TSV、NVMe-oF、MariaDBチューニング――東芝メモリの技術力が起こすフラッシュメモリによる革新東芝メモリSSDフォーラム2017

2017年11月30日、都内で東芝メモリの主催イベント「東芝メモリSSDフォーラム2017」が初めて開催された。イベントは2部構成になっており、第二部講演では「一挙公開 デジタル変革を支えるフラッシュ&SSDテクノロジー」と題し、東芝メモリのエンジニアらが、東芝メモリのフラッシュメモリ/SSDの詳しい技術解説やデモを行った。

» 2018年01月10日 10時00分 公開
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 2017年11月30日、都内で東芝メモリの主催イベント「東芝メモリSSDフォーラム2017」が初めて開催された。イベントは2部構成になっており、第一部の基調講演では、「“フラッシュメモリ”が変革する、個人と企業の“日常”」には、東芝メモリ 取締役 SSD事業部長の横塚賢志氏と同社 取締役 生産本部長 四日市工場長の松下智治氏が登壇した。人々の生活のあらゆるシーンにITが浸透する中、フラッシュメモリが企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)や人々の日常の変革に重要な意味を持つようになった。講演は、同社がそうした「社会と個人の変革」にどう貢献できるかを解説するものとなった。

 また、フラッシュメモリ/SSDについてIDC、Dell EMC、日本マイクロソフトからも講演があったので、併せてその模様をお届けした第一部については、記事「フラッシュメモリ/SSDは個人と企業の日常をどう変革し、そして、東芝メモリはどう貢献できるのか?」を参照してほしい。

 第一部講演に続く、第二部講演では「一挙公開 デジタル変革を支えるフラッシュ&SSDテクノロジー」と題し、東芝メモリのエンジニアらが、東芝メモリのフラッシュメモリ/SSDの詳しい技術解説やデモを行った。

5年間で1億2000万円のTCOを削減した事例も。東芝メモリ最新SSDの紹介

東芝メモリ SSD事業部 SSD応用技術部 小川功氏

 まずは、同社 SSD事業部 SSD応用技術部の小川功氏と莊司明香氏が、2017年に製品化したクライアント向けとエンタープライズ向けのラインアップを紹介した。

 小川氏は企業、個人の変革に必要な高性能、高密度、低電力という要求を実現するための最新SSDラインアップを紹介した。東芝メモリが2017年にリリースしたBiCS FLASHTM(64層3Dフラッシュメモリ)搭載のSSDには、クライアント向けSSDとエンタープライズ向けSSDがある。

 クライアント向けには、SATA SSD「SG6」、NVMeTM SSD「XG5」と「BG3」の計3シリーズが展開されている。SG6シリーズはHDD置換を目的としており、20×16mmのBG3シリーズと22×80mmのXG5シリーズは、小型、薄型を主な特長としたノートPC、ウルトラモバイルPC向けのものだ。

 なおXG5シリーズは、2017年5月に発表され、6月のInteropでは審査員特別賞を受賞した。

 加えて小川氏は「2017年11月30日からは、記憶容量を従来のXG5シリーズに対して倍増した(最大記憶容量2TB)XG5のプレミアムシリーズ(XG5-P)を一部のPC-OEM向けに出荷開始しました」と発表した。

 続いて莊司氏が紹介したのが、エンタープライズ向けの、SAS SSD「PM5」、NVMe SSD「CM5」の2シリーズだ。

 PM5シリーズは、高性能、大容量、省電力が特長のSAS SSDだ。PM5シリーズでは400GBから30.72TBまでの容量をラインアップしている。PMシリーズとしては、第5世代に当たり、最大容量は第4世代と比較して7.5倍、第1世代と比較して75倍に拡大した。また、最大性能は第4世代と比較してランダムWriteで1.6倍、ランダムReadで1.5倍に向上した。PM5では、MultiLink SASTMアーキテクチャとSAS 4ポートマルチリンクをサポートしていることにより、NVMe並みの性能を出すことができる。

