポイント。
OpenStackソフトウェアおよびvSphereとの連携ソフトウェアは単一のファイルから展開でき、導入作業は15分で済ませられるという。運用も、vSphereの管理と同様なグラフィカルインターフェイスで行える。
VIOは、vSphereユーザーに対して無償提供される。より正確には、「vSphere Enterprise Plus」「vSphere with Operations Management Enterprise Plus」「vCloud Suite」の顧客が無償提供の対象となる。ヴイエムウェアによるテクニカルサポートは1プロセッサ当たり2万5000円の有償オプション。2月3日の発表時点では、CTCがVIOの販売パートナーとして名乗りを上げている。
ネットワーク仮想化製品「VMware NSX」は、2015年前半にvCloud Airへの実装が行われる。「VMware vCloud Air Hybrid Networking Services」は、これに基づくネットワークサービスで、2015年後半に、順次展開の予定という。
vCloud Airユーザー組織の拠点に設置するVMware NSXのゲートウェイを経由して、vCloud Air上の自社利用仮想マシンと直接レイヤ2接続が行える。ユーザーが主導権を持って論理セグメントをきめ細かく設定でき、セキュリティの詳細な制御などが可能になるという。
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