「こんなに長くいるつもりはなかった」エンジニアがアイティメディアを支え続ける理由20年物のCMS、バラバラだった会員システムの統合……

複雑なシステムを整理し、謎解きをするように最適解を見つけていく。社内の利用者のために、その先の読者やクライアントのために。アイティメディアのエンジニアは、泥臭く、だからこそかっこいい。

» 2021年05月24日 10時00分 公開
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 最近では毎日のように、テクノロジーの力を生かしたデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性を訴える記事がオンラインメディアを賑(にぎ)わせている。ITmediaや@ITも例外ではない。ただ、記事を読んで「それは分かったけれど、じゃあ、メディア自身はどこまでテクノロジーを活用して変革を行っているの?」と素朴な疑問を抱く方もいるかもしれない。

 率直に実情を答えると、「アイティメディア」の場合、DXは道のり半ばといったところだ。決してキラキラしたものではないが、少しずつ、泥臭く、けれど確実にビジネスモデルの変革に取り組んでいる。

 その中核となっているのがメディア・テクノロジー本部(MT本部)だ。コンテンツ管理システム(CMS)や広告配信システム、リードジェネレーション(リードジェン)システムの開発、機能拡張、運用を通してアイティメディアのビジネスを支えている。今目にしていただいているこの記事もその一つだ。

国内有数の規模のオンライン媒体を支えるMT本部

 メディアというと編集者、記者に光が当たりがち。だが実は、どの媒体でも、この十数年は記事配信を支えるシステムやテクノロジーが大きな役割を担っている。特に、アイティメディアを支えるリードジェンビジネスにおいては、会員データベースとともにビジネスのコアになっているといってもいい。

 ただ、その運用はなかなか大変だ。そもそもアイティメディアには、現時点で約30の専門メディアがあり、日々記事を配信している。毎月新たに4000本もの記事が加わり、月当たりのユニーク訪問者は4000万人、月間ページビューは4億ビューに上る。自画自賛気味だが、国内でも有数のオンライン媒体といっていいだろう。

アイティメディアが運営するメディア群

 アイティメディアには、システムをさらにややこしくする「歴史」もある。社名にもなっているITmediaのCMSは20年物の内製システムだ。そこに、アットマーク・アイティ、キーマンズネットといった複数の企業、メディアが順次統合されてきた。日々のオペレーションにインパクトを与えることなく、複数のCMSや会員システムを統合し、拡張していくという任務にMT本部はコツコツと取り組んできた。

 MT本部 本部長の武藤丈士は、「当社はオンラインメディアをプラットフォームとして、メディア広告やリードジェネレーションといったサービスを提供しており、運営するメディアはITやビジネス、産業テクノロジーといった専門的な領域から、ねとらぼのようなコンシューマー領域まで多岐にわたります。トータルで50万本にも上るコンテンツ資産と多様なメディア群、事業モデルは当社の強みですが、それぞれで必要とされる機能やデザインが異なり、システム面では複雑さを生む要因になっています。当社の強みを伸ばしながら、どのようにシステム基盤を運営していくかは大きなチャレンジです」と述べる。

アイティメディア MT本部 本部長 武藤丈士

市場の変化、ビジネスモデルの変化に合わせてシステム改善を継続

 日本のIT業界、PC業界に関するメディアは、21世紀初めまでは紙媒体が主流だった。それがインターネットの普及とともに徐々にオンライン化し始めたが、当時はそれでも牧歌的なシステムだった。

 「2010年代以前はディスプレイ広告とタイアップ広告が収益の柱で、事業内容がシンプルでした。それ故に、システム構成もCMSと広告配信システムくらいで、比較的シンプルだったかなと思います」と武藤は振り返る。今に比べればのんびりした雰囲気で運営されていたという。

 しかし、オンライン広告市場が急速に拡大し、単なるディスプレイ広告だけでなく、リード獲得や会員向けに絞り込んだマーケティングなどが注目されるにつれ、空気は変わっていった。

 「私が入社したのは2012年ですが、それ以前の2010年ごろから会員ビジネスやリードジェンビジネスが収益の柱に加わり、事業内容も運営体制も少しずつ複雑になってきました」(武藤)

 こうした事業の変化を受け、バラバラだった会員システムの一本化に取り組んだ。

 さらに、スマートフォンやタブレット端末の登場によって読者にコンテンツを提供する手段が多様化し、検索流入の重要度が増していくなど、メディアを取り巻く環境は大きく変わっていった。

 「環境の変化に付いていきながら、新しいメディアの立ち上げや商品の開発、運用を進めなければいけないため、だんだんひずみが大きくなってきました」(武藤)

 従来のいわゆる「出版社」といった既存の競争相手だけでなく、さまざまなサービスがメディアを展開し、思ってもみなかった競合と市場を争わなければいけないというデジタル時代ならではの荒波を、アイティメディアもかぶることになった。

