2017年11月30日、都内で東芝メモリの主催イベント「東芝メモリSSDフォーラム2017」が初めて開催された。東芝メモリは最先端のフラッシュメモリ/SSD開発を通じ、どのように“より良い日常”への変革に貢献できるかという点において最新の研究開発や新しい生産体制、今後の展望を披露。“新生”東芝メモリのこれからの飛躍を強く印象付けた。同時に、フラッシュメモリ/SSDについてIDC、Dell EMC、日本マイクロソフトからも講演があったので、併せてその模様をお届けする。
2017年11月30日、都内で東芝メモリの主催イベント「東芝メモリSSDフォーラム2017」が初めて開催された。1987年にNAND型フラッシュメモリを発明し、2017年4月から新会社としてスタートを切った同社。イベントでは、“フラッシュメモリが変革する、個人と企業の日常”をテーマにこれまでの実績を振り返りつつ、東芝メモリが最先端のフラッシュメモリ/SSD開発を通じ、どのように“より良い日常”への変革に貢献できるかという点において最新の研究開発や新しい生産体制、今後の展望を披露。“新生”東芝メモリのこれからの飛躍を強く印象付けた。
同時に、フラッシュメモリ/SSDについてIDC、Dell EMC、日本マイクロソフトからも講演があったので、併せてその模様をお届けする。
第一部の基調講演「“フラッシュメモリ”が変革する、個人と企業の“日常”」には、東芝メモリ 取締役 SSD事業部長の横塚賢志氏と同社 取締役 生産本部長 四日市工場長の松下智治氏が登壇した。人々の生活のあらゆるシーンにITが浸透する中、フラッシュメモリが企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)や人々の日常の変革に重要な意味を持つようになった。講演は、同社がそうした「社会と個人の変革」にどう貢献できるかを解説するものとなった。
横塚氏は、まず東芝メモリの事業概況について、売上高が過去最高の約1兆2000億円(2017年11月9日発表の2017年間見通し)、営業利益が約4194億円(同上)となると紹介した。これは、単独企業として見た場合、国内電機機器メーカーでは営業利益で10位に入る規模だという。設備投資額(発注ベース)は、6000億円に達し、期初計画から2700億円増額されている。旺盛な需要に支えられ、業績も好調だ。
「開発から製造、販売までを一貫して手掛けていることが大きな特長です。四日市には、世界最大級となる66万平方メートルの半導体工場を持ち、米国、欧州、中東、インド、中国、東南アジアというワールドワイドの拠点で研究、開発、営業を行っています」(横塚氏)
東芝メモリの事業の柱は、NAND型フラッシュメモリとSSDの2つ。高速で低遅延、大容量なストレージへのニーズは今後ますます高まっていく。実際、HDDからSSDへの移行は急ピッチで進んでおり、今後は、エンタープライズ市場を中心に大規模移行が見込まれる。SSD導入は、パフォーマンスや容量面だけではなく、データセンターの低騒音化や低消費電力化、TCO最適化などでも高い効果が期待できる。
「フラッシュテクノロジーはあらゆるコンピューティング環境を変化させていきます。東芝メモリは、データ拡大時代の厳しい要求に応える最先端のフラッシュストレージ技術を開発、提供していこうとしています」(横塚氏)
そうした最先端技術の1つが、3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASHTM」だ。3次元フラッシュメモリは、2次元フラッシュメモリと比較して、信頼性(書き換え回数)が約10倍、性能(プログラム速度)が約2倍、消費電力が約半分。積層化によって容量を拡張できることも大きな特長だ。東芝メモリでは、縦方向への積層化を推し進め、2016年には48層、2017年に64層の量産に成功した。今後は96層となるBiCS FLASHを他社に先駆けて量産する計画だ。
また、次の技術への投資も積極的に進めている。まず、コントローラーから開発する強みを生かし、4ビット/セル(QLC)技術を用いた3次元フラッシュメモリ「QLC BiCS FLASH」のプロトタイプ試作を開始。さらに、高速化するホストインタフェースに対応するため、「TSV(Through Silicon Via:シリコーン貫通電極)」と呼ばれる技術を使った3次元フラッシュメモリ「TSV BiCS FLASH」の開発も始めた。
「東芝メモリのアドバンテージは、SSD市場における高い成長率や、NAND型フラッシュメモリを発明した実績と経験、それらに裏付けられた機能と品質、世界最大級のメモリ工場による安定した供給です。これからも企業と個人の生産性を劇的に向上させることに貢献していきます」(横塚氏)
続いて、松下氏が、こうした最先端技術を使って、四日市工場でどうフラッシュメモリが生産されているかを紹介した。
四日市工場が設立されたのは1992年で、1993〜2002年はDRAMの生産拠点として活躍した。そして、サンディスクと合弁でNANDの生産を開始したのが2002年。そこから次々と新棟を建設して生産能力を高め、旺盛な需要に応えてきた。
2005年、2007年、2011年には、それぞれ「Y3棟」「Y4棟」「Y5棟」という新棟での生産を開始させ、さらに2016年には「Y1棟」と「Y3棟」の間に「N-Y2棟」を新設し、生産を開始した。2005年から「Y3棟」で高度自動化を推進し、現在は、4棟を統合した生産システム(CIM:Computer Integrated Manufacturing)を構築している。
「四日市工場の特長の1つは、生産能力を相互補完するために、300mm製造棟の4棟を統合して生産していることです。棟の間を生産ロットが行き来でき、自動搬送の仕組みが備わっています。製造棟内のクリーンルームにも自動搬送機が備えられていて、製造装置から検査装置、搬送装置が生産管理システム(CIM)で高度に制御されています」(松下氏)
