オラクルテクノロジーの最新動向をざっくばらんな雰囲気の中で共有できる人気イベント「Oracle Database Technology Night(テック・ナイト)」。2017年10月13日の開催回では、国内でも着実に導入企業が増えつつある「Oracle Cloud」の魅力がたっぷりと紹介された。本稿ではそのダイジェストと受講者の感想を紹介しよう。
Oracle Databaseをはじめ、オラクルテクノロジーの最新動向や運用ノウハウを提供する「Oracle Database Technology Night(テック・ナイト)」をご存じだろうか。軽いおつまみや飲み物を片手にユーザー同士が情報交換する場でもあり、毎回多くの来場者を集めている。2017年10月13日に開催された第14回のテック・ナイトでは、東京・オラクル本社会場の他、札幌から福岡まで全国5つのサテライト会場も設置。総勢130人が受講する大盛況となった。
今回のテーマは、ずばり「Oracle Cloud」。日本オラクル公認のYoutuber「ゆっきー」としても活躍するクラウド・テクノロジー事業統括 Cloud Platformソリューション本部 Databaseソリューション部の高橋敏行氏が登壇し、「Oracle Cloudでデータベースを使ってみよう〜明日から使えるデータベース・クラウド環境〜」と題して、Oracle Cloudと、Oracle CloudのPaaSサービスの1つである「Oracle Database Cloud Service」の特徴を解説した。
ただ、Oracle Cloudの国内におけるプレゼンスは正直、まだこれからという段階だ。高橋氏はOracle Databaseユーザーが多くを数える参加者らに向けて、「Oracle Databaseをそのままクラウドで利用できるOracle Database Cloud Serviceで、デプロイやパッチ適用といった運用管理作業が楽になり、“見えないコスト”を大幅に削減できる」と訴えたが、会場はどのように受け止めたのだろうか。当日のポイントをお伝えしよう。
ひと口に「Oracle Cloud」といっても、IaaS、PaaS、SaaSを取りそろえ、包括的なラインアップを用意している。Oracle OpenWorldなどの機会を捉えては、新たなリージョンタイプやメニューが次々と追加され続けている点も特徴だ。
「端的に言って、Oracle Cloudには3つの魅力がある。最大のポイントは、オンプレミス環境との互換性だ。多くのお客さまにOracle Databaseをオンプレミスで使っていただいているが、クラウド上ではそのまま使えないことも多い。それがOracle Cloudならそのまま動かせる。オンプレミスとクラウドで全く同じアーキテクチャを採り、同じバイナリが動いているため、オンプレミスで培った知識、ノウハウをそのまま生かすことができる」
2つ目はクラウドならではのコストの低さだ。「『Oracleって、コストはどうなの?』と聞かれることも多いが、Oracle Cloudは圧倒的に安いコストで提供できる」という。3つ目はセキュリティだ。例えばOracle Databaseが備えてきたセキュリティ機能をデフォルトでオンにする「Always-On」ポリシーを採用し、通信経路のみならずデータを全て暗号化する。「Transparent Data Encryption(TDE)」技術によって、クラウド上でもオンプレミス同様にパフォーマンスに影響を与えずセキュリティを両立できることもメリットだという。
ではPaaSサービス、「Oracle Database Cloud Service」はどのようなサービスなのか? まず同サービスは規模や求める性能に応じて、「Standard Edition」「Enterprise Edition」「High Performance」「Extreme Performance」という4つのエディション、定額制と従量制の2つのサブスクリプションモデルを選択できるようになっている。
また、データベース構築済みの仮想マシン環境である「Automated」という管理レベルが用意され、ユーザー企業の管理負荷を大幅に低減する配慮がなされている点がポイントだ。
具体的には、バックアップ・リストアやパッチ適用、アップグレードなどの管理作業を自動化するツール類をオラクルが提供する。これによって管理作業の負荷や難易度を大幅に下げることができる。また「Oracle Database Cloud Serviceでは、ユーザー企業自身が仮想OS上に管理者権限でアクセスできる――つまりOSに入れるため、本当にオンプレミスに近い使い方が可能になる点も特徴だ」という。
「Oracle Database Cloud Serviceは、バックアップやパッチ当てといった『結構大変だけれど、やらなくてはいけない作業』を大幅に楽にしてくれる。これにより、従量課金制による直接的なコスト削減効果だけではなく、潜在的な“見えない管理コスト”も削減できる、まさにIaaSとPaaSのいいとこ取りをしたサービスだ。2017年9月にスタートした『Bring Your Own License』(※1)や『Universal Credits』(※2)といった新しいライセンス体系も相まって、利用要件や自社の状況、やりたいことに合わせて柔軟にサービスを選択していただける」
※1:Bring Your Own License:オンプレミスでの既存のソフトウェアライセンスをOracle IaaSに加え、「Oracle Database Cloud Service」「Oracle Middleware」「Oracle Analytics」をはじめとするOracle PaaSに持ち込めるライセンス体系
※2:Universal Credits:シンプルな契約を1つ結ぶだけで、「Oracle Cloud」から「Oracle Cloud at Customer」まで、今後発表される新サービスも含めてOracleのPaaSおよびIaaSのあらゆるサービスを無制限に利用できる体系
続けて高橋氏は、Oracle Database Cloud Serviceによって得られる6つのメリットを紹介した。インフラの管理が不要になるというIaaSならではの利点に加え、「デプロイ」「運用監視」「高可用性」「セキュリティ」「クローン」「パッチ」、それぞれの作業が大幅に楽になり、高いサービスレベルが実現できるという。特に強調したのはデプロイの容易さだ。
