シスコが示す、「より速く」だけじゃない新しい無線LANソリューションの姿Interop Tokyo 2015 シスコブースレポート【前編】

今やITベンダーの役割は、より高速で、より大容量なインフラを提供することだけではない。性能、機能を追求すると共に、ITをビジネスドライバーとして活用し、組織を変革していくための「解」も求められているのだ。Interop Tokyo 2015のシスコシステムズのブースでは、これまで培ってきたネットワーク技術をベースに、新たな付加価値を生み出し、ビジネスをスピーディに展開するソリューション群が紹介された。

» 2015年07月13日 10時00分 公開
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 より高速で、より大容量なインフラを提供する……ネットワーク技術の総合展示会「Interop Tokyo」が常に追い続けてきたテーマだが、今はそれだけで不十分だ。Uberがタクシー業界に、AirBnBがホテル・宿泊業界に大きな影響を与えた例に代表される通り、クラウドやモバイル、ソーシャルネットワークといった新しい技術を駆使した新興企業がかつてないスピードで成長し、既存のビジネスを脅かすまでに至っている。このような状況でIT関連企業に求められるのは、ITをただのインフラとしてとらえ、ツールを提供することではない。ITをビジネスドライバーとして活用し、組織を変革していくかという「解」が求められているのだ。

 2015年6月10日から12日にかけて開催されたInterop Tokyo 2015のシスコシステムズのブースでは、そうした「デジタルビジネス」への変革を支援するソリューション群が展示された。Best of Show Awardの受賞製品を中心に、その一部を紹介しよう。

ビジネスチャンスを逃さずにネットワークを展開できる「Cisco Meraki クラウド管理型ソリューション」

 100%クラウド管理のネットワーキング製品が「Cisco Meraki」だ。

 今やどんなオフィスにとっても無線LAN接続は必須のものとなっている。だが、その設定、展開作業は、誰にでも手軽に行えるものではなかった。新たに事業所や店舗を開設したり、オフィス内の席移動を行ったりする際には、ネットワーク管理者や運用を委託している外部の事業者に依頼し、機器の設定変更作業を行ってもらう必要がある。現場では「今すぐ使いたいのに」と思っても、スケジュールの都合が付かず、待たされることも珍しくない。

「クラウドで管理する」というコンセプトに基づくCisco Meraki

 Cisco Merakiは、「ネットワーク機器をクラウドで管理する」というコンセプトによってこうした課題を解決する。Merakiの設定内容や管理機能は全て、本体のメモリではなくクラウド上に置かれている。無線LANを利用したい場所に本体を設置し、ネットワークに接続するだけで、すぐに利用できる状態になる。わざわざ専任の管理者を呼ばなくともすぐに利用できるため、「ビジネスチャンスを逃さず、すぐにネットワークを展開できる」と同社は説明している。まさに、デジタルビジネス時代に求められるスピード感でネットワークを展開できることが評価され、クラウドサービス部門のグランプリを受賞した。

 もう一つのポイントは、ずばり「見た目」だ。企業向けの無線LANアクセスポイントという言葉から連想される機能優先のデザインとは異なり、白を基調としたスタイリッシュな外見で、「店舗など人の目にさらされる場所でも、隠さずそのまま置いておける」(同社)という。

 Cisco Merakiには、無線LANアクセスポイントの「MRシリーズ」、スイッチの「MSシリーズ」、ルーター&セキュリティアプライアンスの「MXシリーズ」という3種類がある。いずれも専用ダッシュボードから一元的に管理が可能だ。また、誰がどんなアプリケーションを用いており、どのくらい帯域を消費しているかを一目で把握できる他、MDM(モバイルデバイスマネジメント)の機能も利用できる。ブースではそんな使いやすさもアピールされていた。

通信インフラをサービスや収入に変える「Cisco Hyperlocation Module」

 モバイル&ワイヤレス部門でグランプリを受賞した製品が「Cisco Hyperlocation Module」だ。これは企業向け無線LANアクセスポイント「Aironet 3700/3600」向けのアドオンモジュールで、無線LANコントローラーと連携し、1メートル単位というきめ細かな位置情報を提供する。

1メートル単位で位置情報を提供する「Cisco Hyperlocation Module」

 これまでも、無線LANアクセスポイントの情報を基にしてクライアントの位置情報を取得することは可能だったが「精度は5〜10メートル程度とおおまかなもので、ショッピングモールなどでは、隣の店舗の場所にずれてしまう可能性があった」と同社は説明する。

 Cisco Hyperlocation Moduleは、アクセスポイント本体の周囲を取り巻くように取り付けるモジュールだ。32個の素子を搭載し、電波をきめ細かく受信することによって、1メートル単位という精度でクライアントの位置を把握できる。追加モジュールを活用すればビーコン対応も可能という。

 用途はさまざまに考えられる。例えばショッピングモールで来客の動線を測定し、人通りが多いところに売れ筋の商品を置いたり、アプリと連動してクーポンを配布したりしてマーケティングに活用することが可能だ。モール事業者側の立場に立てば、人通りの多寡に応じて賃料を変動させるといったことが可能になる。また米国では、広範囲をカバーする無線アクセスポイントをスタジアムに設置し、その場でリプレイを再生したり、チケット予約などのサービスを提供する取り組みが始まっているが、これに位置情報を組み合わせれば、座席案内やフードサービスなど、より高い付加価値を展開できるだろう。