普段はテレワークだが、撮影のために出社した武藤と粕谷。久々の対面に少し照れ気味である

 その中で、根本的なシステムの見直しが必要だという考え方から、MT本部では幾つかの大きなプロジェクトを実現してきた。その一つが、2015年に行ったオンプレミスで運用してきた公開サーバ基盤のAWS(Amazon Web Services)への移行だ。

 「着手から完了まで2年間かけて全面移行を行いました。サイト全体のページビューは移行当時からの5年間で4倍程度まで増えています。クラウド移行を行い、マネージドサービスを組み込んでいくことで、メディアの成長に合わせたインフラの拡張やコストの最適化、記事配信の安定化を実現できました。一連の取り組みでインプレッションが収益となるモデルの成長を支えられるようになったと考えています」(武藤)

 続けて、リードジェン事業を支えるシステム基盤の更改にも取り組んだ。ちょうどリクルートから譲渡されたキーマンズネットの統合も重なったため、2つのレガシーシステムを統合しつつ移行するという難しいプロジェクトになったが、外部ベンダーの力も借りながら3年以上かけて無事に構築を完了した。

 「最初の1年間で旧キーマンズネットの当社インフラへの移行や開発チームの受け入れ、システム分析などを行いながら、新システムの要件を整理し、次の1年間で当社システムの移行、最後の1年間でキーマンズネットの統合といった流れでプロジェクトを進めました。昨今のシステム開発のスピード感から考えればゆっくりとしたペースだと思われるかもしれませんが、それぞれが多くの顧客や読者を抱えたサービスであり、システム面、事業面の課題を解消しながらサービスの継続性を担保することも重視した結果です。統合後のシステムは当社の成長を支える重要なプラットフォームとなり、成果がきちんと出て非常にうれしく思っています」と武藤は振り返る。

 入社前からいち読者としてITmediaの記事も読んでいたという武藤だが、読む側から作る側になってみて初めて、「メディア運営にとってトラフィックをマネタイズすることの重要性を認識しました」という。

技術と業務を結び付けながらバックエンドのシステム更改も

 メディアを支える表側だけでなく、バックエンドのシステムについてもさまざまな改善が進行中だ。そうしたプロジェクトを率いているのがMT本部 テクノロジー統括部 テクノロジーソリューション2部のエンジニア 粕谷貴志だ。会計関連のソフトウェアメーカーで開発に7年ほど携わった後に、アイティメディアに転職してきた。

 大学時代からずっと難解な問題を理詰めで解くのが好きだったという粕谷。「.exeの世界から、Webのような新しい世界に触れたいなという思いもあって転職してきました」という。

 転職活動では幾つかの会社で話を聞いてみたが、「上流のことだけでなく、最新のWebの技術に触れてみたいという思いと同時に、問題を見つけ、自分なりの考えで解決策に取り組める場所がいいなと考え、アイティメディアに決めました」という。もちろん、前職時代からITmediaの記事を昼休みなどに目にし、親しみを持っていたことも一つの理由だった。

アイティメディア MT本部 テクノロジー統括部 テクノロジーソリューション2部 エンジニア 粕谷貴志

 その粕谷が最初に取り組んだのが発注管理システムの構築だった。「手作業に頼っていた発注・原価処理をシステム化し、きれいにレポートとして見られるようにしたい」というざっくりとした要件を、「そんな話、聞いていないよ」という反発も含めた現場側の声をヒアリングしながら具体的に落とし込み、新たなシステムとして形にしていった。

 「『問題解決が好き』という粕谷の良いところが遺憾なく発揮されたと思います。拡張性に欠けていた会計システムの問題点を踏まえ、『どんな流れで原価を計上し、どうコストを計算しているのか』といった事柄を明らかにし、システムに落とし込んでくれました」(武藤)

 前職で身に付けた会計知識、業務知識や炎上プロジェクトの消火経験もものをいったそうだ。

 続けて粕谷が取り組んでいるのが、アイティメディア子会社が運営する「発注ナビ」システムのリプレースだ。発注管理システムのプロジェクトと同様、現状の業務プロセスをひもといて、何をどう整理してシステムに落とし込むべきかという交通整理に取り組んでいる。

 Ruby on Railsだったり、Pythonだったりと、「用途や目的に応じて、最適なフレームワークや開発言語は何かを考え、決めています」という。現状は「最新技術に触れ、手を動かす」という部分はチームメンバーに委ねているが、「技術だけを追い求めるのではなく、技術と実際にそれを使う業務の人たちをうまく結び付ける部分が向いているのかなと思います」と粕谷は自分の仕事を考える。

困難ではあるが、やりがいのある複雑なシステムの整理整頓

 MT本部のタスクはまだまだ多い。「事業内容がさらに多様化し、外部環境の変化も早くなっています。そうした部分に追い付きつつ、常時SSL化やサードパーティーCookieの廃止といった対応を進めていかなければいけません」(武藤)

