JIRA、Confluence、HipChatなどのコラボレーションツールのベンダーであるアトラシアンが、同社ユーザーらを集めたイベント「Atlassian Community Day 2015」を開催。新製品ロードマップの紹介などを行った。本稿では、内容の一部を紹介する。
JIRA Software、Confluence、HipChatなどのコラボレーションツールのベンダーであるアトラシアンが、同社ユーザーらを集めたイベント「Atlassian Community Day 2015」を開催。新製品ロードマップの紹介などを行った。引っ越したばかりの新オフィスは横浜港に面する倉庫を改装した広々とした空間である。今後は同社の社員有志によるカジュアルなイベント「アトラシアン倶楽部」をはじめ社外向けの活動にも使っていく予定だ。
イベントの内容は、先日米サンフランシスコで開催された「Atlassian Summit」のキーノートで語られた同社製品ロードマップの内容を紹介するセッション、そして日本のユーザー代表らによるセッションだった。またイベント後半では同社のカルチャーを見せてくれた。本稿では、内容の一部を紹介する。
イベント内容を報告する前に、同社の主な製品群を確認しておこう。「JIRA」はその対象ユーザーごとに独立する製品群となった。「JIRA Software」はソフトウエア開発プロジェクト管理ツールで、バグトラッキングなど開発者が日常的に利用する機能を備えている。「JIRA Service Desk」はサポート業務を想定したツールで、ユーザーとサービスデスクのコラボレーションに活用する。「JIRA Core」は非IT部門向けのタスク管理ツールだ。「Confluence」は、チーム内でコンテンツ(開発ドキュメントなど)を作成、共有する。「HipChat」は企業とチームのためのグループチャットツールである。
イベントの前半では、同社テクニカルマーケティングマネージャーの新村剛史氏が製品ロードマップを突っ込んで紹介した。
アトラシアン製品は、世界中で5万社の有償ユーザーを抱えている。さらに無償版を合計すると37万5000社となる。人数にして500万人が利用している。
同社は、社会への還元を重視するカルチャーを持っている。非営利団体向けには無償ライセンスを提供しており、総数で3万4000のコミュニティが利用中とのことだ。また25万人の子どもに奨学金を出している。株や製品、社員の労働時間の1%を社会貢献に当てる「Pledge 1%」と呼ぶ取り組みも進めている。同社自体の労働環境も良好で、「働きやすい会社」のランキングでは全米では「1000人以下の企業」部門で2位、オーストラリアでは「全ての事業規模」で1位の地位を獲得している。
新村氏は、同社製品群の最近の改善と今後の予定について、【1】パフォーマンス、【2】シンプリシティ、【3】スケール、【4】モバイル、【5】インテグレーションのそれぞれの軸から説明した。
【1】のパフォーマンスが真っ先に取り上げられていることから分かるように、同社は性能改善に積極的に取り組んでいる。JIRA Software、Confluenceはそれぞれ最近のバージョンアップで2倍の性能向上を果たした。またConfluenceは1秒当たりリクエスト数で5倍と大幅にレスポンスを向上している。HipChatも4倍に性能を向上させた。
【2】のシンプリシティについては、JIRAの製品構成をユーザーごとに独立する製品とすることで、アドオンの影響でメニューの場所がバラバラだったのを整理し、「サイドバー」に機能を集約。対象ユーザーごとにシンプルで一貫性があるナビゲーションを可能とした。また、チケットのフィールドもそれぞれのユーザーに最適化している。
【3】のスケールは、同社製品のクラウドサービスである「データセンター版」の取り組みが中心となる。例えばJIRA Service Deskのデータセンター版の活用でパフォーマンス向上が期待できる上、オンプレミス版のプラグインの大半が適用可能だ。
【4】のモバイル分野には、ここ1年で積極的に投資してきた。まず、リアルタイムコラボレーションツールHipChatのiOS版、Android版を製品化した。Apple Watch、Android Wear、タブレットへの対応も進めている。今後は、JIRAとConfluenceのモバイル対応を進める。まもなくベータテストを開始する予定ということだ。
【5】のインテグレーションは、同社の複数の製品をまたがって業務を進める場合の効率を向上させる取り組みが中心だ。HipChat Connectは、さまざまなツールと連携できる製品である。
続いて新村氏は、ターゲットユーザー別に各製品のハイライトやロードマップを説明していった。
