SPARC/Solarisの“新発見”を紹介する「SPARC/Solaris World」。今回は、Oracle SuperCluster M7とZero Data Loss Recovery Applianceをご採用いただいた日本ペイントホールディングスさまをご紹介します。日本ペイントHDさまでは、どのような課題があってこれらを採用し、どのようなメリットを得られているのでしょうか。
こんにちは。日本オラクルの吉田千華(よしだちか:写真左)と松崎穂波(まつざきほなみ:写真右)です。
今回は、Oracle SuperCluster M7(以下、SuperCluster)とZero Data Loss Recovery Appliance(以下、Recovery Appliance)をご採用いただいた日本ペイントホールディングス(以下、日本ペイントHD)さまをご紹介します。
日本ペイントHDさまでは、どのような課題があって、SuperClusterとRecovery Applianceを採用し、どのようなメリットを得られているのでしょうか。日本ペイントHDの神原謙一さまと、システム導入に関わったSCSKの池田純一さま、および麻哲也さまにお話を伺いました。
――日本ペイントHDさまは積極的に海外展開をされていて新聞などでも取り上げられていますが、日本ペイントHDさまの概要についてお聞かせいただけますでしょうか。
神原氏 日本ペイントHDは、1881年に創業した130年以上の歴史を持つ日本初の塗料メーカーです。われわれは、国内で唯一、塗料とファインケミカルである表面処理を総合的に扱い、幅広い技術やサービスをワンストップで提供してきました。
2014年には、各事業領域の責任を明確にし、地域や事業の成長モデルに応じたポートフォリオ経営を行うことを企図して持ち株会社体制に移行して、日本ペイントホールディングスを設立しています。また、国内だけではなく、アジアを中心とした海外展開も30年以上行っており、北米や欧州も含めたグローバル競争における存在感を強めています。
――2016年にSuperClusterの導入を検討し、バックアップシステムとしてRecovery Applianceを採用して、2017年1月には本番稼働しているとお聞きしていますが、どのような課題があって、システム導入を検討されたのでしょうか。
神原氏 これまでは、旧日本ペイント本体と一部の子会社のシステムを統合していましたが、2014年のホールディングス化に伴い、他の子会社の基幹システムや会計システムをまとめる必要があり、システムのボリュームが非常に大きくなることが予想されていました。
また、これまで以上に海外との連携を進めていく必要が出てくる中で、時差などの問題から、メンテナンスのためにシステムを長い時間停止させることも難しくなってきています。DBサーバのリプレイスのタイミングで、今後のことを考えたインフラを構築する必要があり、スケーラビリティや柔軟性の高さからSuperClusterを採用しました。
――SuperClusterに注目された理由と経緯について、もう少し教えていただけますでしょうか。
神原氏 以前は、SPARC Enterprise M4000やSPARC Enterprise M3000を使っており、Oracle Exadataなどのエンジニアドシステムに統合できないかと考えていました。そのときに、オラクルのセミナーでT5世代のSuperClusterの存在を知り、非常に興味を惹かれました。SuperClusterであれば、Solarisの仮想化環境を使え、Exadataの機能をフルに使えて、全てを集約できると考えました。
検証センターでT5のテストを行い、必要なものがワンパッケージで提供されてパフォーマンスに不安がなく、柔軟性に優れているという確信を持ちながらサーバ入れ替えのタイミングを探っていたときに、Oracle SuperCluster M7が登場し、検証した上で採用しています。われわれにとっては、SPARCサーバの信頼性とSolarisの仮想環境が使いやすいことを知っていて継続して使いたいと思っていましたし、さらにExadataの機能も使いたいと考えたときにSuperClusterに比するものはなく、従来通りアプリケーションサーバとデータベースサーバを分けて考えるか、SuperClusterにするかという考え方しかありませんでした。
池田氏 日本ペイントHDさまは以前からSPARCユーザーであり、アプリケーションも含めたSPARCシステムを1つにまとめられることが大きな魅力でしたね。上から下までの全てをオラクルが設計しているため、個別のハードウェアを組み合わせて起きてしまうトラブルのリスクを回避でき、内部を高速なInfiniBandでつながれて、パフォーマンスの高さも保障してくれています。