 データ活用も重要なテーマだ。量、種類共に増え続ける大量の行動ログをシステム横断でトレースし、メディアの改善や商品開発に反映する取り組みも進めている。多岐にわたるメディアを扱っているだけに課題も多いが、アイティメディアの成長に寄与する取り組みとして、注力している分野だ。

 そのような重要なタスクを、20年前のシンプルな事業モデルをベースに設計、運用されてきたCMSや、10年前とほぼ変わらない設計で運用されている会員データベースを生かしながら進めていかなければならない。根本的な見直しも必要だと考えているという。

 「複雑に絡み合ったデータ構造を見直して内部のアーキテクチャを変更し、システム横断で役割や構成を見直していくなど、将来的な拡張も考えてシステム基盤を作り替えていきます。慎重に考えなければいけない部分ですが、その難しさが当社で働く醍醐味(だいごみ)でもあります」(武藤)

 正直に言えば、新たに一からシステムを構築できる後発の競合企業がうらやましいと思うこともあるという。だが、「こうした既存のシステムを、事業に影響を与えることなく移行させ、かつより良いものにするため見直しをかけていくのは、難しくはあるけれど非常にやりがいのある面白い仕事です」と、武藤は楽しそうに話す。

 システム開発を通してメディアという事業の存続を、ひいては多くの企業のマーケティング活動を支えていることも、大きなやりがいになっているそうだ。

 MT本部のもう一つの任務は、社員を支えるインフラの整備だ。一般的な企業におけるいわゆる情報システム部的なチームと、インフラの開発・運用を担うチームが一つにまとまり、シームレスに動くようになってきた。これと並行して社内環境の改善にも取り組んでいる。その成果の一つが、全面的なテレワーク化だ。

 「2020年の最初の緊急事態宣言前後で、インフラチームと情シスチームが連携してVPN環境やクラウドサービスのアクセス環境を整備し、それまで社内で使っていたシステムを一通り社外から使えるようにしました」(武藤)

 経営陣がテレワークを中心とした「スマートワーク」化にかじを切ったこともあり、それ以降、MT本部はもちろん、全社員がテレワークに切り替わり、基本的に自宅で作業を行っている。

 武藤も粕谷も2021年になって出社したのはほんの数回というほどだが、「ZoomやSlack、Confluence、Redmineなどを使って、Web会議も普段の業務も支障なく進められています」という。

社内定例会議の様子。粕谷がPMを担当している発注ナビのシステムリプレースプロジェクト。事業部門と連携して企画段階から携われるのは、“中の人”の特権だ

事業部門と連携しながらタスクの優先順位付けも

 このように古いシステムから新規システムまで、公開サーバから社内情報システムまでと幅広いタスクを担うMT本部だが、それを支えるエンジニアは総勢25人程度。バックエンドの開発者に絞れば10人程度と開発チームとしては小規模なものだ。「入社してみて、こんなに少ないんだとびっくりしました」と、武藤も粕谷も声をそろえる。

 このため今はまだ、事業部側から上がってきた案件を整理し、打ち返すので精いっぱいというのが実情だ。だが中長期的な変革を目指し、「チケットシステムに上がってきた案件をリストアップし、目的や背景を整理して事業責任者の方々と話し合い、どれから手を付けるかという優先順位を決める会議を定期的に開催し始めました」という。

 優先順位を付けるための指標をどう設定するか、またエンジニアごとに負荷が違う中でリソース管理をどうするかといった課題もあるが、事業部とMT本部が問題意識を共有しながらプロジェクトを進めていける体制が回り始めたところだ。

 さらに、システムの標準化にも取り組んでいる。「CMSも会員システムもメールシステムも、そもそもの成り立ちが異なり、さらに各メディアからバラバラに依頼を受けて個別に建て増ししてきた結果、いわゆるスパゲティ的な作りになっています。そこを整理し、アイティメディアとしての標準的な機能を定義していくことによって、作業効率やデザインのクオリティーを上げていけるのではないかと考えています」と武藤は述べる。

 こうしたプロジェクトを丁寧に積み重ね、システム全体をきれいな形に作り替え、リファクタリングを実現することで、生産性や事業に貢献するとともに、「成功体験」を部内で、そして社内で共有していきたいというのが武藤の思いだ。それが共有されることで、5年後、10年後を見据えた新しいチャレンジにつなげていきたいという。

 「本当はこんなに長くいるつもりはなかったんですが、アイティメディアで仕事をするようになってメディア事業や会員ビジネスに興味を持ち、大げさではなく人生が変わりました」と語る武藤。まだやりたいこと、やれることがたくさんある、ぜひ新しい力と一緒にチャレンジしていきたいという。

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アイティメディアの「エンジニア」ってどんな仕事?

写真:くろださくらこ


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アイティメディア営業企画/制作:@IT自分戦略研究所 編集部/掲載内容有効期限:2023年1月31日

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