“ユーザーファースト”な金融サービスを目指して――金融業界からLINEに転職した2人が感じた新たな風とはペインポイントから徹底的に考えるLINEの開発文化

新銀行構想とLINE証券の設立を発表し、金融サービス事業の強化を図るLINE。新規開業を進める中、エンジニアはどのような取り組みを行っているのだろうか。

» 2019年03月18日 10時00分 公開
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LINEの新銀行とLINE証券のシステム開発を担う2人のエンジニア

 2018年1月にLINEの金融サービス事業を強化すべく新たに設立された「LINE Financial」。保険、銀行、証券といった伝統的な金融業に対して、ベンチャー企業がFinTechを駆使して参入するとあって、さまざまな業界から熱い視線を浴びている。

 LINE Financialには、既存の金融業やB2B企業でシステムエンジニアとしてキャリアを積み、その経験を生かして、LINE Financialにジョインしたメンバーが少なくない。今回は、そうしたメンバーの中から、新規開業を目指して今まさに取り組みを加速させているLINEが準備を進める新銀行と「LINE証券」で腕を振るう2人のエンジニアに仕事の取り組み方や職場環境、考え方などの話を聞いた。

金融業を変えるLINEの挑戦

LINE Financialプロジェクトマネジメントチームの赤澤剛氏

 LINEの新銀行とLINE証券の設立を発表し、急ピッチで準備を進めるLINE Financial。新銀行の立ち上げに尽力するLINE Financialプロジェクトマネジメントチームの赤澤剛氏は、新銀行の陣容について、次のように話す。

 「銀行事業はまだまだ立ち上げ期で、これからシステム開発を本格化していく状況です。チームメンバーも少数精鋭で、関係当局の許認可などを前提に、パートナーであるみずほ銀行様と連携しながら、新銀行としての事業や商品、そのために必要なシステムを構想している段階です」(赤澤氏)

 赤澤氏は2018年10月にLINEに入社。前職ではERPパッケージベンダーで大企業向けの会計システムやSCM(サプライチェーンマネジメント)製品の開発とプロダクトオーナーを担当。シンガポールでの開発組織立ち上げや製品の米国市場展開など海外での製品開発や事業展開に従事した経験がある。現在は、LINEにて銀行事業の準備に携わり、主に勘定系システムやその周辺システムのプロジェクトマネジメントを担当している。

 勘定系システムといった金融システムの開発は、信頼性を考慮したり、複雑な要件があったりすることが少なくない。新銀行の設立準備に向けて、どのように開発を進めているのだろうか。

 「LINEの新銀行に必要な全てのシステムを内製化しなければならないとは考えていません。銀行業務は、勘定系システムや外部センターとの接続システムなど要件の決まったシステムがすでにあり、この分野に強みを持つベンダーもいます。LINEの強みである高いユーザビリティと、金融システムとしての信頼性を両立させるために、実績あるパッケージをうまく利用することも重要だと考えています」(赤澤氏)

 一方、LINE証券では現在複数のチームに分かれてシステム開発を行っている段階だと、LINE Financial開発室の馮含嫣(Feng Hanyan)氏は話す。

 「LINE証券は、野村総合研究所様と一緒にチームを作って、開発に取り組んでいます。メンバーはさまざまな拠点に分散しています。私は株式とETF(上場投資信託)システムのサーバサイドの開発を担当していて、チームのメンバーは15人ほどです」(馮氏)

 馮氏は、2018年8月にLINEに入社。前職ではシステムインテグレーターで金融機関のシステム開発、保守運用に従事していた。LINEでは証券事業と仮想通貨事業の開発、保守運用に携わっている。

 「証券システムは、法律に従ったシステムを作ることが求められます。野村総合研究所様からアドバイスをもらいながら、既存の証券システムパッケージを活用して開発を進めています。また使用言語は、『Java』が中心で、開発ツールは『IntelliJ IDEA』です。金融業界でよく使われるCOBOLに触れる機会は実はありません。JavaやIntelliJ IDEAは前職でも使っていたもので、LINEだから特殊なわけではありません」(馮氏)

入社して感じたギャップは「LINEって、OSS使っているんだ」

LINE Financial開発室の馮含嫣(Feng Hanyan)氏

 赤澤氏は2018年10月、馮氏は2018年8月にLINEに入社した。入社前はLINEに対してどんなイメージを持っていたのだろうか。

 「B2Cで成功しているので、『ユーザーファースト』を非常に重視している会社というイメージがありました。『ユーザーがどう使えるのか』『ユーザーは何を喜ぶのか』という体験のために必要なシステムや高い技術力をそろえ、面倒臭がらずにきちんと手間暇かけている。そんな認識でした」(馮氏)