「正直に言うと、データベースを作成するのは大変だし、専門知識も必要だった。それがOracle Database Cloud Serviceでは、データベースにさほど詳しくなくても構築できる」
高橋氏は、実際にOracle Cloudにアクセスしてデモを披露。料金体系やサービス要件などいくつかの項目を選択・入力するだけで、30分もあれば構成が完了した状態でデータベースが立ち上がる様子を紹介した。
高可用性を実現する「Oracle Real Application Clusters」(Oracle RAC)をすぐに使える状態で構成することも可能で、「あるお客さまでは、オンプレミスで212時間かかっていたRAC構築作業を、たった2時間で実現できた」という。
2つ目の運用監視については、Oracle Database Cloud Serviceが複数の運用監視ツールを提供している点を挙げた。1つは、クラウドサービスのみで提供されるモニタリングツール「DBaaS Monitor」で、「インスタンスに標準で構成されるツールで、シンプルな画面上に必要最小限の情報が表示される」。
また、オンプレミスでのデータベース監視に広く用いられている「Enterprise Manager」の簡易版「EM Express」も用意されており、パフォーマンス監視やチューニング、SQL監視など、オンプレミスと遜色のない管理機能を利用できる。
実際にDBaaS Monitorを立ち上げてのデモも行われた。高橋氏自ら、「非常にシンプルで、あまりオラクルらしくないクラウドっぽいインタフェース」と表現するほど、非常にシンプルな管理画面のツールだが、OSインスタンスやデータベースの状態、データ使用量などを把握し、起動・停止などの操作を行うには十分なUIとなっている。メニューから「クローン」を選ぶだけでデータベースのクローニングも行え、高橋氏は「コマンドを1回も打つことなくクローンが作成できる」とデモで実証してみせた。
一方、EM Expressのデモでは、慣れたインタフェースでパフォーマンスを監視し、リアルタイムにSQLをキャプチャし、チューニングをかけられる様子を実現。データベース管理者が安心して利用できることを説明した。
このようにOracle Database Cloud Serviceでは、デプロイが容易で、オンプレミスと変わらない運用監視機能を標準で利用できる他、Oracle RAC構成やベストプラクティスに基づいたバックアップによる高可用性の確保、暗号化による高セキュリティの実現、容易なクローニング、サービスコンソール画面を通じた柔軟なパッチ適用といった数多くの利点がある。これらのポイントを活用することで「見えない管理コストを大きく下げられる」というわけだ。
「Oracle Cloudはどんどん変わっている。ブログなどを通じて最新情報を提供しているので、ぜひチェックしていただきたい。触ってみなければ分からない部分はトライアルを活用してほしい」
参考リンク:Oracle Cloud 無料トライアル
事実、米オラクルは先日開催されたOracle OpenWorld 2017において、世界初の自律的データベース「Oracle Database 18c」を発表している。こうした新たな技術とOracle Cloudが組み合わさることによって、データベースの世界における「自動運転」が実現される日も遠くないかもしれない。
さて、以上のような高橋氏のプレゼンを会場は一体どのように受け止めたのだろうか? プログラム終了後、参加者らに感想を聞いてみたところ、返ってきたのは好意的な意見ばかりだった。
「社内でもまだ知っている人は少ないが、オンプレミスでOracle Databaseを使っている立場としては取っ付きやすく、そのまま使えるのは大きな魅力だ」――ある参加者はこのようにコメントした。クラウドもオンプレミスと全く同じアーキテクチャを採用していることは、移行のしやすさはもちろん、クラウドに合わせて新たな運用スタイルを習得する必要もない点で、非常にメリットが大きいようだ。むしろ運用が簡単になる点は、スキル・リソース不足に悩む企業にとって朗報といえるのではないだろうか。
一方、昨今はAmazon Web Services(AWS)をはじめ、Microsoft AzureやGoogle Cloud Platformという選択肢もある。「そうした中でOracle Cloudを積極的に選ぶべき理由があるとすれば何でしょうか?」という、やや意地悪な質問もしてみたのだが、「社内ITシステムの一部で既にAWSやMicrosoft Azureを採用している企業は少なくないが、基幹システムを担うデータベースのプラットフォームとなると、やはり話は別。Oracle DatabaseにJavaやWebLogicを組み合わせた基盤としては、やはりOracle Cloudが最適ではないかと感じた」という声もあった。
さらに、高橋氏が紹介したような「開発・検証環境としてのOracle Cloudに期待する」という来場者もいた。「現状では、テスト環境の構築に費用も時間もかかっている。その辺りの環境をクラウドに持っていって簡単に構築できるようになれば非常にうれしいし、ぜひとも検討したい」との声も。中には、「パフォーマンス面で問題がないことが分かれば、徐々に本番環境に移行することも視野に入れたい」というユーザーもいたほどだ。
ただし、感想を聞いたほぼ全員が異口同音に口にしていたのが「せっかくよくできているのにもったいない」といった言葉。「後は認知度向上に期待したいですね」――。
“知られざるOracle Cloudの魅力”が伝わったであろうテック・ナイト。Oracle Cloudにはまだまだ知られていないであろう魅力が眠っている。次回はぜひあなたも参加してはいかがだろう。あるいは、今すぐトライアル版を試してみるのもいいだろう。まさに今、貴社が抱えている課題解決の方法が、思いがけず簡単に見つかるかもしれない。
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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2017年12月13日