この4棟統合の生産システムでは、ビッグデータを活用した効率化が図られている。製造装置や検査装置から収集されるデータは、1日当たり20億件。2014年から、それらを機械学習で分析する取り組みをスタートさせ、2017年に不良解析で実用化した。
「人間では処理し切れないデータ量を、機械学習を使って処理しています。その解析結果はリアルタイムに見える化されていて、生産性、歩留まり、信頼性の向上につなげています。機械学習は今後、生産管理などに拡大していく予定です。ただ、因果関係は巨大で複雑になり、人の判断では難しいケースも数多くあります。そこでAI技術の活用も開始しました」(松下氏)
四日市工場は、従業員6200人が東芝メモリのプロバー社員で、開発部門と密接に連携して生産を行っている。現在は「Y6棟」を建設中であるなど、さらなる生産力の向上や、ITを使った生産の効率化にも余念がない。
最後に、横塚氏が「東芝メモリはSATAからSAS、NVMeTMまでのフルラインアップで提供します。新技術を活用した新製品も積極的に展開していきます。変化、変革を続ける東芝メモリでありたいと思っています」と述べ、基調講演を締めくくった。
続いて、IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ/PCs グループディレクターの森山正秋氏が登壇し、ストレージを中心としたエンタープライズにおける市場動向と将来像を解説した。
森山氏は、まず近年のDXの動向を説明した。IDCの調査結果によると、IT部門はDXに対して「検討中」「実験中」「進行中」が併せて5割に達するのに対し、業務部門は「聞いたことがない」が5割を占めるという。課題については「人材不足」が4割と圧倒的に多い状況だ。
「課題を乗り越え、DXを支えるためには、エンタープライズインフラのトランスフォーメーションが必要です。キーワードは、クラウド、ソフトウェアデファインド、フラッシュ、コンバージェンスの4つです」(森山氏)
その上で、「支出モデル、新技術への対応、ビジネスへの貢献などを基準にして、最適な選択肢を取っていくことが重要です」とアドバイスした。
サーバハードウェアにおけるフラッシュ活用については、Dell EMC インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括 法人営業本部 本部長の瀧谷貴行氏が展望を示した。
x86サーバ出荷台数で大きなシェアを誇るDell EMCは、東芝メモリとの協業の歴史も古く、サーバ購入時には東芝メモリ製SSDを「指名買い」できるなど、他社にはないサービスも提供する。
サーバサイドフラッシュやソフトウェアデファインドストレージ(SDS)技術の進歩により、サーバの在り方が大きく変わってきた。Dell EMCは、幅広いハイパーコンバージドインフラ(HCI)のラインアップと、PowerEdgeサーバを持ち、東芝メモリ製フラッシュメモリ/SSDを活用するさまざまなソリューションを展開することが強みだ。
「モダンなITインフラを維持することは企業の成功要因です。技術進歩のサイクルが速いため、リプレースサイクルを速めるだけでも、パフォーマンスや信頼性を高められます」(瀧谷氏)
続いて、サーバソフトウェアの視点から、日本マイクロソフト エンタープライズサービス事業本部 エンタープライズサービスデリバリーの小塚大介氏が、最新のハードウェアとWindows Server機能を組み合わせることのメリットを紹介した。
小塚氏は、まずWindows Serverの最新機能として、Webベースのサーバ管理ツール「Project Honolulu」を紹介。また、SQL Serverの最新動向として、Linux版とDockerコンテナ版をリリースしたことを紹介した。
さらに、「最近のITで注目されているIoTや機械学習などは、結果的にストレージへの性能要件も高くなり、容量、性能、コストのバランスが課題になります」と指摘。Windows Serverの標準機能でSSDとHDDを組み合わせたハイブリッドストレージによる高いコストパフォーマンスを実現できることや、ネットワーク分散ストレージを実現する「Storage Spaces Direct(S2D)」やS2DとHyper-Vを組み合わせてHCI環境を実現する方法を、デモを交えて紹介した。
「S2Dは、ディスク特性に応じてストレージを使い分けたり、NVMeをキャッシュとして活用して性能を高めたりできます。必要に応じて高性能なフラッシュメモリ/SSDを採用することがポイントです。東芝製メモリが有力な選択肢になります」(小塚氏)
続く第二部講演では「一挙公開 デジタル変革を支えるフラッシュ&SSDテクノロジー」と題し、東芝メモリのエンジニアらが、東芝メモリのフラッシュメモリ/SSDの詳しい技術解説を行った。
最初に登壇した東芝メモリ SSD技師長の柳茂知氏は、フラッシュストレージデバイスが、なぜ“ゲームチェンジャー”になるのかの背景を解説した。
柳氏は、SSDのこれまでの変遷をたどりながら、「黎明(れいめい)期のSAS SSDは、HDDの高速代替品であり、高速で高額、特殊システム用途に限られていました」と指摘。2012〜2016年にはSAS3/SATA SSDが普及し、企業の重要システムに導入される高速ストレージデバイスになった。
「2017年から、SSDは発展期となります。NVMe 1.3、TSV SSD、独自SoC/BGA、PCIe Gen3などの新技術で、企業、個人とITの関係を根本から変革しようとしています。高性能、高密度、低電力という要求に、高いレベルでバランス良く対応できます」(柳氏)
第二部の続きは、記事「TSV、NVMe-oF、MariaDBチューニング――東芝メモリの技術力が起こすフラッシュメモリによる革新」に掲載中なので、そちらをご覧いただきたい。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2018年2月9日