日本生命保険が、40年以上にわたりIBMメインフレームを活用し、最新モデル「IBM z14」を採用した理由最新技術の積極的な活用が、コスト削減やビジネスの成長につながる

日本生命保険は40年以上にわたりIBMメインフレーム活用してきた。40年の間でどのような課題があり、IBMメインフレームがどう解決してきたのか。そして、このたび、最新モデルである「IBM z14」を採用したという。本稿では、その理由と今後のIT活用の展望について、日本生命のITを支えるニッセイ情報テクノロジーと日本IBMに聞いた。

» 2017年12月14日 10時00分 公開
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 日本生命保険相互会社(以下、日本生命)は40年以上にわたりIBMメインフレーム活用してきた。40年の間でどのような課題があり、IBMメインフレームがどう解決してきたのか。そして、このたび、最新モデルである「IBM z14」を採用したという。本稿では、その理由と今後のIT活用の展望について、日本生命のITを支えるニッセイ情報テクノロジー株式会社(以下、ニッセイ情報テクノロジー)と日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)に聞いた。

生命保険の業務では、顧客との長期の契約を安定的に維持管理していく必要がある

ニッセイ情報テクノロジー株式会社
システム運用事業部 センター運用推進ブロック チーフマネージャー
舘山豊氏

 日本生命では、保険業務の基幹系システムを支えるインフラとして、40年以上にわたってIBMメインフレームを活用してきた。同社が基幹系システムのインフラにIBMメインフレームを選び、使い続けてきた背景について、ニッセイ情報テクノロジーの舘山豊氏は次のように語る。

 「生命保険の業務では、顧客との長期の契約を安定的に維持管理していく必要がある。その業務を支える基幹系システムのインフラには、変わらぬ安心、安定性、堅牢性といった要件が求められる。IBMメインフレームは、この要件を満たすものだった。また、もう1つのポイントとして、保険業務では、保険料計算や支払い処理での複雑な計算を、迅速かつ安定して実行できることも重要になる。この点でも、IBMメインフレームの高性能が最大限に発揮されている」

 もちろん、40年の間で、経営環境の変化やITの進展に応じて、IBMメインフレーム自体も新たな機能を取り込み、進化してきている。日本IBMの岩出幸司氏は次のように述べる。

 「IBMメインフレームは、お客さまの業務やITの変化を常に先取りし、先進のテクノロジーを実装することで、時代とともに変化する顧客の課題解決に貢献している。日本生命さまにおいては、導入当初は基幹系システムの安定性を担保するインフラとしてIBMメインフレームを活用されてきたが、近年はマイナンバー制度の開始やセキュリティ脅威の増加を受け、よりデータ保護の要件レベルが高くなり、高セキュリティ基盤としての位置付けも大きくなっている」

 実際に、日本生命では、2010年に新本番センターを開設。2015年には、バックアップシステムのレベル向上とともにIBMメインフレーム上でマイナンバー対応を実施済みだ。

契約者サービス継続のためにバックアップシステムのレベルを向上

日本アイ・ビー・エム株式会社
GBS事業本部 金融・郵政グループサービス事業部
保険アカウントデリバリー コンサルティングITスペシャリスト
岩出幸司氏

 バックアップレベルの向上を実施した背景について、舘山氏はこう語る。

 「2011年の東日本大震災の発生を受けて、社会的にBCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)強化への機運が高まる中で、日本生命さまにおいても災害時における基幹系システムの可用性をさらに強化する必要があった。お客さまサービスの継続性を保つために課題となったのは、被災時にバックアップシステムを迅速に立ち上げ、スムーズに業務を再開すること。特に、データの最新性が大きな課題だった」

 この課題を解決するために、日本IBMでは、IBMメインフレームおよびグローバル・ミラーとGDPS(広域分散並列シスプレックス)によるソリューションを提案し、データロス時間(RPO)とシステム立ち上げ時間(RTO)の短縮を実現した。具体的には、本番環境のデータを非同期でバックアップシステムに伝送するグローバル・ミラーにより、データの随時反映を可能にすることでデータロス時間(RPO)を短縮。さらに、コピーデータの管理とシステム復旧の自動化を支援するGDPSによって、RTOを大幅に短縮している。

マイナンバー対応の課題に対して、ハードウェア暗号化機構で高度なセキュリティを実装

ニッセイ情報テクノロジー株式会社
システム運用事業部 センター運用推進ブロック 上席スペシャリスト
大八木文人氏

 一方、マイナンバーへの対応について、ニッセイ情報テクノロジーの大八木文人氏は「業界全体でマイナンバー対応が遅れていたこともあり、当社でも約1年という短期間でのシステム開発が迫られた。さらに、開発に当たっては、基幹系システムのデータと連携しつつ、マイナンバーを扱う高度なセキュリティを実装することが求められた」と振り返る。