インフラを企画・設計する立場から考えれば、「システム構築で考慮しなければならないポイントを減らせる」というメリットがあり、コスト的にも同じ構成のサーバとストレージをInfiniBandでつなぎ、相性のテストまで行うことを考えれば、大きなメリットがあると思っています。
――今回構築したSuperClusterでは、どのようなアプリケーションを使っているのでしょうか。
池田氏 3台のSPARC Enterprise M4000と1台のSPARC Enterprise M3000を含めた5台のデータベースサーバをSuperClusterに集約し、5台に分散していた仮想化環境のアプリケーションサーバや、大型ストレージもSuperClusterに集約しています。Java・Oracle WebLogicで構築された基幹システム(販売、物流、生産管理など)を統合し、SAP会計システム用のデータベースの全てがSuperClusterに集約された形です。総容量は、現状で3TB程度ですが、さまざまな子会社のシステムを統合していくので、今後は利用する容量が増えることになります。
――導入スケジュールについて教えてください。また、検証する中でスマートスキャンやクエリーオフロード、Software in Silicon(ソフトウェアインシリコン)といった機能について、どのように評価していったのでしょうか。
池田氏 2016年の年明けから検証作業を始め、5月くらいに採用を決定しています。7月くらいからセットアップを行い、10月にはSAP用のデータベースの移行を完了して、基幹システムの移行を2017年1月に完了しカットオーバーしています。
麻氏 今回の導入では設置から運用までSCSKで担当しました。新しい製品や技術であるため、使い慣れておらず、苦労したり、時間がかかったりした部分も正直ありました。しかし、オラクルのサポートもありスケジュール通りに移行できたことは評価していただけていると感じています。
検証は、東京・青山のオラクル本社に2週間行ってみっちり行い、非常に内容の濃い評価ができたと思います。以前の処理の700倍という高い検証結果が出たことも、日本ペイントHDさまに安心してご利用いただけると判断できた要因の1つですね。
神原氏 スマートスキャンやクエリーオフロードなどのExadata Storage Server独自の機能や、SPARC M7プロセッサのソフトウェアインシリコンなどの機能も魅力で、採用理由の1つとなったことは間違いありません。実処理性能の評価中心でしたので、どの機能がどれだけの効果を出しているかなどの細かな部分は分かりませんが、検証段階で実際に自分たちが使っているデータを持ち込み、10倍から20倍の差が出ていることを確かめられたのは、非常に良かったと思います。
――SuperCluster M7で統合的にセキュアな環境を作れるということも、選定理由に入っていたのでしょうか。
池田氏 SuperClusterのセキュリティ機能を、明確な選定の評価項目としていたわけではありません。しかし、セミナーなどで、ソフトウェアレベルやハードウェアレベルでのセキュリティをオラクルが担保していることは分かっていたので、安心できると考えています。
また、SuperClusterに集約したことで、Oracle Enterprise Manager上でシステム全体を統合的に運用・監視できるようになったことも運用コスト削減に大きく貢献できると考えています。これまでは、CLIで分散されたシステムを運用・監視していたわけですから。統制への対応やコンプライアンスの自動化などの機能については、今後の検討項目として日本ペイントHDさまに提案していきたいですね。
――導入後、パフォーマンスに関して、どのように評価されていますか。
麻氏 SuperClusterの性能を全て引き出している状態ではないため、今後さらにチューニングすることでさらなるパフォーマンスを得られることを期待しています。現状でも、大量のデータを読み込むことに対してプロセッサの性能だけではなくシステムとしてのパフォーマンスの高さを感じています。例えば、これまではSAPで1回当たり20件くらいのレコードしか返って来なかったのが、200件単位くらいでレコードが返ってくるようになっています。
また、これまではアプリケーションサーバとデータベースサーバで分かれていたので、イーサネットのスピードに性能が左右されていましたが、SuperClusterでは内部のInfiniBandでつながっていることも高速化に貢献していると思います。今でこそ、10Gbpsといった規格が出てきていますが、残念ながらデータセンターはまだ10Gbpsが整備されていない状態であるため、大きな差が出ていると思いますね。今後データが増えてくることで、パフォーマンスのメリットはより大きくなるはずなので、将来的には、全てのアプリケーションをSuperClusterに載せていくことも考えています。
――今回Recovery Applianceも導入されていますが、どのように使われているのでしょうか?