 既に国内でも、美術館などで、無線LANアクセスポイントによる位置情報の活用が始まっている。ロケーション情報を基に、展示物に関するさまざまな情報を来場者の端末に配信するというものだが、Cisco Hyperlocation Moduleを活用すればこれをさらにきめ細かく提供できる可能性がある。「無線というと通信のためのインフラというイメージが強いが、Cisco Hyperlocation Moduleはその一歩先を行き、インフラをサービスや収入に変えていく」(同社)。

無線でギガビット時代を見据えた「Cisco Aironet 1850シリーズ」

 このようにシスコでは、無線LANソリューションをただの通信路としてだけでなく、ビジネスの変革に貢献可能なソリューションとして提供しているが、それにつけても必要になるのは基本的なスループットだ。ただでさえ動画配信の普及などによってユーザーが求める帯域は増えるばかり。ネットワークは、その基本的なニーズにももちろん応えていく必要がある。

 こうした考え方に沿ってリリースされたのが、802.11ac Wave2仕様に対応したアクセスポイント「Cisco Aironet 1850」だ。最大1.7Gbpsというスループットを実現する、小規模オフィス向けの製品である。同製品は、モバイル&ワイヤレス部門で準グランプリを受賞している。

802.11ac Wave2仕様に対応し、最大1.7Gbpsのスループットを実現する「Cisco Aironet 1850」

 現在市場には、最大で1.3Gbpsのスループットを実現する802.11ac Wave1に対応したアクセスポイントやクライアントが登場し始めた。Cisco Aironet 1850はその先を見据えて投入された製品だ。802.11ac Wave2に盛り込まれている4×4 MIMOもサポートしており、「とにかく早く、高速なことが特徴」(同社)という。

 現時点では単体での管理となるが、将来的には無線LANコントローラーとしても動作するよう機能を拡張し、1台で最大25台のアクセスポイントを管理できるようにしていくという。また、本体にはUSBポートが備わっており、ここにドングル式のオプションを搭載することで、無線LAN接続を既存のWAN回線のバックアップとして活用したり、ビーコンに対応するなど、幅広い用途をカバーしていく。

 シスコでは今後、大規模オフィス向けなど他のラインアップでも802.11ac Wave2対応のモデルを追加していく計画だ。無線LANでも「ギガビット」が当たり前となる時代が、もうすぐ到来しようとしている。

ギガビット端末を収容するアップリンクをサポート「NBASE-T規格(Multigigabitイーサネット)対応LANスイッチ(Catalyst4500-E/3850/3560-CX)」

 さて、このように無線LANが高速化し、多くのクライアントがギガビットクラスのスピードで普通に接続してくるようになると、次の課題が生じる。無線LANのトラフィックを収容するスイッチだ。

 「アクセスポイントが広帯域化すると、今度はアップリンクがボトルネックになる。ならばとスイッチを10Gbps対応のものに入れ替えたいところだが、実はこのとき、ケーブルの張り替えも必要になる。1Gbpsで用いていたCat5のメタルケーブルから、Cat6やCat7のケーブルに変更する必要がある」(同社)。あまり気付かれていないが、実はこの張り直し作業も大きな負担になるという。

 そこで現在、シスコも参画するNBASE-Tアライアンスによって、Cat5のケーブルで1Gbps以上の通信を行えるようにする「NBASE-T」という仕様の策定が進められている。「既存の資産、既存のインフラをそのままに、802.11ac Wave2を使えるようにするものだ」(同社)。ちなみにこの名称は、ネットワーク管理者ならばおなじみの「10BASE-T」「100BASE-T」に由来する。

 シスコではこのNBASE-Tを「Multigigabitイーサネット」という名称で実装。ブースでは、Cisco Catalyst 3560-CXの実機を用いて、Cat5のケーブルで最大5Gbpsの通信を行う様子をデモンストレーションし、エンタープライズ/SMBネットワーキング部門の審査員特別賞を受賞した。

「Multigigabitイーサネット」によってCat5ケーブルで最大5Gbpsの通信を行う様子をデモンストレーション

 mGigはまたPoE(15.4W)、PoE+(30W)に加え、UPOE(60W)もサポートしており、トラフィックだけでなく電力の面でもより多くのアクセスポイントをサポートできる。「BYODの波もあり、多くの端末が接続されるようになっているが、その広帯域化に追いつけていなかったインフラ側をサポートする」と同社は説明している。

 後編では、ネットワークを仮想化、抽象化し、より柔軟に利用できる製品群を紹介する。

シスコInterop Tokyo 2015関連サイト

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提供:シスコシステムズ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2015年8月12日

関連リンク

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シスコブースレポート【後編】

Interop Tokyo 2015のシスコのブース展示の中から、Software Defined Network(SDN)をはじめ、ビジネスの迅速な展開を可能にするソリューション群を紹介。

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