 そこで、一からシステム開発を行うのではなく、既存のIBMメインフレームを生かしながらマイナンバー対応の基盤を構築することで、システム開発期間を短縮するとともに、基幹系システムとのデータ連携を実現した。さらに、このIBMメインフレーム基盤上に、ハードウェア暗号化機構のCrypto Expressを実装。「マイナンバー対応システムに要求される高度なセキュリティ要件に対応した」(岩出氏)

IBM z14を採用した理由

 現在、日本生命と日本IBMでは、次年度以降に計画されている本番センター移転も含めた大規模プロジェクトに向けて、新たな基盤ロードマップの策定に取り組んでいるという。そして、このプロジェクトの一環として、災害対策用システムに最新のIBMメインフレーム「IBM z14」を採用することを決定した。IBM z14の採用は、国内の金融機関では初となり、2018年5月から前述のGDPSと組み合わせて運用を開始する予定だ。

 「本番センターの移転については、以前から具体的な検討を行っており、日本IBMにも、このプロジェクトに参画していただいている。既にサーバの移転は順次進めているが、最大のポイントが2018年5月に計画している本番システムとして利用している既存メインフレームの移転、および新たな災害対策用のシステムとしてIBM z14を導入することだ」(舘山氏)

 今回、IBM z14を採用した理由については、「変わらぬ堅牢性」「下位互換によるデータの保全性」「高度なセキュリティ機能」「オープン系システムとの接続性」を挙げる。

 この中でも特に重要視したのが「高度なセキュリティ機能」だ。「IBM z14は、ハードウェアとOSが連携し、ファイルからデータベースまで、システム上のあらゆるデータを暗号化することができる。また、暗号化キーはハードウェアによって保護されているため、外部からのサイバー攻撃も防御できる。今後、顧客からのセキュリティ対策への要求はさらに強まることは確実で、外部脅威にも内部脅威にも対応できる全方位型暗号化機能が採用の決め手になった」(舘山氏)

IBM z14の「全方位型暗号化」機能の特徴

 また、今後のプロジェクトでは、本番センターのIBMメインフレームのリニューアルも計画しており、まずは、災害対策用システムとしてIBM z14を活用し、この実績を踏まえて本番センターのメインフレームにIBM z14を採用することも検討していく。舘山氏は「将来的な本番センターでの導入を見据えた布石としての意味合いもある」と強調した。

今後もIBMメインフレームをベースにしたインフラ基盤を進化させていく

 今後のIBMメインフレームの方向性を踏まえ、日本IBMの中川雅也氏は、「オンプレミスの基幹システムとクラウドをAPIで連携するハイブリッド・クラウド環境を提案していく」と語る。

日本アイ・ビー・エム株式会社
金融・郵政システム事業部テクノロジー&ソリューションズ シニアITスペシャリスト
中川雅也氏

 「デジタルサービスへの流れが加速する中で、ユーザー・エクスペリエンスを提供するシステム基盤としてのクラウドとの連携が今後は重要になってくる。その1つのアプローチとしてハイブリッド・クラウド環境を整備すれば、メインフレーム上のデータへのアクセスをAPI化することによって、安全かつ容易に基幹データをクラウド上で利用できるようになる。APIを活用するに当たって特別なスキルは必要なく、アプリケーション開発期間も大幅に短縮できる。顧客のニーズが日々変化するデジタル時代、ユーザー・エクスペリエンス重視のシステム変更をクラウド上で迅速に実現できることも大きなメリットだ」

 また中川氏は、機械学習も今後の重要なポイントになると見ている。

 「IBM z14は機械学習の機能も実装可能。メインフレームに蓄積された基幹データを移動させることなく、安全性を確保しながらリアルタイムに分析し、オープンなアプリに活用できる機能を提供していく」

 というのも、データを移動させると、コストがかかり、鮮度やセキュリティ面での不安も増大する。データは「発生した場所」「存在している場所」で分析することが最も効率がよく、理にかなっているためだ。さらに、メインフレーム上でデータ分析することで、「分析結果をそのままビジネスロジックに融合させることができ、リアルタイムにビジネスへの活用が期待できる」

IBMメインフレームを活用した機械学習システムのイメージ

 「従来、基幹システム上で分析処理を実行することは、基幹業務への影響を考えると、とうてい実施できなかったが、ITの進化がそれを可能にした。今後、日本生命さまにもご活用いただけるように積極的にご提案していきたい」(中川氏)

 舘山氏は、今後もメインフレームをベースにしたインフラ基盤を進化させていく意欲を見せた。

 「IBMメインフレームを40年間使ってきたことで、安心で堅牢な基幹システムのインフラに加え、資産保有の最適化によるコスト削減というメリットを享受することができた。システムの安定稼働という意味では、現在のシステムを使い続けていく選択肢もあるが、最新の技術、最新のハードウェア、最新のソフトウェアを積極的に活用することが、業務の収益性向上、コスト削減、さらにはビジネス成長につながっていくと考えている」

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提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2018年2月28日

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