神原氏 今まではストレージが持つ機能を利用したバックアップを行っていましたが、Recovery Applianceによる継続的なリアルタイムバックアップシステムを構築しました。リアルタイムにバックアップが行われ、リカバリが担保されるので非常に安心感があります。
麻氏 バックアップだけではなく、システムの開発期間が短縮されるようになったことも、大きな利点といえます。今までは日本ペイントHD社内のプログラム開発チームに、本番データによるデータベース環境を提供するのに数日かかっていましたが、Recovery Applianceにより迅速に提供することが可能になりました。
――今後の展開について教えてください。
神原氏 2017年中は、子会社のシステムをSuperClusterに統合していく作業を進めていきます。また、塗料開発などの技術系システムも2017年中に統合させていきたいと考えており、基本的にOracle Databaseを利用するアプリケーションは全てSuperClusterに統合していくことを計画しています。
In-memoryについては、テストも行い、パフォーマンスが高いことも分かっているので、ターゲットを絞ってどのように活用していくかを検討していきたいですね。Enterprise Managerの機能ももっと使いこなし、運用の軽減も考えていくなど、今回のシステムに対してはさまざまな期待があります。
池田氏 日本ペイントさまは、常に新しいテクノロジーを検討されていて、より良いシステムを追求されている数少ないお客さまです。また、われわれとリスクを共有していただいて一歩踏み込んだアプローチに挑戦し、成果を出させてもらっています。今後は、新しいシステムの可能性をさらに検討し、いろいろ業務提案していきたいと思っています。
神原氏 SCSKは、オラクルの製品にどのような機能があって、それがどのような課題解決につながるかを理解し、われわれに提案してくれています。オラクルも、今後信頼できる製品を作り続け、新たな技術を市場に投入してくれると信じていますが、「それらの技術によって、われわれがどのようなメリットを得られるのか」といったアイデアの元となる情報を積極的に発信してほしいと考えています。
吉田 米国オラクルのSAPアカウント担当 バイスプレジデントであるゲルハルト・カップラーさんは、SAPのお客さまがSuperClusterを選ぶ理由として、1つのシステム上でSAPの環境と高速なデータベース環境を統合できること、SPARC M7の基本性能が高く、ビジネス環境の変化に迅速に対応できるプライベートクラウド環境を構築できること、そしてセキュリティレベルが高いことも挙げていました(参考:SPARC/SolarisやSuperClusterが、SAPに最適な理由とは何ですか?)。今回、実際に使われているお客さまのお話を伺って、あらためてSuperClusterとOracle Databaseの機能の高さを実感できました。
松崎 日本ペイントHDさまは、複数の子会社を統合する中で、SuperClusterを統合インフラ基盤として採用し、パフォーマンスと信頼性、スケーラビリティといった多くのメリットを実現しています。Javaで構築された基幹システムとWebLogicによるアプリケーションサーバやSAPだけではなく、Oracle Databaseを使うさまざまなアプリケーションをSuperClusterに統合し、優れたバックアップソリューションであるRecovery Applianceと組み合わせることで、運用負荷の低い高パフォーマンスなインフラが構築できることを、この事例で知ることができました。
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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2017年5月2日
日本オラクル入社2年目の吉田千華(よしだ ちか:写真左)と松崎穂波(まつざき ほなみ:写真右)です。クラウド・システムの営業部で日々業界のことや技術のことを勉強中です。 最近では、お客さまのもとにうかがってお話を聞く中でSPARC/Solarisの面白さを発見することもしばしば。このコーナーでは、私たちがお客さまにうかがったSPARC/Solarisの“新発見”を記事で紹介していきます。「SPARC/Solarisの魅力」をたっぷりお届けします!
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