ソフトウエア開発チーム向けのJIRA Softwareには、必要となる情報にすぐにアクセスできる「プロジェクトショートカット」を設けた。ワンクリックで他のツールに到達できる。開発の現場では、プロジェクト管理のJIRA Softwareと、仕様書などコンテンツを管理するConfluenceの間を何度も行ったり来たりすることになる。こうした連携をより素早く行えるようにする。
Confluenceの次のバージョンでは「ソフトウェアスペース」と呼ぶ新たな機能を追加し、JIRA Softwareで管理するプロジェクトとひも付ける形で新たな「スペース」を作ることができる。JIRA Softwareが管理するプロジェクトの進捗(しんちょく)状況を、Confluenceを使い開発プロジェクトメンバー以外にも共有することが可能となる。
ITチーム(サービスデスク)向けの製品JIRA Service Deskは、リリース以来2年で1万5000以上のチームで利用されている。新村氏は「トラブルの80%は変更に起因する」との調査結果を示し、変更履歴管理の重要さを説明した。そのための機能強化として、JIRA Service Deskでは「Linked Issue」と呼ぶ機能を追加する予定だ。「ITチームとソフトウエア開発チームは異なる速度で動いているが、その同期をツールがサポートする」(新村氏)。
Confluenceもリアルタイムコラボレーションの機能を強化しつつある。次のバージョンで実装される機能として、2人が同時に同じドキュメントを編集できるようにする。デモンストレーションでは、1画面に入力カーソルが2カ所に表示されてドキュメントを作成する様子を見せた。同社は「素早く物事を決定する」方向に向けた機能強化を進めている。
最近、企業内チャットツールから各種機能を呼び出せたり、逆にチャットで各種通知を見たりすることができるようにする「チャットbot」を連携させる動き「ChatOps」が広がっているが、同社のチャットツールHipChatでも各種ツールの連携も進める。サーバー監視ツールとの連携や、「インシデントに特化したチャットルームの作成」など、「さまざまな業務をHipChat内で完結する」形で使えるようにする。
同社は非IT部門、例えば営業、総務、人事、経理といったビジネス部門へのコラボレーションツールの展開を図っている。「アトラシアンのJIRAユーザーの3分の1は非IT部門」だという。
同社の非IT部門向けのツールがJIRA Coreだ。タスクマネジメント、プロセスデザイン、プロジェクトマネジメントのために活用できる。ソフトウエア開発チーム向けツールで蓄積した知見は、非IT部門にも有効だというわけだ。従来のJIRAのテンプレートを使うこともできる。今後、現在はJIRA Softwareだけで利用できる機能「タスクボード」を、JIRA Coreでも使えるようにする予定だ。
イベントの後半、同社のエバンジェリスト長沢智治氏が、アトラシアン社員有志が個人的に開催するイベントである「アトラシアン倶楽部」の紹介を行った。この12月11日に、「女子限定、お料理ハッカソン」を実施する。また、12月14日には、「仮面ライダーLT(ライトニングトークス)対戦」を実施する。後者の主催は「仮面ライダー」シリーズの重度のファンである長沢氏である。
長沢氏は「うちの社員はいろいろな特技を持っているので、それを中心にイベントをやります」と、今後も意表を突く企画が登場することを匂わせた。また、アトラシアンのWebサイトでは、「アジャイル開発」「Gitチュートリアル」など各種の技術コンテンツを翻訳掲載していることも触れた。
懇親会では、アトラシアン日本法人の代表取締役社長であるスチュアート・ハリントン氏が、流ちょうな日本語を駆使してスピーチを行った。ハリントン氏は、30年前に68000プロセッサーを64個並べた並列計算機とスーパーコンピューターを競わせる研究を行った経験がある。「当時でも並列計算が優位だった。そして人間も、ノーベル賞受賞者1人と“一般ピープル”のチームとでは、後者の方が強いと思う」。チームの生産性を高めるためのツールが、アトラシアンの製品群というわけである。
ハリントン氏は「日本オフィスでも、働きやすい会社として賞を取りたい。横浜市中区の中だけでいいから」と笑いを取る。そして、懇親会ではJIRAをDJツールに変身させるプラグイン「DJ Kanban」が放つサウンドが響き渡る。こうしたカジュアルで活気がある雰囲気の中、アトラシアンのユーザーらが集う夜は更けていった。
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提供:アトラシアン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2015年12月31日