無線LANアクセスポイントやネットワーク機器の設定は、専門知識を持った技術者がローカル環境で行うもの……そんなこれまでの常識を覆す製品が「Cisco Meraki」だ。設定や管理機能を全てクラウド上に持っていくことで、どんなメリットが生まれるのだろうか?
店舗の新規オープンや拠点の開設時にはさまざまな準備が必要だ。その中でも欠かせないのが、ネットワーク接続環境の整備だろう。すぐ使えるようにしたいのに、回線や機器を手配し、エンジニアのスケジュールをやりくりして無線ネットワークやVPNの設定をしてもらうための調整や手配で何日も待たされるのはナンセンスだ。
こうした問題点を「全ての管理をクラウドで行う」というコンセプトで解決するのが、「Cisco Meraki」の製品群だ。無線LANをはじめとするネットワークに関する設定や運用管理、さらにはセキュリティ機能に至るまで、全てをクラウド側で一元的に行うことにより、専門知識を持つ担当者がいない拠点側の手を煩わせたり、わざわざエンジニアを派遣してあれこれ設定を行ったりしなくとも、ネットワークを利用できるようになる。
この「Meraki」は元々、2006年に設立された米国のスタートアップ企業で、2012年に米シスコシステムズに買収された。それ以降は「Cisco Meraki」というブランド名で、企業向けの無線LANアクセスポイントである「MRシリーズ」の他、L2/L3スイッチの「MSシリーズ」、ルーター&セキュリティアプライアンスの「MXシリーズ」という製品群を提供している。
Cisco Merakiの最大の特徴は、「ネットワークをクラウドで管理する」というコンセプトだ。従来、無線LANアクセスポイントやコントローラーにせよ、その他のネットワーク機器にせよ、設定はそれぞれの機器が導入されるローカル環境、あるいは管理下にあるネットワーク経由で行うことが普通だった。設定内容は各機器のメモリ内に保存され、変更するには知識を持ったエンジニアがコンソール経由でログインし、作業を行う必要があった。
この面倒な作業を効率化するため、シェルや設定自動化ツール、あるいはネットワーク管理ツールといったさまざまな手段が生み出されてきたが、Cisco Merakiのアプローチは根本から異なる。機器の設定内容や管理機能自体をクラウド上に持っていき、それをネットワーク越しに参照することで、導入や運用管理作業を効率的に、迅速に行えるようにしているのだ。ネットワークの管理機能が丸ごとクラウド上に載っているようなものとも表現できるだろう。
クラウドで機器を管理することによって、オンプレミスの運用管理では得られないさまざまなメリットが生まれる。一つは高い信頼性だ。Cisco Merakiのクラウドアーキテクチャは、複数のデータセンター基盤を同時に使うことで、万一どこかに障害が発生してもフェイルオーバーを行えるようにしている。
また、スケーラビリティに富んでいることも特徴だ。論理的にも物理的にもボトルネックが発生せず、デバイスをつなげばつなぐだけ、自由に拡張できる。シスコシステムズ クラウドネットワーキンググループ セールススペシャリストの山移雄悟氏によると、現在Merakiで管理されているネットワークは、全世界で23万ネットワークに上るという。
だが何より大きな特徴は、使いたいときにすぐ導入し、使い始めることができる点だろう。MRシリーズのデバイスを置くだけですぐ運用を開始できる。「箱を開け、電源を入れてつなげばOKというゼロタッチの導入が可能で、ユーザーの使い方に迅速に対応できる」(山移氏)。
Cisco Merakiの製品群は「クラウドを活用することで徹底的に運用管理を楽にしよう」という思想に基づいて作られている。導入の際に管理者は、管理画面上で当該機器のシリアルナンバーを追加し、適用すべきネットワークポリシーを割り当てるだけだ。事前のキッティング作業も不要となる。専任のネットワーク管理者がいない拠点側でも容易に導入できる上、ネットワーク全体の運用管理の負担も減らすことができる。
例えばMSシリーズでは、「Virtual Stack」という機能を提供している。物理的なスイッチの位置に関わらず、管理下にある全てのスイッチを仮想的に一つのスイッチとして扱える。このため、一括して設定変更などを行うことが可能となる。機器に一つ一つ接続してコンソールを開き、設定を変更してはまた次のデバイスに回るといった作業が不要になる。これもクラウド管理の大きな特徴の一つだ。
同様にMXシリーズでは「Auto-VPN」の機能を提供している。従来複雑な設定が必要であったSite-to-Site VPNをわずか数クリックで実現することが可能だ。
Cisco Merakiには、自動的にネットワークトポロジーを作成する機能も備えている。もし何らかの障害によってアラートが表示されたところがあれば、ドリルダウン形式で詳細を把握可能だ。より詳しく状況を知りたいというときには、pingコマンドを打ったり、パケットをキャプチャしたり、ケーブルテストやスペクトラム分析を実施することもできる。それも、拠点側に一切足を運ぶことなくだ。
物理的な作業が拠点側で必要な場合でも、クラウドから機器のLEDを点滅させることができるため、拠点のスタッフに的確な指示を出すことが可能だ。
先にも述べた通り、Cisco Merakiのクラウドで管理可能なネットワークデバイスは、無線LANアクセスポイントとしての機能を提供するMRシリーズ、スイッチとして動作するMSシリーズ、そしてルーター&セキュリティアプライアンスのMXシリーズという3種類があり、加えてMDM(モバイルデバイスマネジメント)の機能も提供している。
Cisco Merakiのネットワークデバイスは、レイヤ7のアプリケーションファイアウォール機能を備えている。これを活用することで、「アプリケーションを可視化し、誰がどんなアプリを使っているかを把握した上で、利用可能な帯域などのルールを設定することもできる」(山移氏)。
もう一つ一連のデバイスで驚かされるのは、外形デザインにもこだわっていることだ。無線LANアクセスポイントに限らず、企業向けネットワーク機器となると、どうしても機能優先で無骨なデザインになりがちだった。しかしCisco Merakiの製品は、白色を基調にした洗練されたデザインとなっている。
「小売店鋪やレストランなどでは、見た目を重視して天井の中に無線LAN機器を隠したりする場合が多かったが、Merakiのデバイスはあえてそのまま設置していただける」と山移氏は言う。
加えてCisco Merakiには、ネットワークインフラとしての役割だけでなく、マーケティングツールとしての活用を意識した機能もある。例えば、来客に無線LAN接続を提供する際、店舗のFacebookページへリダイレクトしてチェックインしてもらい、Facebookを利用したマーケティングに連動できる。
また、無線LANアクセスポイントを一種のセンサーに見立て、店舗内、あるいはイベント会場内の人の集まり具合をヒートマップとして把握できる。つまり、来客の導線を可視化することで、効果的なディスプレーなどにつなげることができる。
このように、単に無線LAN経由のネットワーク接続を提供するだけの役割から一歩踏み込み、顧客に有効にアプローチする手段としても活用可能なのだ。
ネットワーク機器はローカルで設定、管理するもの、というこれまでの常識を覆したCisco Meraki。クラウドで運用、管理することによって、ビジネス上の要請に応じて迅速に、負担をかけることなく無線ネットワーク環境を導入できることを説明してきた。
といっても、言葉だけでは、実際のところどうなのか分かりにくいかもしれない。2015年6月10日から開催される「Interop Tokyo」のシスコシステムズブースでは、Cisco Merakiのクラウド画面を見ながら実際にデモンストレーションを受けることができる。興味を持たれた方はぜひ参加してみてはいかがだろうか。
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提供:シスコシステムズ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2015年6月9日