 しかし、その「ユーザーファースト」が、実際に働いてみたら想像以上だったと赤澤氏は付け加える。

 「入社前のイメージと少し違っていたのは、ユーザーファーストの取り組み方です。LINEは、ユーザーのために漠然と開発するのでなく、ユーザーが何をペインポイントとして感じ、それをどう解決するのかを実際の課題や事実に落とし込んで具体的に進めていました」(赤澤氏)

 また赤澤氏は、入社前に「LINEは独自の技術を多く使っている」と勝手なイメージを持っていたが、これも想像とは違ったという。

 「当初想像していた以上にスタンダードな技術を使っているという印象を受けました。もちろん、コアな部分で内製化している部分はありますが、JavaやSpring Frameworkなども普通に使っています。コアな部分での独自開発と、一般的なところでのスタンダード技術の組み合わせが非常にバランスの良い会社だと思います」(赤澤氏)

「ソースコードはいじらない、その結果複雑化しても仕方ない」からの解放

 前職も金融業界で、金融機関のシステム開発、保守運用を行っていた馮氏は、以前の開発環境について次のように話す。

 「前職はB2Bなので、どうしても、システムを利用するエンドユーザーより会社の顧客を第一に考えざるを得ない面がありました。『本当はこういうものを作った方がいい』と思っていても、顧客の予算の関係で作ることができないケースも多くありました。またすでに提供しているシステムをメンテナンスするときは、ソースコードを極力いじらないのが基本だったため、『ソースコードが複雑化しても仕方ない』と諦めざるを得ない部分がありました」(馮氏)

 LINEの金融システムは、B2Cで自社のユーザーに直接届けるものだ。顧客が最終ユーザーであるため、開発における考え方に対して、前職と大きなギャップがあった。

 「LINEでは、すでにあるものを守るのではなく一からサービスを作ります。本当に良いものを作るためにきれいなコーディングを心掛けるので、ソースコードの変更などもすぐに追えますし、改善もすぐにできます」(馮氏)

 一方、赤澤氏は、LINEの仕事は関連する人物や部署が多い点に、驚いたという。

 「LINEでは1つのプロジェクトに対して、企画、デザイン、法務、財務、セキュリティなど、さまざまな部署がプロジェクトに直接関わってきます。また各分野でプロフェッショナルがきちんとアサインされます。そこで気付いたのは、『前職では自分一人でいろいろな仕事をカバーできていると思ったけど、カバーできている範囲が相当浅かったな』ということです」(赤澤氏)

 特に、法務や財務のプロフェッショナルが考える想定の深さに対して、いかに自分が片手間でそれらの仕事をこなしていたのかを反省したという。

 もちろん、前職の経験から生かせていることもある。馮氏は前職で身に付けた、開発における証券の知識を生かし、証券システムのテストの過程を、開発メンバーと提案したり、相談したりしている。

 「『メリットベースで考える姿勢』が仕事に生きています。ユーザー単位でどういう面倒臭さがなくなるのか、企業単位だとどうコストが下がるのか、ユーザーにどういう影響を及ぼしたいのかを必ず考えることは前職から徹底していました。その考え方は今でも生かせています」(赤澤氏)

「やりたいこと」からスタートして「あるべき金融システムの姿」を逆算して考えていく経験

 金融機関や基幹業務の経験を経て、LINEに入社した2人。生かせる能力があった半面、働く中で自分たちに足りないと感じた点もあった。赤澤氏は、B2C開発を行う中で、「どのようにユーザーにアプローチするか」を現在勉強中だ。

 なぜなら、経理向けシステムや人事部向けシステムなどのパッケージシステムは、購買層や職種が限られている。一方、LINEが提供しようとしているサービスは、ユーザー一人一人が使うかどうかを選ぶことができ、年齢層も職種も性別もバラバラだ。

 「こういう場合、どこを共通化し、どこを個別のアプローチにすべきかが非常に難しい。どういうペルソナを設定して、どう克服するか、悩みも多い。そういう点は、LINEのサービス企画が長かった人に相談したり、過去のアプリの立ち上げ実績やこれまでどういうマーケティングをしていたかを調べたりして、今まさに会社の中で学んでいるところです」(赤澤氏)

 馮氏は、足りないと思ったスキルや経験は、「考え方」と「技術」の2つがあったという。まず前職では比較的受け身な部分があり、深く追求することなく、与えられたタスクをこなすだけになっていた考え方を変える必要があった。

 「自主的に動くことは足りない部分だと思っているので、企画やデザイナーなどと連携しながら、アウトプットを積極的に行うことを心掛けています」(馮氏)