 さらに、マルチストリームライト技術を搭載することにより、書き込み時の効率改善を図っている。同社は、これらの高い技術力を基にNVMe SSDの開発にも力を入れている。

東芝メモリ SSD事業部 SSD応用技術部 莊司明香氏

 「NVMe SSD『CM5』シリーズは、2.5型とAdd-in Cardタイプのフォームファクタに、容量は800GBから15.36TBまでラインアップしています。ランダムRead性能は最大800KIOPS、ランダムWrite性能は最大240KIOPSで、消費電力については一般的な製品が25Wのところ最大18Wを実現し、高性能と低消費電力を両立した製品となっています。また、NVMe 1.3準拠、マルチストリームライト技術搭載、デュアルポート対応、NVMe over Fabric(以下、NVMe-oF)対応といった特長があります」(莊司氏)

 さらに小川氏は、フラッシュメモリ/SSD採用の事例を紹介した。まずは、第一部講演で紹介された四日市工場のシステムにおけるHDDからSSDへの移行を紹介した。サーバ86台を13台へ、ラックスペースを140Uから29Uへ削減し、5年間で1億2000万円のTCOを削減したことを紹介。その後、数々の各インタフェースの採用事例を簡単に紹介した。

TSV、NVMe-oF、MariaDBチューニング――フラッシュメモリによる革新を実感できる3つのデモ

複数の半導体チップを1つのパッケージ内で積層する「TSV(シリコーン貫通電極)」

 続いて、小川氏が東芝メモリの大きな開発方向性の1つである高性能、大容量、低消費といったバランスを重視して開発に取り組んでいるTSV SSDのデモを紹介した。

 TSVは、半導体チップの内部を垂直に貫通する電極を用いて、複数の半導体チップを1つのパッケージ内で積層する技術だ。

 高密度化、高性能化、低消費電力化が可能で、Non-TSVとTSVでは、毎秒8GBのシーケンシャルReadで消費電力45%減、毎秒4GBのシーケンシャルWriteで消費電力45%減を実現している。小川氏はデモで、シーケンシャルWriteの電力効率(MBPS/W)を比較して、TSVの方がおよそ1.8倍効率となっていることを実演してみせた。

 「TSV技術を用いることで、高速化する際に電力、熱といった懸念を解消できることから市場ニーズの多様化に対応可能です」(小川氏)

OpenStackやKubernetesなどに対応、NVMe-oF 1.0に準拠する「One Big SSD」

東芝メモリ SSD事業部 フラッシュストレージ事業戦略部 瀬戸弘和氏

 同社 SSD事業部 フラッシュストレージ事業戦略部の瀬戸弘和氏はNVMe-oFのデモを披露した。

 NVMe-oFでは、ディスクレスのコンピュートノードと、NVMe-oFストレージノードとを切り離し、それぞれのノードで最適なストレージ容量とパフォーマンスに配分することがポイントとなる。

 DAS接続のSSDは接続されているサーバのみで利用できるが、NVMe-oF接続は、高速なネットワークとプロトコルを介して、NVMeが本来持っているパフォーマンスと低レイテンシの恩恵を受けることができる。リモートダイレクトメモリアクセス(RDMA)により複数の転送プロトコルが稼働することで、必要な容量を配布し必要に応じて追加したり、切り離したりすることで、複数のコンピュートノードがNVMeストレージを共有できる。

実際の講演で使用したデモンストレーションビデオ画面

 「東芝メモリが、NVMe SSD CM5シリーズをサポートするために開発中のNVMe-oFソフトウェアは、ファブリックモジュールやマネジメントエンジンなどを提供し、機能拡張を行っています。主な強化点は『One Big SSD』という、筐体内のSSDを抽象化し、ストレージサーバがあたかも1つの大きなSSDプールのように利用できるものです。NVMe-oF 1.0に準拠し、OpenStackやKubernetes、インテル(R) RSD(Rack Scale Design)など、業界標準のプロビジョニング、オーケストレーションフレームワークにも対応します」(瀬戸氏)

MariaDBの性能をSSDで生かし切るチューニングとは

東芝メモリ SSD事業部 SSD応用技術部 佐藤修一氏

 東芝メモリ SSD事業部 SSD応用技術部の佐藤修一氏は、MariaDBTMの性能評価報告を行った。

 MariaDBは、OSS(オープンソースソフトウェア)系データベースの代表的なプロダクトだが、SSDでは十分に性能を使い切っていないケースがあったという。そこで、東芝メモリは、インサイトテクノロジーと共同で、性能評価試験を行っている。イベントでは、その中間報告がなされた。

 評価内容としては、「CentOS 7.3に含まれるMariaDB 5.5.52をどうチューニングするか」「SAS/NVMeの性能を使い切れるか」「最新版MariaDBならどうか」「使い切れない場合、どこにボトルネックがあるか」「1サーバで使い切れないなら、NVMe-oFでI/Oを集約したらどうか」などだ。

 東芝メモリとインサイトテクノロジーの両社でさまざまなチューニングを実施したところ、デフォルト設定の変更で3.5〜6倍、SAS/NVMeの利用で15〜30%の性能向上、CPU交換で10%の性能向上などが確認できたという。佐藤氏は「引き続き検証を続け、SSDとの組み合わせでデータベースを高速化させる手法を追求したい」と話した。

講演のデモや製品を間近で確認できる展示ブース。来場者が注目したのは?

 東芝メモリSSDフォーラム2017の展示ブースには、「BiCS FLASH&SSD」「SSD採用事例」「デモンストレーション」の3つのテーマでコーナーが設けられていた。

「BiCS FLASH&SSD展示」エリア

 イベント会場に入って正面。最も目を引いたのが「BiCS FLASH&SSD展示」のエリアだった。3次元フラッシュメモリのウェハーや96層積層の20万倍拡大リファレンスモデルが展示されており、フラッシュメモリの微細加工、高密度化技術に多くの来場者の興味を引き、大勢が立ち止まっていた。

BiCS FLASHのウェハー&模型

 その3次元フラッシュメモリの展示の横には、小川氏と莊司氏が講演で紹介した、クライアント向けSSDの3シリーズ(SG6、BG3、XG5)とエンタープライズ向けSSDの2シリーズ(PM5、CM5)の計5製品とQLC試作品が並んだ。また、新製品のXG5-Pシリーズも、東芝メモリとして初めて出展されており、注目を集めていた。いずれの製品も他社に引けを取らないパフォーマンスであることを説明していた。

「SSD採用事例」エリア

 「SSD採用事例の展示」エリアでは当日、数々の採用事例の中からDell EMC Power Edgeの第14世代サーバが代表展示されていた。HDDとの消費電力の差を比較するデモは来場したエンドユーザーの興味を引いていた。

Dell EMC Power Edge第14世代サーバ

 「デモンストレーションの展示」エリアでは、第二部において講演があったTSVとNVMe-oFが展示されていた。フラッシュメモリ/SSDの「超大容量、超高性能、超低消費」を追及した次世代テクノロジーの試作品による電力効率の半減化のデモは、講演よりも間近で見られることもあってか、来場者を驚かせていた。

 また、NVMe SSDのRDMAデモでは、大学関係者をはじめとする数多くの来場者の関心を引いていた。

デモンストレーション展示(NVMe-oF、TSVのデモ)


 2017年から新たな道を進み始めた東芝メモリ。事業のビジョンから製品の技術解説までが紹介された「東芝メモリSSDフォーラム2017」は、同社の経験と実績はそのままに、今後ますますパワーアップしていくことが確認できるイベントとなった。

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提供:東芝メモリ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2018年2月9日

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