 また前職では特定の機能を作ることが仕事だったため、どのようにインフラのサービスやプロセスを立ち上げるかは全く分からなかった。

 「今は仮想サーバをボタン1つで作れるし、好きなツールを自分で作れます。その辺りの技術を磨いています」(馮氏)

「答えがない中、どのように物事を進めていけばいいのか」という難しさ

 LINEの開発は、「目的のレベルで合意しておいて、そこに向かうルートや手段については自分が最適だと思うことをどんどん試す」という考え方を重視する。そのため開発に足りないものや良いものがなければ、作ればいいし、良いツールがあれば購入する。そして、皆でユーザーのためにゴールに向かっていく。馮氏も、テストツールを開発し、社内に提供しており、それがやりがいの一つにつながっているという。

 「普段の仕事をしている中で『テスト工程にこんなツールがあったらみんなが幸せになる』と気付いたものがありました。社内にはツールを作るためのドキュメントがそろっているので、知らなくても調べれば分かります。そこで、自分のタスク以外の時間を使って、ツールを作り始めました。出来上がってから提供すると、みんなから『いいね』『これ便利だね』と評価され、とても幸せに感じましたし、達成感もありました。前職では、作りたいと思っても時間がなかったり、『皆は幸せに感じないかもしれない』と後ろ向きに考えたりしてしまっていたんです。でも、今は、皆を幸せにしたい、その思いで評価とは別にツールを作るようになったし、そうしたら技術も向上しました」(馮氏)

 新しい銀行の立ち上げという、大きな仕事を任されている赤澤氏。「答えが存在しない取り組みの中で、どのように物事を調整するのか」という難しさを感じている。

 「新銀行として新しい商品やサービスを考えたとしても、それが法律的にも問題ないのか、どのように法律を解釈するのかなど、社内の法務部やパートナーのみずほ銀行様を巻き込んで思案することにチームで挑戦しています。そういう新しい領域のチャレンジに対して、社内外から多くの応援を頂いています。新しい銀行を作る経験は、何事にも代えがたいものです。やりたいことからスタートして、必要なもの、あるべき金融システムの姿は何かを逆算して考えていくことは、非常に大きな経験になると実感しています」(赤澤氏)

 これからのキャリアとして、馮氏は、開発を続けつつ、他のことにも挑戦する予定だ。

 「開発は好きなので続けていきたいですし、今は、アーキテクチャなどもっと上流のことも学びたいですね。そうすることで、皆をもっと幸せにできます」(馮氏)

 一方、赤澤氏は、B2C領域で、どうグロースハックするかを学びたいという。

 「ユーザーは何にメリットを感じ、どのようにお金を払うのか。リリースして終わり、ではなくどう継続的に改善し、ユーザー体験を上げていくか。そして事業としてどのように収益化していくのか。そうしたビジネスの観点を身に付けていきたい」(赤澤氏)

多様性を肯定し、きちんと話を聞き、自主的に仕事を探しに行く姿勢が大切

 LINEのエンジニアの多くは裁量労働制だ。もちろん管理されているものの、労働時間の裁量権は個人にある。

 「どの会議にミーティングするかなどは自主的に決められます。言い方が難しいのですが、自分に関係ない会議だと思ったら参加しなくてもいいという雰囲気があります」(馮氏)

 また働く場所や時間が自由だ。オフィスだけでなく社内のカフェで働く人もいれば、帰宅して家族とご飯を食べた後に、VPNで接続して、セキュリティ上問題のない範囲で仕事をする人もいる。

 「海外では、オフィスを早く出て、家族との時間を大切にしながら、寝る前に自分の勉強や仕事をするということもありました。実際に多国籍ということもありますが、それと同じような働き方ができます」(赤澤氏)

 最後に、LINEの金融サービス事業には、どういう人が向いていると2人は考えているのだろうか。

 「スキルも必要ですが、仕事に対する自主性が重要です。そして、自主的に仕事を探しに行く姿勢だけでなく、いま抱えているタスクをおろそかにせず、良いものにしていく姿勢も大切です」(馮氏)

 赤澤氏は、バイアスにとらわれない人、頭の柔らかい人。特にやりたいことがある場合には、ユーザーのメリットから逆算して考えられる人が向いているという。加えて、他人の良いところを見つけられる人としつつ、多国籍の人が働く環境における注意点を挙げた。

 「多国籍な環境の中で仕事する際、悪いところばかり指摘していてはチームのパフォーマンスを高められません。自分自身が悪いところを直すことは重要ですが、チームやプロジェクトとしては個人の良いところに注視し、不測はチームでカバーし合う。それぞれの国の文化を肯定し、良さを徹底的に重視する姿勢が大事だと思います」(赤澤氏)

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提供:LINE Financial株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT自分戦略研究所 編集部/掲載内容有効期限:2019年4月17日

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